本年1Qの統計から、ベトナムの15歳以上の労働力人口は、5543万人と前年より33万人増加しています。うち男性が2900万人、女性は2643万人と極端な差はありません。現在の総人口が約9600万人なので、労働力人口は60%を切っていて人口ボーナスが減少中。平均年齢もほぼ29歳に上がって来ているのが実態ですが、人口の自然増はほぼ100万人程度が続いていて、一億人になるのも間近です。
また地方比率は66、7%、3696万人。都市部では33、3%、1847万人となっており、地方は都市部の約2倍の労働力人口を擁しています。これが都市部や海外へ労働力として供給(輸出)されるという次第です。地元紙に拠ると、1-3月期の全国の平均失業率は2%。都市部では2、95%、農村部1、52%となっており、前年より若干改善が見られるとしています。労働者の全国の月額平均賃金については690万VNDとなっていて、これは前年比で約97万VND増加。男性730万VND、女性650万VNDです(1万VND≒208円として計算します)。
また地方では600万VND、都市部だと820万VNDと開きがありますが、実際の賃金格差は業種間、企業間、地域間、世代間、経営・管理職:労働者、学歴、実務経験など、またボーナスでも日本とは比較できないくらいの大きな差があるのが実態で、若い人の収入は実際にはさらに低い数字になる事が多い。
現在の所、実習生の多くは地方の出身者が多いのですが、ワーカーレベルだと月の収入は2万円にも満たないのが実情。都市部に比べれば家賃や物価などは低く地方はむしろ生活し易いはずなのに、若者は都会や海外への憧れが強いのは事実。何処も同じく田舎はつまらない。豊かで楽しい生活をしたい。従って報道での指摘にある通り、借金してまで海外に行って稼ぐ手段を考えるのです。
日本で実習制度が始まってから26年経過。この時分ベトナムは経済が発展していないため不動産価格や物価、給料も驚くほど低い時代。バイクでさえ財産だし、家にはテレビや冷蔵庫も滅多にありません。上の学校へは家計からして行けない。何しろ子供の数がとんでもなく多く、皆で働いて生活費を捻出するのが精一杯。現在より遥かに貧困度は高く、自分を犠牲にしてまで親弟妹など家族を大切にする。だから仕送りして大学へ行かせる。3年経って帰国すれば家を新築、新品バイクを買う事が出来た。ある意味での豊かさを享受しました。
今でも地方から送り出し機関があるHCM市やハノイなどへ行った事すらない。外国語を覚えるのは初めて、会社や工場に勤めた経験さえ無い人が多く、勿論飛行機に乗るのも実習先や留学先へ行くために初めて、というのが殆ど。だが経済発展が続けば生活の質的向上がより進み、企業が強くなれば自国での就労機会が増え、理不尽に耐えてまで来日する意味が無くなる可能性は出てきます。
筆者:IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生