・スズキの市場席巻とトヨタの販売にみる成功法則
インドでは周りを見ればスズキが走っていて、市場の約50%を占めるという。この理由は他の大手に先駆け、1982年に国営企業と合弁会社を設立。当時此れしか進出方法が無く他社は敬遠。だが其処は軽専門の強み、技術もあるが孤軍奮闘の死に物狂い。インド製アルトをヨーロッパへ輸出するまでに成長。現在は100%民営化だが、時期と戦略に秀で、運とタイミングにも恵まれ、そして何よりもトップ自ら商機を捉え決断する力が勝っていたのです。
これに対しトヨタは1960年に進出。着々と実績を上げているとの高評価。
この理由のひとつ、現地パートナーが極めて優秀。2000年にトヨタ第一号のディーラーになった時は社員僅か23名。販売台数900台。点検整備等は2800台。これが現在社員1100名、販売台数は4200台、サービスの実施が65,600台。何と販売担当が200名に対し、この部門に900名の人員を割いているから驚き。ここにユーザーの信頼を得て業績好調の秘訣があると言いますが、如何に高効率の販売をしているのか分ります。
2019年度の自動車市場は10%減、しかしトヨタは20%業績を伸ばしており、しかも高級車レクサスが強い。輸入車は高関税がかかり125%も余分に払うので日本で買うよりも高価。販売力の高さに称賛する外ありません。
しかし過去に車の営業マンに共通する、いわゆる夜討ち朝駆け的な販売方法や値引きをするのでなく完全な顧客志向。インドでは自家用車は未だ超高級品。現地の習慣を取り入れて軽食や食事をサービスし、個別に面談をする徹底したおもてなし作戦が特徴。これで顧客の心をわし掴み、見込み客や迷える客でもイチコロのくすぐり効果。これが功を奏しましたが日本ではほぼ出来ないこと。
もちろん整備サービスも満足度100%。客が来れば全員に通報され担当者が駆けつけてお世話。点検整箇所の綿密な打ち合わせの上、総がかりで60分で仕上げる超クイックサービスを実施。時間の無い経営者に大好評の仕掛け。
インドには車検制度が無いため、会社が定めた定期点検を確実に実施。他社がマネの出来ない差別化をしっかり行うことで絶対的支持を獲得。年々販売量が増えているそうです。一旦獲得した顧客の信頼は永く大切に継続したいもの。
スズキとトヨタの2社は成功している事例。だが現地ではヒュンダイも有名。評価でなく壊れやすくて安物というイメージ。庶民にも手が届きそうという訳。誤解してはいけないが、消費者は賢明。知名度と購入は結び付きません。
ベトナムでもスズキなど日系バイクは定期点検整備に定評がある。勿論品質は絶対的優位性があって安全安心で信頼されているし、教育訓練システムは他国がマネ出来ない。こういう所に自信と誇りを持って然るべきです。
この教訓。商機を捉えたトップの決断力が他社を制す。優良な現地パートナーを如何に獲得できるか。ローカライズした顧客志向と差別化マーケティングは売上獲得の基本。海外事業の命運はこれに尽きますが、一言では簡単だが、当の本人は夜も眠れなかったほどの重圧だったでしょう。
・現地化へのヒント
幾ら日本製が高品質、壊れないと評価されても勘違いはならない。功を焦ってもいけません。矜持と自信は大切だが時と処に依る。先ずは現地に慣れ親しみ、状況の把握が大切。そのために街を彷徨、市場やスーパーなどマメに足を運ぶ。新興国では所得が追い付かず、知名度は無くてもソコソコ使え安いのが売れる。わざと日本の地名を付けたあやかり製品、それっぽい製品や中韓国製が売れ、認知度も高くなる。この辺りはアリの目で確かめるのが一番です。
何れ所得が上がれば上級機種への切り替えは容易。そのためアフターフォローや顧客管理は欠かせないが、製造・販売業者が保証を担保せず、売りっぱなしが多い特徴をみます。此処が日本企業の目の付け処。
相手に任せる度量、やってみなはれ精神も大切で、失敗しても次に儲けろ!で笑い飛ばす。 こんな腹のある上司を必要とするのが新興国。アホにもなれるが、実は目利きの鋭い関西企業のオヤジが強いのは此処にある。
言葉が分らなくてもTVとCMは観れば解る。Com Binh Danで飯を食い、café でお茶して、自分なりの情報源を持つのが正解。ケチってはなりません。
どれだけ現地に馴染めるかは大切で、事あるごとに家に呼ばれての食事、冠婚葬祭もそう。だがエコ贔屓はご法度。周囲に目が光っていて厳しい、等しくできなければ一切断る。自分なりの思想と流儀、決断が求められます。人と街に慣れ、歴史文化に興味を持ち、行動しなければ変化の激しさに追い付けない。
私はフエ、ニャチャン、ダラット等々に泊まるのは友人、知り合いの家。日本から来た友が一緒でも歓待。刹那のひと時をディープに過ごす経験こそ貴重なもの。全てが人との関り、民族国籍は関係なくご縁。距離が短まるのです。
・ローカライズは経営者の姿勢が大切 情熱に商魂と冒険心も逞しい
スズキが成功している理由。会長が何度も現地へ赴くほどの情熱家で徹底した現場主義者。現地の日本人社員は上から目線の傲慢な態度を一切しないという。
親の姿を見て子は育つ。トップが自らその地に足を運び、動かなければ社員が付いて行ける道理はない。海外事業に慣れた方は必ず行動に移しています。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生