湿気対策

2023年4月12日(水)

現地発の記事でハノイ市の湿度の高さを話題にしてありました。市民の誰もがハノイ市の湿度の高さにはウンザリしているが、アメリカの気象予測サイトに拠れば今年の冬は2月いっぱい霧と霧雨が続くとしているほどです。また国立気象予報センターによると、2月前半は寒気が弱まり東に移動するとしていて、こうなると北部では一層キリや霧雨が発生しやすくなり、湿度は連日80%を超えるとしています。
此の湿気は北部の特質とされていて、特にテト(旧正月)後に発生して、この気候が何日も続くのです。湿度が上り、家の壁や床が汗をかいたようになる。 
こうなると洗濯物は濡れたまま、場合によって食品には直ぐにカビが生える。さらに呼吸器疾患になる人も多いのだが、特にハノイの空気汚染度はひどく、一戸建てに住む市民は、特に小さな子供が居れば、悪夢だと書いてあります。
日常生活で困るのは洗濯物が乾かない。乾燥機能付洗濯機もあるが高くて電気代も嵩むのでこれを利用できる人は多くはありません。だが換気ダクトが付いていないベトナムの住居、熱気がこもってしまうのも困りものです。

筆者が初めてベトナムに行ったのが1997年3月。この時期ハノイはまだ寒さが残っており厚手の衣服は欠かせない。朝ホテルの窓を開けるとひんやりするけれどそれ以上に湿気臭く、当時泊まったホテルの室内はエアコンなど無くカビ臭く感じたのです。さらに博物館などを巡っていても建物の壁はじとっとしており、外壁は黒カビが生えていたという具合。室内も暗いうえに湿気を感じたけれど、これに対する対策を講じてはいなかったと記憶しています。
では最近の市民生活はどうなのか。これに付いてこの記事には、最近除湿器を購入する人が増えたとあります。ある家庭では1台800万VND以上(約4万4千円)もするのだが、寝室に10L除湿機能の機器を2台、リビングには20L除湿機能を持つ機器を1台備えているとある。しかしこのような家庭は一握りで、多くの市民は湿度の高い日数は限られており何とか耐えられると考え、この家庭のように除湿器を買おうとはしないというのです。この除湿器、販売されたのは僅か数年前とか。しかしまだ日本のように様々な機能はなく、また認知度も低い様だが、勝算はまだこれからあるのでは。特に空気の汚れが酷いハノイ市では空気清浄機能があれば尚更いいし、湿度対策で他の商品でも市場性としては面白いと考えられます。
もちろん一戸に何台も必要となればそのイニシャルコストの出費と、その後に掛ってくる電気代などのランニングコストなど、なまじの金額ではありませんから、我慢するしかないというのが本音ではないでしょうか。
エアコンの普及はかなり進んできたようです。海外製は多種多様にあるし国内メーカーもいくつかある。だが最も人気があるのは日本製で、少々高いけれど数々の機能は他国性を凌駕しているのは勿論だがデザインもいい。何より品質が良くて壊れない。筆者が現地で電気関係の仕事をローカルで行っていた時、新品は中々買えないけれど、中古品でもやはり日本製ということで注文は結構多かったのです。実際に現地メーカーの製品は、コンプレッサーだけは日本製を使うが他の部品は中国などが多く、どうしても品質にムラがあり故障も多い。
だがコンプレッサーも特定のメーカー品でもなかったのだが、中を空けてまで消費者は確認しないからこんないい加減なことをメーカーは平気でする訳です。
因みに修理に出せば、この当時実際に日本人顧客にあったのだが、部品を入れ替えられるとか、話と違う部品を使ってあったという程度の悪さがありました。
さてこのエアコンのドライ機能。ハノイの蒸し暑さには勝てないとありデータによると爽やかになったと感じるけれど、実際には湿度は75~80%と余り下がっていないとあります。ベトナムで快適な湿度は60~65%と幾分高めが標準だとされているがそれでも間に合いません。
これは全国ほぼ同じで、南部の大都市HCM市では夏、特に雨季は堪らない。ベッドの布団は湿気で匂うこともあるし、床はタイル貼りなのでべた付くし、木製フローリングなら湿気で膨らむので、木目調の特殊建材が良いので採用したことがあるほど。書物も保管に気を付けなければ傷んできます。
さらに中部のHUE市なんて冬の寒さも堪えるが、それ以上に夏の季節の酷いくらいの湿度の高さは暫く住んでみると日本人にとっては地獄。

ベトナムの家の構造は基本的にはラーメン構造で、外壁や間仕切り壁も煉瓦で施工しています。余裕があれば外壁を二重貼りにしている住宅もあり、これは煉瓦の中が空洞になっているため、空気層となって熱の遮断効果と湿気も遮断する効果があります。また部屋内の壁はプラスター塗が殆どなのでこれも健康に良いし、湿気のべた付き感も押さえられるのです。
だが一戸建ては床がスラブ構造ではなく、土を入れてモルタルで床を仕上るのが一般的なやり方。土間になっていていれば其処から水が上ってくるので壁が湿気ることになるのです。せっかくなら構造的に見直して湿気対策を設計する段階で加えることが必要だと感じますが、其処まで出来る業者は居ません。
最近日本の住宅メーカーが海外に、特にアジアに活路を求めて進出しています。
しかしこうした現地の実情を十分に認識し、そのうえで対策をした現地仕様の家を設計しなければなりません。実際に長く住んで実生活を体験しない事には分からないこととばかり。家は自然から人を守り、暮らしを豊かにすることが役目。現地の気候風土、設計や施工方法も確認しなければ商品として出せない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生