職業訓練校へ自動車模型の引き渡し

2025年1月12日(日)

在ベトナム日本国大使館のHPに拠ると、日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を活用、ハノイ第一高架職業訓練校に対して日本メーカーの実習用自動車模型2台の引き渡し式を行なったとあります。
写真に拠ればこの二台は模型とは言えれっきとした本物。一台はセダン、もう一台は後ろが荷台となっているピックアップ車でした。
贈呈はこの職業訓練校が創立50周年の節目にあたり、これを祝う記念式典における最大のセレモニーであった様で、教師に学生、地域関係者から喜ばれ盛大に行われたとあります。
この学校にある実習用の自動車機材は大変古く、最新の自動車整備技術を学ぶ学生にとってそのニーズを充分に応えられなかったという訳です。
今回の日本政府からの支援により、最新モデルの自動車模型が供与されたことで学生は最新の車両、エンジンの構造を理解し、その整備に必様な技術を身に付けることが出来ることが可能になる。
実際に教師や学生から、これまでの実習は機材が旧くて現場では役に立たなかったけれど、これからは現場で求められる最新の知識や技術が学べると好評。
また専門知識や高度な技術を身に付けるなら、就職に確実に有利になる、といった声が聞かれたという。
HPには日本政府は今後もベトナムの新しい時代を担う若い人達の人材育成に協力する。とのコメントがあります。

さて筆者が記憶しているのは、「草の根交流資金」であったのだが、いまはこうした難しい名前?が付けられている様です。過去にこの説明会があって参加したけれど、民間の団体が申請し、HCM市であれば総領事館の審査にパスすれば次はハノイの大使館での審査が待っているというもの。要するに民間の団体がベトナムで何らかの有益なボランティア事業を行なおうとし、その資金の一部を日本政府が団体に交付するというものであったのです。
また期間は一年間で、この事業に関しての詳細は報告とか資金の使用内訳などが求められる、というものであったと思います。
申請は幾つか上がってくるけれど、そんなに簡単に審査が通るものではなく、結構難しい様であったと記憶している。当然国の予算を借りて民間がボランティアを行なう訳だから当然とも言えるけれど、筆者が住んでいた7区のPMH地区の商業施設。ここに在住者の会社だったか、日本製品の普及と広報活動をする件に関して合格したと聞いたことがあった。そこでどんな状況なのか、と見に行ったことがあったけれど、施設内にある一角のブースに確かに日本製品が展示され、何らかの日本関連の情報発信をしようとするカタチらしき様子が伺えた。しかしでは日本人のスタッフがいて積極的に活動しているかと言えばそういった様子は個人的には感じられなかったのです。
報告書なんて如何にもやっている、という部分を切り抜いてあっても、分かる筈がない。まさに形式が整っていれば書類は無事に通るという文書主義は全く改善されないお役所仕事。これは日本国内で何度も経験したのだが、恐らくは事情を熟知した人であったろう、筆者が思うに事実・真実よりも、鉛筆を舐めても、如何にも体裁や書式が整っていて、もっともらしくあればいい。こんな程度のもの。一番大切なのは中身、実態であり現地の人が如何に喜んでいるか。
そして結果、効果が形として現れることが真の国際貢献ではないかと考えます。

さてこの自動車。写真で見ればレシプロエンジン車。これが最新式?と思わずにいられないのだが、いまやベトナムだって自国で組立ているのはEV車です。
ではハイブリッド車かと言えば、メーカーから見てそうではなさそう。なにが最新技術を学ぶ?まるで井の中の蛙でしかありません。
さらに自国のメーカーが必死になってタクシーまでも自国のEVに変えようとしている中、訓練校に何故こうした寄付をしないのか?疑問が湧いてくる。
筆者がHCM市にある職業訓練校を訪問した際に、この自動車整備のクラスも視察した。しかし使用していたのは年代物のクラウン。何処から仕入れたのか分らないけれど、このハノイの訓練校が使用していた模型も恐らくはこれと同じ状況で殆んど学習には役に立たない代物であったと考えられます。
実際にベトナム国内で走っている自動車は、これよりも遙かに新しいのだが、予算が無いのか、こんな状況では仮に実習生として海外に派遣されても使い物にならないのです。例えばホンダ、現地の各代理店で働く整備担当者は国内のホンダで研修を受けているので技術的には平準化している。購入後の定期点検に行けばこの様子はじっくり観察できるのでよく分るけれど、問題は全く無い。
このように民間企業と国の教育機関との実力格差には酷いものがあります。
またこれは何も自動車整備に限ったものではなく、これまでも機会がある度に書いたけれど、人を海外へ送るための訓練校なのだが自国で行なっている方法を教えているのが実態。本来ならば相手先の職人が行っているやり方を学ばせなければならないけれど、教える方に技術が無い訳です。この様な方法を日本に来てからヤル。本人は正しいと思っているけれど、実際には全く通用しない。
余りにも荒く通用するものではないので、ゼロから教えなければならないが、一旦覚えた我流を直ぐに正せと言われても容易に出来るものではありません。
彼らに責任はないとしても、こうした状況になればこれまでの努力は無駄だし、現地では余計なことをしてくれただけ無駄な時間と費用が掛かるのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生