急速な都市化が要因となって、HCM市の学生の37%以上が太り過ぎ、または肥満体になっていると現地紙が報じています。
これはHCM市保健局のトゥオン局長が会議で述べたもので、全ての年齢層で肥満率は上昇しているとしています。最近の統計で5歳未満の子供の肥満率は2017年に11,1%であったのが、徐々に肥満児が増え5年後の22年には
13,6%、そして現在19,02%になっているが、この数字は全国平均よりも高くなっており懸念している、とあります。
人民委員会の栄養報告書に拠れば、此の理由は急速な都市化とライフスタイルの変化であり、この傾向がますます強くなったことが後押ししているとある。
具体的にはファストフード、砂糖入り炭酸飲料の摂取が増え、また加工食品へ出費とアクセスが増えたことだというのです。
また生活習慣も座りがちで歩かない人が多いが、僅かな距離でもバイクで移動する習慣が身に付いていることがあげられます。学校へ徒歩で通う人もいるけれど、親や祖父母が送り迎えすることも珍しくありません。これは誘拐が結構多いという社会問題もあるけれど、思う程多くなく、誘拐などもう少し年齢の行った人が、友人や仲間が僅かばかりの小遣い欲しさに国内の誘拐組織に売り、これを中国の嫁不足解消とかに利用していることが多いので、これを言い訳にした単なる甘やかしに過ぎない、と筆者は思っています。
学校生活で問題なのが41%に運動場が無く、都市では中心部などでは校庭にコンクリートが打たれていて、スポーツとか遊ぶことなど出来ないのが実態。
これに拠って体を動かすことが殆ど無いのが日常で、場合に拠れば体育の授業はないし、日本の学校の様なクラブ部活動も無いため、無理からぬことです。
もう一つは、給食制度がないので弁当を持参するけれど、持ってくることが出来るならステンレス製の丸い容器に、ご飯、おかず、スープを入れるけれど、多くはない。これを日本の味の素が栄養改善のために動き出し、学校での栄養バランスが取れた給食を出す活動をしている。まだ規模的には大きくないが、採り入れた学校では成果が出ているようなニュースが報じられています。
元々ベトナムの多くの家庭では朝食を作らず、親でも通勤途中で粥とか糯米を蒸したもの、パンなど買って食する事が多いので、そこから改善するのが望ましいのです。だが日本と異なって朝はかなり早くに始業する会社や工場が多いため、また地方からHCM市とその周辺部の工業団地に来ている工員にしても、朝は時間が切羽詰まっているので、余程のことが無い限り朝食は作りません。
こういう生活習慣がほぼ出来上がっているので、先ずは朝食、学校での食事をどうするのか、食事を採る意識を変えなければならないと考えます。
経済成長に拠り所得が向上した。ベトナム伝統食は日本でも云われているが、米を主食にし、肉、魚類、卵はそれほど多くなく野菜を多く採れるようスープを必ず加える工夫をしてあり、栄養バランスは極めて良いとされてきました。
この一役を担っているのが、伝統的市場とか小売店に路面店ではないかと考えます。こうした店は大きな卸売市場で仕入れた魚に野菜、果物などを早朝から売っている。毎日その日のご飯を作るため近隣の人が買っていて、その光景は昔の日本の市場・商店街そのもので、筆者もその一人でした。
しかし近代的大規模小売店舗が時代と共に急速に普及、また家庭では冷蔵庫の普及で冷凍食品、またインスタントラーメンに代表される便利な食品、さらに高度に加工されたスナック菓子が、それこそ老若男女を問わず頻繁に食されるようになったのが、肥満度アップの幕開けだったかもと思えます。
また2000年以降徐々に増えて行ったファストフード、皮切りはロッテリアだったが、その後外資系大手のフライドチキンとかハンバーガーチェーン店が店舗を増やし、それまで食べることなど無かった、脂っこいビーフにチキンという動物性たんぱく質の摂取が急速に増え、マヨネーズにケチャップ、ソフトクリームなど、若者を中心にして食の変化が現れてきたのです。これが時を同じくして肥満度が上がり、また心臓病始めとする成人病の急増になったことは否めないと感じます。
政府はこうした状況から砂糖入り炭酸飲料への課税を強化するとの姿勢を国民の健康を守ろうとしているけれど、何しろ緑茶のボトルでも砂糖が入っていて甘くて我々には飲めるものでない。これを暑いから健康に良い水やお茶代わりに飲むけれど口あたりが良い方を選ぶ訳です。コーヒー栽培国なので喫茶文化は広いが、健康に注意している人は砂糖を入れないようにしている。
WHOに拠れば、肥満は糖尿病や血管疾患に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、HCM市は2030年までに5歳未満の肥満率を14%未満、18歳では40%未満に、成人で35%未満にすることを目指す目標を設定しているという。
かつて貧もじい生活を強いられた世代の親が、子供にはこんな可哀そうで惨めなことはさせられないと出来る限り良い食事を採らせ、中には小学生の子供に
1リットルのミルク(ベトナム産は殆ど加工乳)を飲ませる等などして自慢していたけれど、お陰で頭脳明晰は良いのだけれど、マルマル・モリモリなど、間違った愛情だったのかも知れません。ベトナム映画に出て来る太った商売人は金持ちの象徴だったのです。
此の所多くの人が健康に留意する様になり、市内にスポーツジムが増えている。
また健康食品にも人気があり、アメリカ製の各製品がファーマシーで結構安い値段で買えるのです。だが全く日本と同じ様に、これに頼れば安心というのではなく、根本的に普段の食事の見直しは一番効果がある筈です。
・塩分も取り過ぎているHCM市民
HCM市疾病対策センターに拠れば、HCM市の住民は一日平均8,5グラムの塩分を摂取しているという。これはベトナム全国の平均である8,1グラムより若干多くなっているけれど、それでも2015年に調査した時点で9,4グラムあった時に比べると減少しているので、もうひと踏ん張り、ふた踏ん張りして健康的な食事の改善に努力すること、長く座ることを止め運動する必要があるとしています。日本の医師、WHOでも推奨している5グラムを大きく超えているとある。
健康な体であればカリウムにくっついて排泄も可能だが、塩分摂取量が過ぎるとじわじわ浸透して腎臓や血管を痛めることになります。
先にも書いてある通り、食塩摂取増加は都市化が原因であり、生活習慣、特に食事の洋風化という変化への認識が低いことが理由だともしている。このため非感染症疾患のリスクが増大しているとの指摘をしています。
保健省の見解では、塩分が濃い原因はファストフードの消費量が増している事にあるとしています。市が調査した回答では47%が頻繁にファストフードを食べていることが分かったとある。外資系大手の店舗数・売上額と、肥満度や成人病疾患の変化を比較調査すると、恐らく並行して上昇していることが分かるはずだが、これには触れていません。
病院の統計ではベトナムでは25歳から35歳までの人の心血管疾患で入院する患者が増えているとしています。過去2年間で、これはハノイの逓信病院の事例だが、500人のこれらの患者を治療した経験から約20%が40歳未満であったとしている。そしてこの罹患者は毎年増加してきており、何と若者が5~10%の増加率を示していると医師が認めています。
またバクマイ病院では、年間3500~4000人ものこの疾患に拠る患者を毎年受け入れているというから、全国では数万人単位になる可能性が高い。
高齢者の場合は何年も掛かってプラークが蓄積されるという動脈硬化が原因となることが多い。特に若い人の場合、不健康な生活習慣が原因とされるアテローム性だとしており、これ等の疾患が原因で、ベトナムでは年間平均20万人が亡くなっているとしています。
これ等の患者の健康状況を調べると増加理由が分かってきたとあるが、それは日常運動の欠如、不健康・不規則な食事、アルコール摂取、喫煙としています。
この理由と我々日本人の場合とも全く同じだが、日本では健康診断があるし、退職してからでも年一回は無料で受診できる書類が行政から送られ、検査結果によっては大学病院などで精密検査の高度な治療が受けられるので、この制度は活用すべきだと考えます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生