現地ニュースに掲載されたこの話題だが、大手新聞やビジネス情報発信を扱うメディアには殆ど掲載されません。近代的国家として文化・社会成熟度、民度が低いと疑われかねず、国が知的財産権を保護しない可能性が高いことを世界に知られるなど絶対に避けたい。実態を分かっていながら掲載しないのだが、中には恥部と思われるこの様な影の部分を詳細に伝えるサイトもあるのです。
ベトナムは経済成長が続いており、都会は著しく綺麗に変貌、一般市民の生活が豊かになっているのは紛れもない事実。だが依然として開発が進まない郊外、都会のメイン通りから一歩足を踏み入れた裏通りのヘム(細道)とか、農山村や漁村はそうでなく、庶民の慎ましい暮しが繰り広げられています。
記事にはHCM市の中心部、一区の商業センター・サイゴンスクエア内にある商店を、国内市場管理開発部・市場監視部が急襲して模造品を販売したという内容で、多数の模造品を検査、押収したとある。この商業施設は以前からこの様な海賊品を売る店が多く、もう20年ほど前からイタチごっこが続いている。
こうした完全な偽物とかコピー商品は筆者が渡越した1990年代後半には、1区のみならず7区の外国人が多く居住する地域の商業施設には堂々と売る店があり、CDやDVDのコピー品がわずか1万VND(当時では60円ほど)で売っていた。また工業団地近くの路上でも有名ブランドのコピー品が所狭しにオンパレード、しかし質が良くないという訳では無いないのが実に困りもの。
店内は偽の中部特産の香木、有名ブランド物バッグなどを置いている。香木は黒くて硬いのだが、何らかの加工をしているのです。マッチで破片を焼いて、ご丁寧に臭いを嗅がせて本物らしく見せるなど念の入ったやり口で売っていた。こんな値で?と思うのだが日本人観光客は意に介さない。帰国してからやっと価値が無いと分かってもどうしようもなく、騙されて買うのが悪いだけの話。
ブランド品の偽物は帰国時に税関で没収されるが、CDなど隠されると分らないのだが、未だに衰えず延々と続いているというのは驚きです。
この模倣品の製造から販売に至る一連の取引の流れを追跡して来た労働新聞の記者が書いた記事には、模造品だけでなく、低品質の商品が最近の傾向として国内市場にも蔓延しているという。そしてこうした状況に消費者権利保護協会は何と言っているのか、と質問しているのです。
この様な模造品などもはや観光客向けでなく、新しい流通チャンネルとして、国内消費者向けにソーシャルネットワーク、eコマースが普及してきたので、これは通信販売における管理の緩さの問題であり、摘発に至っていないのだが、今を以ってして大規模小売市場でも爆発的に増加しているとあるから大問題。
取りも直さず杜撰な管理と制裁が追い付いていないから、と報じているのだが、これは法制度や製造する者への制裁が追いついておらず、抜け穴を作っているのも原因。根本的にこうした偽物を作る行為は、社会悪とか創出した人の権利など全く考えず、儲かれば良いというだけの精神的貧困であり、全てに通じている模倣体質の具現化が共通認識。
いくら経済成長が続き、物質的にドンドン豊かになっているとしても、須らく創造力やアイデアは斬新な発想に欠けている。自助努力とか研究開発にしても地場企業では行わず海外から導入すればいいとか、企業が進出するのに技術やノウハウを移転することを条件付けするなど、親(政府)が不甲斐なさを公表する位なので、子供は(地場企業)は親の背中を見習って育っているのと筆者は経験からも思える訳です。
・罰金を引き上げる 最大4億VND
模造品が増加するHCM市の状況から、商工省は模倣品の製造・取引、禁止品、また消費者の権利保護における違反に対する罰金の草案を、関連部門と協議し、個人が2億VND、組織の場合は最大4億VNDまで大幅に引き上げる提案をしているとあるが、制裁にしては科料が低すぎる。*1億VND=約3,7千ドル模倣品の製造、また輸入行為、または食品、食品添加物、食品加工助剤、食品保存料、医薬品などの模倣品の取引行為に対しては、罰則の審査を受けずに、2倍の罰金を科すとなっているが罰金だけでは甘すぎて話にならない。化粧品、医療機器、化学薬品、洗剤は罰金などの措置に加え1カ月~12カ月間の免許と証明書をはく奪する。または1カ月~12カ月間の運営停止などの追加制裁を科す。さらに違反した物的証拠没収、違法利益の認めず強制的に取り上げるとするが、何度もゾンビの様に復活するだけの魑魅魍魎が跋扈するのです。
しかし実際にはこうした偽造などの取引行為はますます巧妙化、種類も多様化している。さらに危険なことは先にあるような食品や医薬品などの製品が消費者に渡ることによって、時には甚大な健康被害を直接与えることです。
この様な状況に直面して当局は抜本的な対策と行動をとって、多くの偽造ビジネスを継続的に検査し処理しています。また都市部では依然として大量の偽物や模造品を専門に扱う業者が存在するがこれがオープンに運営され、一部の店では検査がある時にはクローズするという露骨に悪質さをみせている。しかしこれなどは情報が洩れているからであり、常に何らかの袖の下が当局の人物に渡っていることを疑う必要があるのです。偽物などを発見した時は積極的に当局に届けること、またオンラインで商品を購入する際には最新の注意を払うなど模造品を排除するため協力が必要だとしている。だが購入者の殆どは模倣品や偽物と分っていて購入するので、これを阻止しなければ根本的解決は不可能。
・市場監視部隊の大規模摘発後 サイゴンスクエアはどうなったか
模造品の巣窟であるサイゴンスクエアは摘発後どうなったか。トイチェ紙にはその後の状況が報じられています。
記者は摘発2日後に現場を訪れた。すると数十の店はシャッターが閉まったままで営業を再開していない。この日は日曜日、この地域は観光客や地元の買い物客でにぎわったけれど、サイゴンスクエアは対象的にひっそりしていた。
これまでルイ・ヴィトン、グッチ、ディオール、またシャネル、セリーヌ等々、偽物の国際的ブランドに偽ラベルが貼られたファッション商品、ロレックス、ロンジン、パテック・フィリップの偽物高級時計を並べていた店は摘発で閉鎖。地元の特産品や土産物店だけが通常通り営業していた。これ等の店主も閉鎖中の店の品物は全てが偽物だと判っているけれど、何も言わない。記者が多くの店が何故閉店しているのかと聞いたけれど、口を閉ざしたままだったという。
チクると後々何らかの仕返しが待っており面倒で、こういう閉鎖的な所は外資系企業の製造ラインで働く現地ワーカーとまる切り一緒。告げ口が分かると彼は村八にされたうえに、店の権利を捨てざるを得ない羽目に陥ってしまう。
土産物を売っていた店主は、実は摘発を逃れるため、一時的に店を閉じていた人物は結構いてホトボリが覚めれば復活するのでは、と囁いた。よもや、だが何らかの形で摘発日時などの情報が当局の何者かに拠るリークかも知れません。
ではなぜ違反は続くのか。昨年末にも店を急襲し数千点の模倣品を押収したが、半年も経たない間にまたもや摘発をするほど多くの偽物商品があるという理由のひとつとして、模倣品の価値が2億VND以下であれば罰金を支払えばいいとなっている他ならない。罰金を払ったところで需要はそれ以上なので如何に儲けが多いのか分かります。市場監視部はサイゴンスクエアを常に監視対象として検査を続けるとするが、市民は収まらないと思っている。
さらに観光客が絶え間なく訪れるベンタン市場。サイゴンスクエアからわずか数百メートルしか離れていないが、此処でも同じ様な模造品が売られている。
本物の公式価格の数十分の一、これが有名観光地でも公然と売られているので開いた口が塞がらない。
ある地方からの観光客は偽物と知りつつ買ったけれど、プラダのハンドバッグが僅か40万VND(約15ドル)、始めは120万VNDと言ったので交渉したと誇らしげだが原価はたったの数ドル。要するに楽しみのためというが、偽物だと分かっていながら購入するタチの悪い行為がベトナムの品位をさらに落としているのを全く理解していません。
こうした偽ブランド品や、煙草、違法薬物等が運び屋の手で日本に持ち込まれ、水際の税関で摘発される現状がある。慣れないので直ぐにボロを出しているが、これは本国のボスの指示で、在日するベトナム人が売り捌く組織的犯罪です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生