ベトナム農産物 高値が付く一方 問題がある果物も

2025年8月15日(金)

・コーヒー

ベトナムはコーヒーの世界有数の生産国。今年の生産量は例年並みの約200万トンとなると見込まれています。
今年の国内価格だが、5月末に3000~4500VND/kgの下落があり主生産地である中部高原で取引価格は121,500~122,7007VND/㎏となっている。最高価格だった今年3月から比べると約13,000VND/Kg価格が下落した。しかしそうであっても過去数年間での相場(40,000~55,000VND/kg)と比べると高水準であり、生産者は引き続いて高い収益を得ているとあります。
国際市場での取引価格は5月時点のロンドン市場でロブスタ種が4790ドル/トンだがやや下落傾向となっている。この価格下落の要因は需要の減少とはインドネシアからの供給が増加したことに拠ると専門家は話しています。
短期的には価格変動があるものの、世界全体の消費は増える傾向にあり依然として需要供給が追い付いていない状況に変わりありません。
ベトナムではコーヒー生産農家が新規に作付面積を増やしており、コーヒーの栽培が拡大している。農業環境省の調査では2025年度の増加面積は71,8Hrにのぼるとあります。
輸出は好調、5月時点で73万4千トン、輸出額は47億ドルに達し前年同期比で重量では1,8%増、だが金額ベースでは69,5%、トン当たり5,709ドルと大きく増えたのです。
コーヒーの輸出は世界二位。EU、アメリカなどが主要国であるが、記録的な高価格であったとしています。特に5月単月度では14万9千トンで、60%増、金額は8億6千万ドルで220%の増加だったという。実はEUはベトナムコーヒーの最大の市場で36万7千トン、20億ドル相当の輸出先。アメリカへの輸出も急増したがこれはトランプ関税と関係がある模様で、54,310トン増加して、約3億ドルとなっています。
また新興市場への輸出も増加し、アルジェリアへは倍増、メキシコはTPPの関係で39倍、南アメリカは17倍にもなっている。
しかしコーヒー価格は主生産国の天候などで大きく左右されるし、こうした国の供給増加で下落傾向にある。ベトナム国内市場でも昨年11月以来の水準の11万2千VND/kgに下落(12%)。ブラジルとインドネシアが収穫期に入るので注意が必要と商工省は見ています。しかし同省はベトナム産コーヒーの今年度の輸出見通しは極めて楽観視しており、70億ドルを予想している。これは昨年度54億ドルからすれば大幅な伸びです。

・ライチ 6月が旬

楊貴妃が最も好んだ果物と言われるのがライチ。日本では冷凍品が多く、あまり美味しくなかったけれど、生のライチは全然違う代物。旨さも香りも違うし、瑞々しく、程よい風味と甘さがいい。中国産の果実と思っている人は多いが、実はほとんどがベトナム産で、中国へ輸出しているのです。

ライチの生産は北部、バクザン省で早生の収穫が近づいてきました。輸出用の品質を確保するために農家は果樹園の手入れと剪定を行なってきたが、6月に採れるウーホンライチは果実の皮が厚く、風味が良いので価格が高く、しかも長距離輸送に適しているので中国との取引上、最も好まれているとあります。
1hr当り平均収穫量は30トンで、貿易会社に1キログラム40,000VND(約1,5ドル)で売れるという。収穫は夜、新鮮なうちに収穫し、選別などの後、翌朝9時までに輸出するトラックに積み込むという。
北部で採れたライチは南部HCM市などへ送られるが、この生産組合は約6千トンの内約200トン。国内では文句を言われないのだが、中国向けは最近になって葉の除去とか品質基準を高めているとあります。他に日本やEUなどにも輸出されるが、大きさを合わせるとか、糖度などの品質基準、包装の規格はこれまで意識したことがなく解からないため、農家は外国の基準に合うように技術的支援を望んでいるのです。
作ればいいという考えで多くは国内向け、確かにベトナムでは市場などで買う果実に市民はそれほどこだわらないので問題は無かった。だが海外へとなるとそうはいかない。折角良い果物を作っても、エンドユーザーへは生産者の顔が見えないし、ストーリー性もブランドもないというのは残念なことです。
そうしたマーケティング戦略が出来ればさらに付加価値が付けられる。これがまだ理解できない。これはメコンの生産者でも同じなのです。また要求されるG-GAPや食品(害虫)の安全性(放射線照射設備)、表示にも問題がある。
殆どの家庭では毎日新鮮な果物が用意され、食後には必ず沢山出してくれます。
日本から季節の果物を土産に持って行った時、その大きさと、粒が揃っているのに家人は驚いて早速仏壇に供えてくれたが、日本産果物は人気が高いのです。
商の貿易局は、ライチは特産品の主要作物。年間生産額は5兆VND(1億9千万ドル)を稼ぐ。2025年には総生産量が16万5千トンに達する予想で、早生が6万トン、メインの品種が10万5千トンとなっている。
省は外国への輸出の他、国内の主要観光地、また南部の大都市にメコンデルタの主要な市場へ販売を促進させるため、小売りチャンネルの整備とeコマースなどの販路開拓を行ない、新鮮な特産ライチを国内に流通するための策を講じている最中とあります。

・マンゴー価格が下落して農家が悲鳴をあげている

日本人が大好きマンゴー、国内でも宮崎県などで栽培されていて主に贈答用。
何しろ一個が5千円とかでバカ高くて個人では買えません。赤い色は台湾品種とかで、ご丁寧に箱に入れてあるけれど甘さはあるけれど風味はそんなに良いものでも無かったと感じたのは、慣れ親しんで思う存分頂いたベトナム産を舌が覚えているからなのか。香りが良くとても甘い。
HCM市内ではキロ単位で売られるが、今でも精々1個・100円位かと記憶しています。最近は日本にも輸入されスーパーで見るようになりました。

現地報に拠ると、中部高原ダクノン省に拡がるマンゴー農園。収穫期を迎えたけれど、価格が1キロあたり1000~3000VNDまで暴落しており生産農家は深刻な打撃を受けているとあります。
6月上旬、マンゴーは最盛期だというのに果実が農地一面に落ちている。価格が暴落したために収穫費用さえ出てこないと農民が言う。今年は栽培している300本の木からわずか4トンしか採れなかったのだが提示されたのはキロ・1200VND。用意した包装用の袋代だけでも600万VND以上なのに、仕事をするだけ赤字が出ると溜息が出る。
別の3Hrの農地で栽培する農園でも肥料代や資材に1億VND投資したけれど、販売できたのはジュース加工用マンゴーだけで、価格は1700VND/キロ。
生食用の見栄え場良い果実でも高くても精々2000VNDで、小振りで形がよくなければ買い手すらつかない状況にあるのです。

かつてはキロ当たり7000VNDで売れていたけれど、この10年間でこんな低価格は初めて、とこれまで40トンを生産していた農家の主人が語ったが、このダクノン省は「マンゴーの都」と呼ばれる位、中でも記事にある農家とはダックガン村。ほぼ壊滅状況だとあります。
この村の農民協会によると、村全体では1000hrのマンゴー畑があり、例年1hrあたり20トンを収穫できたとあり、安定した収入があったのです。
ところが今年は価格が急落し、売れ残ったマンゴーが700トンほどあるが、何の方策もないまま放置されている。もはや農家は収穫する意欲もなく、損するだけ。さらに未収穫のマンゴーがそのままになっている状況。
かつて豊かさの象徴であったダックガン村のマンゴー。耐えるしかないと諦めの表情だが、このところ肥料や農薬、資材が高騰していたから何処も大変。
農家は省などに販路の早急な流通手段の確保、販促活動、加工業者と連携して無駄なく果実を利用する方法を政府に求めているという。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生