ベトナム中部 歴史的洪水が襲う

2025年12月26日(金)

今年のベトナムは良くない意味だが台風の当り年。僅か一カ月ほど前にも水害の被害に関して書いたけれど、10月の下旬になって中部地域を壊滅状態に追い込み、フエで記録された雨量は世界的な記録となったとあります。
先ずフエの保養地であるバックマー(白馬)山の山頂での雨量は1739㎜/1時間という驚異的なモノで、これはベトナム国内で記録が残る中で過去最高、さらに世界でも2位という凄まじさであったとあります。なお観測史上1位は1986年1月、フランスの気象観測所で測定された、インド洋で1825㎜だが海上と陸上では大きく異なる。
ベトナムの気象局に拠ると、10月22日から28日にかけて、中部を襲った異常気象は、寒冷前線が強く、北に移動する熱帯収束帯、山岳地帯に衝突した強い東風など、稀な自然要因が重なって引き起こされたとしている。
このため、中部地域ではフエで450~900㎜、ダナンで300~600㎜、ハティン、クアンチ、クアンガイで200~450㎜に達した。このため総雨量はバックマーで3393㎜、クアンガイ・チャタインで1457㎜、ダナン・フックタイで1199㎜となったのです。
河川は豪雨のため危険水域期まで上昇、フエのフォン川では1999年の水位まで増水し、最高水位は5,05mに達し、市内数十の集落が1~2mの洪水に浸かり、中には4mに達した地域も出て来て現時点では10名が死亡、5名が行方不明となっていると報じています。

・古都フエ市中心部で雨量1000㎜超え

フエ市中心部の降雨量は24時間で1085,6㎜に達し、これは国立気象予報センターに拠ると史上最高の降雨量を記録したとあります。
予報センターでは大雨が続くと警告していたが、南のクアンチ省からダナン市にかけて激しい雨が続くとしていたのです。また大雨は数日続き、洪水、鉄砲水、地滑りのリスクが高まると指摘していました。
実際に起きた洪水は市内の殆どを飲み込み、世界遺産でもある王宮殿などにも被害は出ている模様。観光都市でもあるフエ市、被害が甚大であれば観光業に携わる人たちへの影響も大きい。先ほど開業したイオンは無事だったとされ、被害に遭った市民への避難所にもなり食事の提供も行ったと報じられています。

・歴史ある街で有名はホイアンも洪水にまみれた

日本人観光客も多く訪れ、長年日本の大学が歴史的町並みの保存に尽力しているホイアン市も継続した豪雨で深刻な状況になっていると言い、ニュースト共に掲載された写真には地元民や外国人観光客が胸まで水に浸かって歩いている姿が映っています。この街はかつて日本人が朱印貿易の最終地点で、船でほぼ一月を掛けて港に入り、日本から絹、金、銅などの鉱物を輸出。帰路は香木とかキセルに使うラウの原料になる竹、インドや中東の珍しいものを持ち帰った当時の国際貿易港であり、多くの日本人が居住し、一時は自治権も認められていたとされる街です。急速に外国人観光客が増え、1日に2千~5千人が訪問するホイアン。多くは観光収入に依存するため復旧を急がねばなりません。
市内を流れるトゥボン川の水位は3,6mに到達し、1964年に記録した水位を0,12m上回っており、平地である市内は多くの場所で1~2m進取したとあります。高層住宅が少なく、特に歴史的な街並みの古民家は平屋、このため水は屋根まで到達しそうになったとあり、未だに混乱しています。
水が引き始めると、復旧された市のランドマーク的存在の日本橋周辺には大量のゴミや泥に瓦礫、さらに家具に家電製品などの山が残されていたという。
10月26日に始まった洪水は、ここ数十年で最大のもので、年に数回洪水は起きるけれど此処まで酷くはなく、民族博物館などの公共施設では被害の調査と清掃に着手し始めたけれど、20㎝以上の泥を取り除くにはかなり時間が掛かりそう。

・ダンアン市では

地元警察は山のふもとの農場で仕事をしていたビンさんが、突然の土砂被害に遭って亡くなったと報じているが、これは5キロはなれた山中の渓谷で大規模な山崩れが起きたためとしている。村人の説明では、農場の被害を確認するために出かけたが、水位が上昇したため道が分らなくなり帰宅できなかった。

・クアンガイ省でも甚大な被害

10月25~36日に降った大雨で、山岳地域では複数の地滑りがあり、国道24号線は通行不能になり、少なくても15の村落約800人が完全に孤立。26,000人近くの住人が、大洪水や地滑りが発生しやすい地域から避難したという。確認しただけでも30箇所で地滑りが起きた。また農作物の被害も徐々に明らかになり4400Hrの農地、650hr の果樹園が壊滅し、16,300頭の家畜が流されたとあります。
地域全体の交通インフラが機能不全に陥り、ホーチミン道路を含む20の国道が地滑りや出水で封鎖された。峠沿いでは大規模な崩落があり、ベトナム国鉄は複数の列車が停止している。省内の山岳地帯で国境付近でも多くの場所が浸水、これに拠り一団の住民はローン峠の地滑りを越えて避難。西側の国道14号線も地滑りが原因で現在は通行できない状況にあり、ズタズタに分断された。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生