筆者の自宅近くにホンダ学園というテクニカル・カレッジがある。自動車整備、自動車開発をしており、創立50年にもなるという。時おり整備用のツナギの服を来た学生が歩いているのを見掛けます。卒業すれば各地のホンダ車を扱うディーラーなどへ就職すると思うが、人気があって募集枠は満杯になるという。
また京都先端科学大学。ここは亀岡市にあった京都学園大学という余り冴えない大学だった。ニデックの永守氏が元々考えていた科学を重視する大学を作りたいけれど大学創設は極めて難度が高い。其処で買収して自ら理事長になり、右京区の天神川沿いに校舎を新築移転。崇高な目的と建学の思想があります。
外にも幾つか元々は企業、経営者が設立した大学はあるけれど、いずれも明確な建学理念を持った方が居て創立、これが新制大学となって現在に至る訳です。
日本の大学には教育思想があり、夫々に開学の歴史があり創設者の考え、また宗教観や教えに基づいた教えとか、独自の学部、カラーや文化が溢れている。
日本最古のルーツがある大学は京都・種智院大学で、空海が綜芸種智院として場所を提供したことが起源とされ1200年の歴史がある。現在は伏見区にあり、定年退職されたがベトナムの介護や障害児研究をされていたM教授が在籍されていました。
ベトナムの大学制度は良く判らない。総合大学が少なく農林、銀行、水利大学など専門課程を履修するのが多く、管轄する省庁も課程によって異なるというのだから複雑。だが私立大学は全て教育訓練省が行うとなっている。
またベトナムの私立大学の歴史は浅くて精々20~30年。また手元にリストがあるけれど、ベトナムは普通Trong Dai Hoc✕✕とあるが、CongTy CoPhanとかTNHHと頭に表記されている大学がある。これは株式会社、有限責任会社という意味であり、その後に大学名が来るのです。日本であれば学校法人が運営するけれど表には投資主として企業名が堂々と書かれており、すなわち企業が投資、理事長はその企業の代表者が就任している。ベトナム国内には私立大学が合計58校あるけれど、この経済記事には19校を表で紹介していた。個人名で同系列校が5校ある。所在地はHCM市が19校、ハノイ市で5校、他にダナン市、フエ市、ドンナイ省、タイニン省、ラムドン省では各1校。11月の経済記事に書かれていたのは、この私立大学の事だが、そのタイトルを見て驚いた。教育は知識、使命、そして企業がエコシステム、人材、将来のポジションに投資できる場を提供するとあった。要するにベトナム私立大学とは企業活動の一環でしかなく、経営者が所有する。記事には企業のキャッシュフローが増々大規模に私立高等教育に流入している、としている。
・ベトナムの大学が世界のトップ100に入るために必要なこと
同じころに掲載されたのは、ベトナムの大学はまだ世界のトップ100に到達するにはほど遠く、これには研究や国際化を促進し、教育の質向上のため政策支援と改革が重要と書かれていた。政治局は少なくても8つの大学をアジアのトップ200にランクインするための決議を行い、目標を定めたとあります。
最も権威のある世界ランキングは2つあり、QSとTHEだが、これに拠るとアジア200位にはベトナムの大学は5校あるとしている。
分野別でのランキングは、最高位はTHEで301~400のレベル、QSで最高363位と絶望的。政治局は2030年までに、特定の分野で少なくても世界のトップ100に1校、2045年までに5校を目標にするとある。
だが研究グループは、高等教育の近代化と向上、高品質な人材と育成、研究と改革、国際協力の促進を求めているとあります。またこの戦略遂行のために、具体的な政策の必要性と、資源の集中、高い潜在能力と強い使命を持つ大学に投資を集中するべきと重要性を訴えた。また専用の全国大学ランキングの必要にも同意し、全ての国立公立、私立大学に門戸を開くべきとしたのです。
また政府は現在GDP比0,2%程度の高等教育への支出を増やすべきで、世界銀行が推奨する1%+を大きく下回っていると述べている。さらに自治も認めるのが不可欠としているが、がんじがらめで自由度が低い事を語っています。
事実、能力のある若者は居るけれど、大学での専門課程のレベルのほど、教員のレベルの低さは実際にみてきたので、これらの主張は実に良く判ります。
日本の国費留学に受かった先生を知っていた。彼は所属する大学の教授に休職を申請したが認められなかった。自身の学業の低さを露呈されたくないからで、こうした現実があって彼は帰国後に私立大学へ移った。
・企業が所有する私立大学の例
この記事には、企業が所有する幾つかの大学の例、として2006年設立したFPTのFPT大学、2017年に設立した、フェニーカ・グループが所有するフェニーカ大学。2019年設立のVinグループ・ヴィン・ユニ大学。
SOVICOグループのタイビンユン大学とホアビン大学。グエン・ホアン・グループが所有するホアセン大学、ホンバン大学、ジャディン大学。今年7月に設立したインターコム・グループのインターコム大学。これを何と経営者の写真入りで、その投資額と併せて掲載、さらに各大学の紹介をしていたのです。
この理由は挙げているのが何れも有名な大企業、創業者だからでしょう。
この他にビンユン省が直轄するベカメックス社が所有するのが東部国際大学で、またグエン・ホアンGは先の3大学の他、東部工芸大学、バーリア・ブンタウ大学も所有。記事に書かれた内容を挙げ、また筆者の知る事も書き加えます。
・インターコム大学
この大学、元は2016年に首相決定により設立されたチュウ・ヴァン・アン(朱文安)大学だが、2021年8月にEcopark・グループが投資し、エコユニ大学と名称が変更され、さらに今年7月、インターコムGが買収して投資家となったとある。つまり9年間に大学の売買が二回も行われた訳です。
・FPT大学
日本に進出して支店を開設、事業を拡大している。創業者は、日本は救世主だとしたが、これは同社がシリコンバレーなど海外に進出したけれど失敗。だが日本では企業が支援してくれたことを現地経済紙に語っていた。同社には日本語を話せる役員がいて、親日的。視察にも気軽に応じてくれたのです。
教育市場に参入したのが2006年で、ビジネスを基盤にした私立大学は国内では初めて。准教授のトン博士が大学評議会の議長を務め、大学としての事業収益は教育部門で2023年約158億VND、2019年の104億VNDから大幅に増えている。2024年度は4300億VNDの予定。AIとサイバーセキュリティ―専攻を開設。ビジネス連携による安定成長が期待できる。
・ヴィン-ユニ大学
国内最大の複合企業Vinグループ、会長のヴォンは9300億VNDの資本を投入、グループも6500億VND(建設に3500億VND、奨学金・運営費3000億VND)。合わせると1兆5800億VNDを拠出したというからこの大学の資産は桁違いに大きくて国内最大の高等教育機関。外部の株主は無くVinグループの投資と包括的な管理下にあるとの記事。記事には非営利と書いてあったけれど、学生の受け入れは2000年からだが、早くも2024年には6000億VNDの収益を上げたとあるが、どこに儲けが生まれてくる仕掛けがあるのか理解できません。非営利とされているが、この国での大学経営とは錬金術の極致なのかもと考えてしまう。あるいは文系で設備が要らないとか、国際的に通用する研究をするためではないのかも。しかしこのVinグループは
自動車などを生産、また最近はロボット研究にも乗り出し、小売企業など保有しているので真摯に大学で様々な学部学科に講座を持つのは、自社内で産学協同が出来る一貫性がある筈。一体どういった建学精神を持っていたのか?
グエン・ホアン・グループが投資した3大学
・ホア-セン大学
2017年~2018年にかけてこのグループが買収したとある。校舎は確か5区にあり、当時学長であったホエ学長に一度学校でお会したことがあります。
ホエさんは日本の京大と東大に留学した都市計画の専門家。HCM市の役所に入ったけれど辞めてドンユー(東遊)日本語学校を1991年に設立。当時は国内最大規模で日本へ留学生を数多く送り、日越友好に貢献した業績で、2020年に旭日小授賞受賞。日本人の知り合いが日本語教師として教えていた。
会った時に新学舎の青写真をみせて抱負を語っておられたが、暫くして学長の座を降り、再び日本語学校に戻った。筆者の知り合いも何人か此処から日本の国立、公立大学への留学を果たしています。
現在はビジネス、コミュニケーション、デザイン分野になっているとか。グループに取れば安定した収入源になっていると記事にあります。
・ホン-バン国際大学
1997年の設立。この大学には日本語学科があって、この卒業生を採用した事がある。随分優秀で発音もきれいだった。日本の新聞記者の現地取材にも同行を依頼した程。近くに住んでいた知人の日本人が教えていたこともある。
だが2015年に買収され、現在では医学・私学・薬学に特化しているというから大変化。これは全く知らなかったことです。
・ジャディン大学
此処は2019年に買収、実践的な授業に力を入れているとかで、グループの教育市場でのシェアを拡大していると書かれている。
・SOVICOグループが投資した大学
以前にベトナムの大富豪として紹介したグエン・ティ・フォン・タオ女史。彼女はベトジェットエアのオーナーとして有名だが、HDバンクなどの社長とか役員も兼ねている超やり手の女性経営者。
タイビンユン大学はその名の通り太平洋に面したニャチャンに2008年創立。
新オーナーが買収したが大学名はそのまま存続。卒業後はこのグループである大手企業の就職機会があるとされ、グループが実施する航空、サービスのエコシステムの人材研修に参加しているとか。ホアビン大学はハノイにあり2015年にグループのメンバーに加わった。企業応用大学モデルに適応。
・フェニーカ大学
かつてはタンテイ大学として2007年のフェニーカGがハノイに創立。2017年、Vicostone社会長のホー・シュアナン博士が取得、2018年名称を変更。教育研究複合体として計2600億VNDを投資したが、昨年2600億VNDもの収益を計上。在籍する学生は34,000人もいるとする。
この様に大企業が投資し、多額の収益を上げているのがベトナムの私立大学の特徴で、幾度となく所有者が変わっており今でもM&Aは続いているという。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生