日本では168万円の壁がなかなか崩れない。給与が上がっても控除額が並行して上がっていないので所得税は上がるし、その他の健康保険に年金も増える事になる。我々リタイア組にしても年金支給額が3万円程上っても、所得税の増額と介護保険料などの負担増はこれを上回っており、有難迷惑でしかなく、結局何もしてくれない方がいい、とおかしな話。
目的税である消費税にしても本当にその通りに使われているのか疑問に思う所。さらに二重課税が疑われるのにガソリン価格など一向に明確な説明が無く納得いかない。取るのに厳しく、不服審査など形式に過ぎないのは単なるガス抜き。
しかしこういう税負担が増えているは日本だけではなく、隣国の韓国もリッチ層は海外に移住し、中国も事情はかなり異なるけれど日本へ移住している。
文化度が違うので生活するにしても習慣を守らずマナーに欠け迷惑千万だが、これはビザ発行に問題があり、相互関係が守られていないのは問題です。
さて現地発の記事にも、給料が上がっても、税金が高くて働かない方がマシと思うとか、仕事を減らしたいとモチベーションが低下している状況にあって、税収が増加する国家は良いけれど、何処の国でもサラリーマンは辛い。
ベトナム・ハノイのエンジニアであるアンさんは、500万VND(約190ドル)昇給があって喜んだけれど、束の間。何とこの内200万VNDが税金として引かれている事は分って落胆したとあります。これを知った彼は頑張ろうという気力を失くしたと不満たらたら落胆。
ベトナム人にしては特殊な技能を持つので毎月支給される給与額は8000万VNDとある。これは法律で最高額である35%が課税されるというのです。
日本に比べると最高税率は低いかも知れないが、控除されるものがほとんどないのでかなりの負担になる訳です。また仮にこうした大都市では家を購入したとなれば一般のサラリーマンではもはや歯が立たないし、物価も高くなっているのが現状。社会主義国と言えど、教育に医療などに結構費用が掛かり普通の勤労者ではこの負担は大きい。まさに肥大化する東京のケースと全く同じで、賃金が低くても、安定した生活ができる地方が良いと思うようになるのは当然。
しかし都会への憧れが未だに強いベトナム人。彼の妻など残業をやめて残った時間は子供たちを散歩に連れてゆくべき、と言ったそうだが、昭和世代の仕事第一の筆者にとっては仕事が優先、残業して休日出勤も厭わず、家族で生活を少しでも豊かになんて考えなくなったのか、と思えなくありません。ベトナムはすでにこうした富裕勤労者が増え、かつての新興国のイメージは遠ざかり、此処までリッチな国になったのかと思わざるを得ません。
また過去に大企業へ2回勤務した会社幹部のゴックさんは、収入が最高税率を下回るように調整してきたと云う。仕事量を減らして税率が30%になるまで押さえていると語ったとあるが、この目的が家族との接点を増やすのであればまだ理解できます。仮に1000万VNDを貰い、350VNDを払うより、650万VNDを手にするよりもストレスが無い方が良いとまでいうのです。
これは日本のパートで働く人が勤務時間を調整してきたのと同じことなのだが、主な働き手が此処までするとは自分の仕事を如何に捉えているのか、其処には矜持が無いのかと思えなくない。というより、今の管理職から新入社員まで、給料よりも休日、残業と転勤無しという甘えの風潮でしかない。24時間戦う企業戦士に成れとまでは言わないが、これでは国際競争に勝てっこありません。
ベトナムの税法では7区分あり、事例に挙げた8000万VNDの35%税率は改正されていない。これは時代遅れでやる気が無くなるというのは理解できる。
税負担の公平性は何処でも云われる。ただベトナムで羽7経済成長が続き給与が増加しており、物価が大きく変化しても16年間税率を変えなかったのでは不満に思うのは当然。全くもって日本と同じ状況にあるのです。
また法人税は32%から20%へと5回に渡って下げられ、今年10月からは、中小企業も15~17%に引き下げられる。だが所得税の最高税率が同じままであるなら、これも日本と同じく、誰かが問題を提起しなければ改正への動きは望めないが、此処はベトナム、簡単にはいかない。一部の大企業だけが余剰金を資本に組み入れて巨大化する傾向にあり、これが政策ならばまさに政官民の癒着に繋がり大規模な汚職に繋がる。これは大企業への不動産開発許可申請の早過ぎる認可や、国家インフラプロジェクトへの参画にインサイダー情報提供となる次第です。
政府の歳入は2024年度に2千兆ドンを初めて越えたとあります。このうちサラリーマンの分が9,3%、189兆VNDとなっている。また520万ある小規模家族経営の企業は26兆VNDでわずかに1,8%。
他国では多くが35~45%とあるのだが、一人当たりのGDPは34000~80000ドルの範囲にあるけれど、ベトナムはかなり低いわけです。
問題はベトナムのインフレと、生活費の上昇はマトモではなく既に時代遅れの税率のうえ、シンガポールの様に最高でも22%、90000ドルとあるのに、GDPが10%に過ぎないベトナムが、住宅価格がそれ以上なのに35%もの最高税率が高いのは矛盾しているというのだが。しかしこの様な高税率となる負担が改正されないままなら、結果として国家収入にも影響があり、労働者のモチベーションが低下し、生産性も下がってGDPにも問題が出て来るのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生