CPTPP批准 多くの課題がある中で(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生)

2018年12月15日(土)

ベトナムはCPTPPを先月12日に批准。条約は12月30日に発効します。ベトナムと参加国との貿易高は昨年度673億3千万ドルに上っており、実に総貿易額の15,8%を占めます。貿易を行っているのは約200ヶ国ですが、この一国当たり平均貿易額20億ドルの3,5倍に相当するためメリットがあるとされます。中でも日本は最大の相手国。貿易額は334億3300万ドル、輸出168億4100万ドル、輸入165億9200万ドルで、2億4900万ドルの黒字となっていて一層の発展と友好関係を期待します。
協定の発効から7年以内に全品目が関税0%に。政府は加盟国間の関係強化と、投資環境に経営環境の改善、労働生産性の向上を挙げますが、果たしてそうでしょうか。例を挙げれば韓国との結果がこれを証明。思惑と異なった状況が分かります。
ベトナムは全方位外交の立場を採り、貿易投資に関して各国間で自由貿易協定を積極的に進めています。韓国とのFTAは2015年12月20日に締結。貿易額は大きく伸びましたが、一年後は韓国への輸出が29,8%増加(148憶ドル・4位)したものの、輸入は45,9%もの増加(467憶ドル・2位)。1980年以降連続で韓国の黒字でしたが、懸念していた通り圧倒的に黒字額が急増した結果となりました。
ベトナムには韓国企業5千社が進出。サムスンは携帯電話の大規模工場を北部バクニン省、タイグエン省で稼働。総輸出額の21、2%・1位を占め、前年比46%もの伸長。政府は優遇税制に土地使用料の減額を求められています。
輸入も製品を作るための部品が多く他の電子部品を入れると総額の47%にも達します。これはベトナムの産業構造が労働集約産業、すなわち物作りが基盤ではなく、加工組み立てが中心である事を如実に物語り、自国産業は育たない。
韓国は徐々に生産拠点を移転。これは他のアジア先進諸国には日本が進出しており、国交復後、戦争の禍根があっても、後発新興国として発展が遅れ進出の余地が十分残されていた隙間に乗じたと考えます。
一方ベトナムから韓国への輸出は繊維製品、水産物など付加価値の低いもの。未だに2020年に先進工業国になるとの国家方針は達成できない理由があります。加えてベトナムが抱える問題は、品質が十分でない、デザイン性に劣る、熟練工(職人)の不足等、国際競争力に課題が残るということに尽きます。
さらに物流システム、インフラ整備、また知的財産所有権、サービスにも遅れが見られ、政府は革新と市場整備に取り組んでいても成果はまだ見えてこないのが現実と言えます。

(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生)