山紫水明の都。誰もが頭に浮かぶのはまさに京都の風景。さしずめ西は愛宕山に桂川が流れる嵐山などピッタリ、東は比叡に三条大橋から眺める賀茂の流れ、目を向けると霞んだ北山連山とのコントラストも美しい。しかし足許ではこれまで外国人に媚びまくった錦市場の店が値段を下げた。近所の買い物客に国内旅行者が激減、えらいこっちゃと慌てふためいても、今さら遅い罰当たり。
ベトナムはどうかと言えば、メコンの大河を流れるのは茶色く濁った水だが、周りは平坦な田が拡がっている。ダラットは山に囲まれた高原都市。フランス人が別荘地として開拓した所だが、筆者の好きな街でその面影は今も残ります。
市の真ん中にあるスアン・フン湖面には澄んだ風が流れ、心地よい所なのだが、湖から流れ出る河川、滝の水は淀みイメージは湧かない。
日本は、日本の水百選として、各地に清泉な水が湧いていて、そのまま口にも出来るし、水道水がそのまま飲めるなど、水に恵まれているので幸せです。
海外や山に行けば、水の貴重さは身に染みて分るのだが、普段は使い放題。
ベトナムでは飲料水はペットボトルを買って飲むが、その殆どが水道水を紫外線で殺菌されたもので水道水だと明記されています。生水では飲めません。
日本の都市の水道局が各地行政の水道事業を支援しているが、まだ水質が安定しないのは、浄水場よりも配水管。継ぎ目から汚水などが入るし、家庭では圧が低いので貯水槽からポンプアップするのだが、下水が処置できない地域では殆どの汚水槽にも問題がある。日本の水浄化処理ができる薬剤(人体に無害)を企業が何社か来ていたほどだし、古くなった水道管再生も大阪の企業が現地の水道供給事業者と協議したが、結局は資金難でそのまんま。
しかしHCM市でさえ水道が通っていない所もあって、日本人の知人の家でも生活用水を水売りから買っていた。またメコンの村などでは井戸や川から水を運んで自家製濾過器で水を濾すとか明礬を使っていたけれど、見た目は無色透明だが農薬や重金属は除去できない。さらに山間では川まで下って水をタンクで持って来るが、子供の仕事だったと知人の嫁さんが話していました。
飲用のペットボトルは天然の水をボトリングしたカインホア省のヴィンハオがあり国際会議でも出されたがほど。少々高かったけれど筆者普段これを使っていたが炭酸水もラインアップ。他にポピュラーなのはネスレが古くから販売するラビーがあります。
またCAFEや飯屋では薄い茶を出してくれるが、これは煮沸しているという証明であり安心して飲めます。
現地の事情を知れば知るほど、水が如何に貴重なのかが分ります。
現地の記事にあったのが、日本のサントリーとハイネケンの水資源に関しての取り組み。どちらも大量に水を使う企業で、水なしには企業活動は出来ません。
世界では水に苦しむ人が多いし、奪い合いも起きている。ベトナムだけでなく隣国のカンボジアの田舎も水資源に乏しく、日本のNPOが井戸を掘っている実情。このように生活に欠かせないのに意外と関心は薄いのです。
だが日本でも同じ、水源涵養林でさえ所有者が外国人に平気で売っているとか、古来、漁業をしている人は山から下ってくる水に、牡蛎などの業界類に海藻の栄養が含まれることを知っていて植林をしていたことを理解していません。
・サントリーVNの取り組みとは
同社は農業環境省林業森林保護局と協力して、今年度のプログラム「生命の水 水の保全‐グリーンベトナムのために」を開始したという。これは2050年までのビジョンを掲げ水資源の保全、生態系の再生、炭素の中和、地域社会の生計、国民の意識向上を目指すとある。同社は水を沢山使用するが、生産に於いて水の循環再利用で、水を効率的に利用し、使った量より多くの水を自然に戻すとする取り組みで、現在と将来に渡る持続可能な開発でもあるのです。
そのため今年度は、特にメコンを中心に、ロンアン、ビンフック、タイグエンという水に大きな問題があり、住宅地や工業用水を供給するエリアに60Hrの植林を行う予定だが、実はこれまで2021年から200Hrの土地を緑に変えて来た実績があるというのです。
今年は特に環境省と官民一体で「水育と自然体験」モデルを立ち上げるという。
これは実践的体験を通して、水資源の価値と環境保護を一般人から学生にまで意識を高めてもらう一歩になるとある。具体的にはタムダオ、スアンリエン、カッティエンの3国立公園でまず試験的に実施、その後に全国の20国立公園で4500人の学生が参加する大イベントになる訳です。
ベトナムの教育に関して別のコラムに書いたが、体験とか経験する授業、課外としてもクラブ活動が無く、体と頭を動かさなければならないのだがこうした課程に問題があり、さらになにかに付けて意識の改革は常に課題となっているので、同社のこの企画は極めて重要な意味を持つのです。また残念ながらこの国の教育関係者に大手企業でもこの様な社会貢献活動には全く関心などない。
資金が無いからだけではなく企画する力、やる気がないのです。従がって常に必要な技術などは海外に求める。自国に無ければ技術移転を要求するのだが、こうしたことで経済発展をして来たのです。こういう実態を全く理解できていないのも問題。
だが同社では、このプログラムは、節水に貢献するだけでなく市域社会を支援し、炭素排出量を削減、気候変動にも適応するとしているのです。
サントリーは2015年から日本国内で「みずいく」を行っているが、海外で実施するのはこのベトナムが初めてという。
2023年からはベトナム教育訓練省が全国の小学校で教育することが正式に承認されており、これまで100万人の児童に教育してきたと云うのです。
こうして地域の何百万人もの教師と児童へきれいな水へのアクセス拡大に貢献してきたとあります。
このような継続した社会貢献活動への取り組みが評価され、2024年に計画投資省から「典型的なグリーン変革戦略」の称号、ACESからは「アジアの持続可能な開発リーディングカンパニー」賞を授与されている。
・ハイネケンの水への取り組み
ハイネケンVNもティエンザン省の蒸留所で年間6億9千万Lもの水を回収したが、これは同社が節水を優先するとの戦略のひとつで、水収支を黒字にしたとあります。即ち生産中の蒸発分を加えた水の使用総量よりも多くの水を返したとある。これまで同社は2022年から農業環境省、省と保護林管理委員会と協力し、ドンタップムオイと呼ばれるベトナムの広大な生逮保護区域で節水プロジェクト始動。12Hr以上の植林と手入れを実施し、水資源確保の回復と地域の多様な生物の保護などに散り組んできたと云うのです。
メコンデルタ一帯でますます緊急性を増す干ばつと塩害だが、同社の水管理に関するコンサルティング、下水道調整システム支援、移動式ポンプの設置などの技術的ソリューションが大きな効果を発揮したとあります。
また井戸を掘削、水の貯蔵タンクや濾過器に淡水化装置を設置するなど、地域社会の貢献としてきれいな水の供給活動を実施。ティエン川流域の数千世帯に年間1億3100万リットルの浄水をもたらした。
このような水改善プログラムは北の紅河流域とドンナイ川流域でも実施され、同社は300億VNDもの投資を行い、主要河川での生態系の生物多様性回復に焦点を当て、同時に年間30億リットルの節水を目指している。
同社の担当者タン氏は、結果は企業と政府、市民組織間に於ける良好なパートナーシップの強さで、今後もプログラムの拡大に取り組むと表明した。これは特有の表現で、何もできない、しない政府と地方省、市への誉め言葉だが如何に気を遣っているかが良く判ります。
何れにしても水を大量に扱う企業の使命でもあるのだが、生態系と経済発展の調和両立させるために水資源を効果的に活用するのは、根本として人間の生命が重要である命題でもあることに繋がる訳です。こういう活動で地域への貢献がアピールにもなり、企業の社会貢献という社会的存在が増すという企業理念の具現化だが、これは地場企業が見習うべきで国際化への一歩でもあります。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生