ベトナムへの進出リスクとは なにか?(No2)

2025年12月12日(金)

進出したけれど思うようにいかない、これも結構ある。要因は様々だが、長く続けるには巨額の資金が必要。大手食品企業でも黒字化に20年掛ったと聞く。進出して短期間で利益計上、累損が消えるまでにどれだけの時間と苦労が必要なのか。としてもこれから撤退する企業が出てくる可能性はあると思えます。
その理由はまずはコスト高。所得が増えて生活が豊かになっている状況下で、一般の人がこれまでの様にモノに渇望した時代でなくなり、所得が増えて生活が豊かになれば、高品質でデザインが良いとかコンテンツが優れているなど、付加価値競争になってくる。また国産品も精度が上がってくるなら、いわゆる内需の開拓は余計に困難になるのは自明の理だから避けられない。
門前の小僧の一例が、地場スーパーやコンビニエンスストアや建設土木業界。
小売業は大型量販店の概念も無く、マーケティング力も全くなかった。さらに外資規制があって、何とか地場企業が守られ息を繋いできただけの話。
建設土木では外資系企業が工業団地や都市を計画して造成、これがこの国の経済発展のひとつになって行ったと考える。またメコンを渡る大型斜張僑を掛け、トンネルに高速道路、地下鉄など地場企業に技術、ノウハウ、必要な機械も無かった時代から外資が進出してきて現地スタッフは学習してきた結果なのです。
物つくりにあっては先進工業国化を目指して、裾野産業を育成しようとしたけれど、実際は簡単でなく、さらに工業国である証明でもある工作機械が造れず精密機械も出来ないということは、進出したグローバル企業が要求する高品質の超精密部品が造れないということになる訳です。
筆者は2000年初頭から進出を考える日本企業の現地視察依頼を受けて来たので良く判るが、委託生産を行うにしても要求するレベルに達していなかった。
だが今では急速に地場企業が変化しており、さらに世代交代が進んでいること、また高齢化社会に入りこれまで優位性があった人口ボーナスに陰りが出て来た。ということは、製造業では若年の就業者が減少する可能性がある訳で、さらに産業構造が第三次産業に移って行くにつれ、若い女性などは工場勤務を嫌がる傾向にある。所得の向上で相対的に消費性向にも変化があり、こうした急速に変化する現地の時流を読むことが大切だと考えます。

進出したもののどうしても無理と判断した場合、撤退を判断するのも重要だが、いざとなれば一銭も投資を回収していないどころか持ち出し、ドツボの輪廻に嵌る経営者もいた。筆者は撤退を勧めたけれど納得できず腹が括れなかった。
損切り時を何処で見分けるのかだが、これを間違えると一層赤字を出すだけで得るものは何一つない白昼夢。恨み辛みが増えるだけ。
この事例だが、会長は苦労を重ねた立身出世型の経営者。会社実務はご子息に任せているけれど、殊のほか実習生を可愛がった。自分と彼らを重ねた訳です。
HCM市に戻れば工場を借りて身が立つようにしてやりたいとの親心。これは良いとして、会ってみると真面目な若者。日本で修得した仕事はやれるけれど、事業を運営するなんて知識と経験など無く、製品の売り先も持たない。会長は必要な部品を造って日本に送る選択をしなかったので、在庫は嵩む一方で経費だけ増えて行く。徐々に自分のポケットマネーなので惜しくなってきた。結局息子を時おり訪越させるとしたけれどこんな事をすれば本業が台無し。経費もかさむだけ。金を惜しんではいけないと話したけれど聞かなかったので放っておいた。自宅から遠くはないので本社に訪問した時の顔は前と全く違っていた。
後先考えず、好意や感情だけの支援は無理があり双方に禍根を残すだけです。
・邦人に気を付けろ 日本人が同朋を騙す!日本語を話す第三国人にも注意外国で日本人がビジネスであれ観光であっても騙される事は結構多いと聞く。
だが実際には数少ない現地在留者が、こともあろうに同じ国の人間を騙すとか、詐欺行為をすることが往々にしてあります。同じ国の海外在住者と思い、苦労はお互いさまと信用する親切心からだが、ついつい吞み込まれてしまう。

拙宅の近所で釣具店をベトナムで最初に始めたMさん。この店に東京から来たという人が釣り具を求めにきた。東京の大手某百貨店部長だったとの触れ込み。
何度か来るうち釣り関係の雑誌を持ってきた。写真と記事に掲載されたのは、まさしく彼、結構この世界ではかつて有名な方だった。ベトナム人の奥さんはメコン出身、のんびり田舎暮しは誠に楽しく家の前の川で魚を釣るンだとか。
一緒にクラブにも行く仲だったが、暫くして5万円かして欲しいという。何かしら支払いがあるけれど手元不如意。子供に連絡して送金するとかでM氏が貸したけれどそのままアパートから消えて居なくなった。

永く在住し現地で会社を営むX氏。彼の家には仕事で何度か訪れたが、ある時、日本人が滞在していた。台湾企業の土壌改良剤販売をベトナムでするとかだが、その後出資の話を持ち出した。X氏は大丈夫かと不安だが事業にも魅力がある。
そこで筆者がどういった薬剤で、、?など質問。かつてゼネコンに居た時、会社が地盤改良の特許工法を持っていたので話をした。すると彼は出張すると言って出掛けたがそのまま帰ってこなかった。話は架空で初めから騙す積りだった。

筆者の会社、私の知らない間にベトナム人が勝手に韓国人から仕事を受注した。
残金を支払わないので催促。偶々レタントン通りで夫婦が歩いていたところに出くわすと一週間後に返すという。だが実はこの夜の便で帰国していた嘘付きの権化。弟の韓国料理店は結構盛況だったが、この店に客は少なかった模様。

紹介されて進出した日本の大手企業の内装を行なった。サンワータワーという日本企業のビルの事務所。予定通り工事は進んだけれど、紹介した会社というのは奥さんがベトナム人でライセンスは彼女名義。残金を払って貰おうとすると帰国中とかで、戻ってから払いますという。今は無くなった国営デパートに隣接するビルに事務所を設けていたが、どうも動きが怪しい。日系の会社に問い合わせると全て支払ったという。だまされた!でも奥さんと子供はどうする。紹介してくれた会社にも被害があったようで、社長が帰国して住所が判明したので訪問すると親がいた。元教師だが、どうやら勘当したみたいで、居場所も分からず諦めたという。いきさつは色々あるが、邦人を平気で騙す人の一例。

・健康維持は最も大切 適度な運動とバランスの取れた食事の摂取

海外生活で一番基本となるのは健康。日本とは気候風土、歴史文化、生活習慣、違うし、ベトナム料理は美味しいが口に合わない人もいない訳では無い。
またビジネス慣習、経営者の哲学思想、従業員の仕事観は全く異なる。さらに言葉も問題で、英語はおろか現地の言葉など全く分らないのであれば苦労する。
日本語スタッフを採用しても事務所のなかだけの話、生活まで面倒は見てくれません。まして一人しか日本人駐在員が居なければ相談しようにも誰も居なく、ストレスや疎外感に苛む。大手企業は家族帯同が基本だが、中小企業となれば事情は異なり単身赴任者も結構多いので相見互い。問題を抱えるとなれば何処かに逃げ場所を造りたくなるのは人の気持ち。だが馴染みの日本食レストランで文句を垂れるのは御法度。壁に耳ありの狭い社会、何時しか漏れ伝わります。

一年に一回、二日間ほどだが筆者が在住時に日本から医師などが来てホテルで診察が受けられた。日本商工会が会員へ案内した会場には多くの駐在員が来ており、場合によれば薬も貰えたが、そもそも医療行為ができたのかは疑問?
それでも有難かったのは、日本人の多くは現地でも真面目に仕事をするけれど、現地のワーカーはアバウトな部分が多くてこれがストレスの原因になる。また現地事情を知らない本社はアレコレ無茶を言ってきて、この間に挟まり忍従の生活を送っている人は多い。好きで来たならいいけれど、辞令の紙切れ1枚で何の準備もできないまま「君に現地を任せる」なんて甘言で送り出されても、その重責を果たそうと必死になる。少なくても愚痴を聞いてもらえるのだが、実は統計では病気よりもこうした精神疾患が60%以上だとありました。
そこで酒に走るとか、一夜の儚い恋を求めるもズルズルと深みに嵌る方もいらっしゃるがはけ口としてはマイナス。金銭や財産を失くすなど後悔すること限りなく、泥沼に嵌って抜け出せず破滅の道を歩むことも多い。
仕事はそれなりにこなしても、性格はある程度テキトーにやり過ごせる度量があった方が良いわけです。誰しも落ち込む様な深刻なケースに遭うことはあるけれど、立ち直りは早い方が良い。上の立場であるなら尚更のこと、ハラワタが煮えくり返っていたとしても表向きは鷹揚さを演じるのもありです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生