街のにほい ③ 小さな旅に出かけよう 南部

2020年9月24日(木)

・ホーチミン市 実は歴史的建造物と文化の宝庫

HCM市はかつてサイゴン(西貢)と呼ばれましたが、元はクメールの領土。プレイノコール(森の都)と言われカポックの木が生い茂る緑豊かな街だったとある。陸路カンボジアからベトナムへの道標には未だプレイノコールと書かれ積年の怨念すら感じます。

高層ビル群が増えているホーチミン市だが、仏植民地時代の情緒あるどっしりしたコロニアル調の建造物が残されており、ゆるりと見て歩きがいい。
植民地時代の映画ロケに使われた由緒ある名門高校に市庁舎、劇場、郵便局や病院、ホテル、元は民家であったレストランなど歴史建造物に触れて楽しめる。
往時の中国人資産家が建てた邸宅に寺院、徐々に外国人が増えてきたHCM市最大のビン・タイン市場があります。元は卸売りだったが今は小売もする。
観光客が多いベンタン市場とはまた違ったローカル色豊かで、生活感の溢れた面白さがあり絶対のお勧め。HCM市の西、此処へはベンタンターミナルから頻繁に出る5番のバスで行くのが安くて便利。
途中の道なりに国家大学ホーチミン市自然科学大学、医科薬科大学、師範大学などの教育施設、電気屋街があって見るだけで面白い。さらに鶏飯や餃子など中国料理が旨くて安いのでよく通いましたが、猥雑で活気あるこの街が好き。
この五区のチョロン地区は中国人街とも言われます。統一される間でこの地に居た約5万人の中国人。そのまま残った人も多くその文化風習が色濃く残っています。友人の奥さんもそう、ベトナム語に中国語が話せるが家族親戚同士は中国語でやり取り。
周囲は中国から集まってくる様々な雑貨や食品を扱う問屋が軒を連ねており、これらは帰国した親類などからのご縁が続いているためです。誕生会、結婚式、クリスマスなどの飾りやカードは此処で纏めて買いました。
街の一角を占めているのが漢方薬の匂い。店では目の前で粉末にしてくれるので安心。種々の原料を粉にする時に飛び散る香りが鼻腔を占拠、すぐ効く気がして嬉しい。漢字で品名が書かれているので何なのか判るうえ、驚くほど安いのでつい他の物もついで買いをしてしまう。

HCM市郊外のクチに各地の伝統的民家を移築した民家村があり、生活道具の展示もしてある。夫々の風土気候に根ざした存在感を感じ、人々の生活を風雨から護ってきたにほひに感動します。興味がある方は、有名なクチトンネルを見学する際に寄るといい。観光コースではないため車をチャーターします。

・メコンデルタ地方

メコンデルタと言っても1市12省がある広大な地域。母なるメコン河の水は大量の土を含み茶色っぽいが、養分をいっぱい含んだ豊饒の大地を形成します。
此処はベトナムの穀倉地帯であり蝦や魚の養殖が盛ん。クメール民族の末裔、伝統文化が多く残り興味深い。
メコン入り口のティエンザン省ミートー市。メコン河対岸のベンチェ省で小舟に乗り換え、ジャングルツアーに民族音楽などを体験。椰子の葉で出来た苫家では、名物象耳魚の丸揚げやココナツキャンデー、果実に蜂蜜をたっぷり満喫。丸ごと南国の異文化の薫りに魅了されます。
金は無いがあくせくしないで生きる。家の前で魚を釣り、鶏を潰して客人への馳走。何不自由なく育った日本人に本当の豊かさとは何か考えさせられます。中州に浮かぶ孤島の一軒家は民泊が可能。名物料理が味わえ、漆黒の闇に蛍を観て魅惑の一夜に!
花卉栽培の盛んなドンタップ省方面に30キロほど車を走らせるとカイベ村に到着。こちらの方がメコンの純農村の暮らしを実感できます。
縦横に入り組んだ運河の両岸には、所々バナナや椰子の木が茂る民家があり、
河では子供が水浴び、主婦が洗濯や洗いもの。おばあさんは籾殻を燃料にした緩やかな火でライスペーパーを作る普段の田舎の息づかいが飛び込んでくる。丸太一本で作ったモンキーブリッジが自宅から本筋へ出る唯一の手段。手摺はあるけれど渡るにはなかなか至難の技。
この地は年3回も収穫できる米処。運河沿いの精米所では籾殻を処理し切れず運河に流しており、夕陽が当ると一面が黄金に輝き美しいけれど実は環境破壊。これをテーマに博士論文を書いたThaoさんは東大院を卒業。今は大学の先生。
狭いクリークを抜けて、広い運河と交差する地点に教会があり、右側に入ると水上マーケットが現われます。何をその船で売っているかは竹竿の先に吊った品物で判る工夫。売り切れるとポツンと竿竹が立っているだけ。河はメコンで暮らす人達の生活の全てであり、多くの恵みをもたらします。
メコンの家々では水道が無い所があり、大きな水瓶を幾つも軒先に並べ雨水を貯め、井戸水は明礬等で透明にするなど、水は豊富な筈なのに生活用水の確保は大変な苦労。一滴の重み有難さを感じます。
昔、綺麗な水が飲みたい子供は観光バスが来るとボトルの水をオネダリした位。それほど水は貴重。疎かにできません。
最終地点はメコン本流に並ぶ町ヴィンロン。植民地時代にはメコンの産物集積地のひとつであった処で、今も港の傍に大きな市場があって賑わう。
メコンは様々な水と魅惑の食べ物の匂いが溢れている。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生