水が安全に飲める日本は幸せ

2021年2月9日(火)

山地が多く森林が豊かな我国は清冽な水に恵まれ各地でこんこんと湧出します。環境省は全国に水百選を選定しているが到底足りる訳はない。
花崗岩地帯に降った雨は数百年の時を経て地中で磨かれ、澄んだ清らかな軟水となって地上に現れるとか。米作りや酒造りなどに欠かせない天の恵みです。
また養分をたっぷり含む森の水は牡蠣や魚を養う。だから禿山に近い海域では旨い魚類が採れないため漁業関係者は植林をするふしぎ発見。この恩恵に与かる日本人はこの実態を知らずに生活しています。(富山和子・元立正大学教授の著書に詳しい)
北海道では水源地である森林や原野が外国人に買われ大きな問題になるほど。しかし重大と捉えず土地を簡単に手離す人、手を打たない政府、水など飲めて当り前と錯覚する人達。水分(みくまり)の神へ感謝の念はないのでしょうか。
山の水の旨さは誰もが記憶に残る。私は屋久島の古代より継がれる杉の香味がふくよかな、錦明水が忘れられません。また黒部の源流、鷲羽岳中腹の渓筋に落ちる大河の一滴も甘露の雫、乾いた喉に染み渡ります。
世界で無色透明の安全な水が飲める人は世界で7割。残りの3割、22億人は水に苦しんでいる事を知る方は少ない。利用可能な地球の水資源は0,01%というから驚き。石油の方が安い砂漠の国などとても想像できる筈はありません。また水道が整備されている国も少ない。
アジアでは井戸水に頼る所は多い。しかし透明であっても土中からのヒ素や、水銀、米軍が使ったダイオキシンが含まれている土地も多く危険。ベトナムでは今も奇形児が隔世遺伝で産まれます。昨年末、インドで起きた謎の病気も水に含まれる鉛、ニッケルが原因とも言われる。

・日本の水技術

日本の水道水は手間と時間を掛けて浄水。そのまま飲める安心さに世界は驚く。
日本の上下水道の処理技術、海水真水化等のノウハウ、水道事業のシステムと運営は世界トップレベルで各国に輸出、水だけに浸透している。特に関西企業はこの分野に強く、私が勤務した企業でも処理水や汚水浄化、飲料用水の精製などのエンジニアリング部門がありました。
酵母や菌を使うなどで飲料水化や汚水浄化を行う企業や自治体は多くベトナムでも活躍中。今年は100兆円に成長するとされる世界水ビジネス、新興国を中心に事業展開できる可能性が高いのです。
平松元大阪市長が来越の際、市の下水処理水を飲料用としてセミナー参加者に配り、技術力の高さをアピールしたが当時は糠に釘でした。

・外国人が驚いた日本の実態

何時でも何処でも安全な水を飲めるのが普通と思う日本人。しかし多くの外国人にとって母国ではあり得ない稀有なことなのでびっくり。それ以上に安心できる水道水を口にせず、PETボトルを買うのを不思議に思うと言います。名水の地で採水、値段は高いが、如何にも美味しそうな地域名を冠して売っている。彼等には何とも贅沢であり合点がいかないようです。

・ベトナムの水事情は

技術が未熟で整備が遅れているベトナム、日本の自治体の水道局が支援をしています。大阪の水関連企業を市のラウンドテーブル開催に合せ、現地企業へとアテンドしたが相手は技術支援を依頼するがその資金はと無いという。であれば公共事業なので市を通じODAを依頼しなければ無理なのではとアドバイス。
近年までHCM市内でさえ水道が無く用水を買い水槽に溜めて使う所や、地方では井戸水をポンプアップする地域があり泥混じり。泥水に明礬を入れて汚れを沈殿させるとか、木の葉・砂・木炭などが入ったタンクに通して透明にする所もありましたが、衛生的でないため都会の人はこれを飲むと腹を壊します。
ベトナムはダラットでは水道水が飲める、とガイドブックに書いてあったが、煮炊きに使ってもそのまま飲むことは無かったと記憶しています。
初めて訪越した最初の夜、ホテルには大きな中国製の魔法瓶が置いてあった。
中には湯が入っているが水道水を煮沸したもので、匂いがして茶やコーヒーにしたとしても飲む気がしません。冷蔵庫には小さなペットボトルが入れてありこれは無料だが、天然のミネラルウオーターではなく、水道水を浄水したもの。
ベトナムの水道水は給配水管や家庭などに設置する貯水タンクから大腸菌などが浸入する可能性が高いので飲用に適さず、沸かすとか、20Lボトルを置いてあります。因みにCafeで茶を出されるのは煮沸してあり安全の証明だが水は有料。また何処を訪問してもお茶代わりにPETボトルを出してくれのは嬉しい。
ベトナムで人気があるのはネスレの汲み上げたLaVie、中部の鉱泉で採水したVINH HAOだが大容量ボトルもあり少々高いが私は専らこれを使いました。他は水道水を濾過オゾン滅菌したもの。装置は簡単、製造は狭くても問題なく直ぐに参入可能。数多あるメーカーの中、ある所は仰々しく米国製機械を使うため安全だと強調していましたが、似たり寄ったり、五十歩百歩で大差ない。

・家庭用浄水器が増えた

日本でも水道水に残留塩素や有害物質等が含まれ、錆・カビ臭も嫌で浄水器を取り付ける家庭が増え、中には体に良いとかでアルカリ整水機能付きも人気。確かに完全に綺麗ではなくカートリッジは汚れてきます。
ベトナムでも随分前から家庭用浄水器が売られています。販売店や通信販売ではデモンストレーションとして着色した水を循環させ、クリーン度を実証していますが、カートリッジが2本の所為なのか日本より器具は大きい。何処まで有害物質が除去されるか不明。
中空糸などを使いコンパクトで高性能の日本製は優秀。ベトナムで売っているとは聞いたけれども音沙汰がない様に見受けます。
かつて大阪市の依頼で調べた事があって、この時点では海外メーカーが主流。この数年は地場企業の製品が急速に普及しており、ほぼ5社が販売。年々倍々の成長だそうで好調。現在最大手はカンガルーという一番の老舗会社。神戸のノーリツが資本参加している。他にはダイベト社、新興の品質は良いと言われ海外にも輸出しているサンハウス社とAOスミスVN社があり、今後は市場が拡大するとみられ、品質競争などが激しくなるとしています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生