高齢化社会を迎えるベトナム ①

2022年2月4日(金)

11月11日、ベトナム商工会議所(VCCI)主催の「ベトナム高齢者向けビジネスサービス機会」フォーラムがZOOMで開催されました。
冒頭、VCCIホーチミン支部THANH会頭が開催趣旨を述べ、在ベトナム日本大使が挨拶をするほど。フォーラムでは労働局、また民間でナーシング・ホームを運営する経営者などがベトナムのそれぞれの立場の現状と、これから迎える課題などを紹介。最後にTHANHさんからは日本の知識や経験を学びたいと締めくくり、3時間に及ぶ日越間のミーティングを終えました。

ベトナムは若い世代が多く平均年齢がまだ20歳代という国で、なお成長を続けているというイメージから離れない日本人は未だに多いと感じます。しかし現実にはどんどん変化していますから新たな認識が必要。
JETROに拠れば2021年の人口は約9817万人で、2年後に1億人を突破する見込み。ならばその時点の少年人口数は約2274万人(23,17%)、労人口は約6737万人(68,62%)、高齢者数が約806万人(8,21%)になるとしている。
また2054年には総人口が最高点に達して1億980万人、労働人口は2056年に総人口の60%を割るだろうと推則され、このまま進めば2100年には高齢者人口が29,25%となり、人口の高齢化は年ごとに深刻さを増して行く。因みに日本を総人口で追い越すのが2040年という資料も他にみるが、高齢化の波も後から追いかけてくる状況にあります。

・人口ボーナスは減少傾向に? 下がる出生率

高齢者の存在は街を歩いていても多いとは感じない。そこで旅行やビジネスで訪越すると如何にも熱気が溢れる若い国、となる。日本と数字上で比較しても、実感でも分かるが、親しい人の家族をみれば事情は少々違ってきます。
ベトナムの成長を支えてきたとする若い労働力。経済成長の証は人口ボーナス。これは海外進出をする上で一つの指標になる訳だが、即ち総人口に占める労働人口の割合(15~65歳)が高ければ成長は継続するとされています。
ベトナムは無限、という風に思われる日本人は多いはず。ところが近年は合計特殊出生率が年々低くなり、2020年の統計で21の市・省で女性一人当たりの出生数は二人以下が人口の30%を占めます。特にHCM市を中心とする5市が最も低く1,39人。また統計総局の資料では2019年の全国の平均出生率は2,09%。これは代替出生率と言われる数字2,1%を下回っており、人口が計画通りに増えるかどうか?厳しい状況にある。
かつては大都市でも子沢山、ましてや農村部ならば5~6人なんて当たり前。貴重な労働力でもありました。特段遊ぶ所はなく、早朝から遅くまで農作業、食って飲んで寝ての生活以外にすることが無いから、子供が増える仕掛け。
だが経済成長と共に都市部では若い主婦は子供を産まなくなった。いや産めなくなった背景がある。社会開発研究所ではこの原因が社会的・経済にあるとし、都市部では夫婦で相談して子供は一人と決めたと侘しい事情があります。ある意味では相反する功罪であり宿命かも知れません。
これまでHCM市の不動産事情を書きましたが、タダでさえ賃貸は家賃が高いうえに狭い。一生懸命働らけど住宅を買える機会は殆どなくアキラメ。
さらに急成長する商業流通に娯楽施設。高い給料を得るには教養も学歴も必要。
ならば、と語学学校や経理の学校へ行き、豊かで楽しい生活も共に享受したい。
こうした成長の裏側に価値観や生活感など変化があります。誰だって思う事は同じ。だが衣食足りて礼節を知るのではなく、長年苦節に耐え忍んできた民族。際限なく、しかも一挙に噴き出したように一夕に豊かさを求める危うい気配を感じる。いわんや国家も同じ。先進工業国入りと経済成長を拙速するあまり、表向きとは異なる様々な面でバランスが取れていない印象を受けます。

人は仕事を求めて地方から都会に出て来るが、其処には大きな能力の壁、格差は縮まらない現実。年齢や立場に拠るけれど余程でない限り管理職や事業主の階段を登れない。このため自立したくて早々に起業する若い人はかなり多い。
かつて若い世代の経営者が集まるBNIに関係したけれど、その多くは充分な基盤があるわけでなく、ちょっと仕事を経験しただけで一人前。自分の事業を持ちたい気持ちは分かるが商売のセンスが身に付いた人、成功した事例など何れの業界でも少数、しかも大半は女性でした。誰しも意欲は高いが簡単に行く道理などありません。経済成長と都市化の中、ビジネスでの一断面をみました。
労働力が不足するのは目に見えている。若い人が働くことで生産が増加、所得が増え消費が拡大され社会が活性化され豊かになり、社会保障費も抑制される。
人口ボーナスが経済成長にとって極めて重要な指標になる所以です。    今は過渡期、消費財の購入意欲は高く、高品質化の傾向と買い替え需要もある。
これが一巡し充足するにはまだ時間は掛るし、当面は外国投資や経済連携協定により経済は成長を維持できます。何れは転換期が現れるのは世の常と心得る。

日本は既に1990年代に人口ボーナス期を終え、人口オーナス期に入っていると言われます。また出生率は昨年度1,34と5年連続の減少。人口ボーナスは一旦なくなれば二度と来ないと言われますから、この状況をみれば大変だと思わなければなりません。政治的に長期の策を要するのだがほぼ無策の日本。
ではベトナムはと言えば、かつては平均年齢が20数歳と言われたが、今では31歳を悠に超えてきました。ならば意外に高齢化社会が早く来ると予測され、2040年ごろになると人口ボーナス期は終わるともいわれます。

進出を考える企業にとって少なくとも20年は大丈夫か、ともいえるし、或いは先のVJCCの高齢化フォーラムが示すように、こうした新しい局面を観て新たなサービス産業進出にビジネスチャンスを見出すのか。先々の市場をどのように観て、如何なる戦略を練るのか。過去のデータに頼るより、何が有効か現地でしっかり現場を視て調査するべきです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生