干ばつで非常事態宣言が発出

2024年5月30日(木)

多くの外国人観光客が訪れるメコンデルタ一帯地域。日本人からすれば目前に写る見渡す限りの広大な熱帯雨林と緑の稲田、大河の光景に感動を覚えます。
ジャングルの中を小舟でクルーズ。椰子で造った作り立てのキャンデーをほおばり、見慣れない素朴な料理に舌鼓。水上マーケットは本来、現地の人の生活拠点で糧でもあるが、観光地化して金が落ちるものだから文句は言えない。
これが日帰りであっても、1泊や2泊のツアーもあって、彼方此方行くよりも、バスで時間を掛けて回る経験など滅多に出来ないので、時間があれば余り観光化されていないエリアをお勧めしたいと考えます。
かつて電気は自家発電で、夜ともなれば早めに消灯。殆んど真っ暗闇のなかで、星が瞬く。何もすることが無いメコン川の中州の島でこそ暑いけれど至福の時を過ごせます。水道は整備されておらず、井戸から汲み上げた水でシャワー。
幾分か土混じりで色も少々黄色く淀んでいる。飲み水はこれを濾過してもの。如何に日本の生活が便利で恵まれているかを考えさせられます。
以前とは大きく変化し、HCM市から高速道路が開通、メコン河の入口であるミトー市へは1時間と少し。余りにも便利になったけれど道すがらの昔の情景を知る者なら面白くはありません。
メコン川に浮かぶ中洲の島、実は年々浸食されています。これは島の先端を見れば分かるけれど、かつてあった陸の部分が削られ後退しているのに気が付く。またこの数年、海から遡上してくる塩の問題が顕著になっているのです。
こうなると農業に深刻な影響が出ます。この辺り一帯はベトナムの穀倉で米の大産地。国内だけではなく広く海外に輸出され、それは世界二位となっている。
現地紙に拠ると、ベトナムでは数千人が干ばつと塩害に拠る真水不足に悩んでいると伝わります。このため当局は非常事態を発令したとあります。

HCM市から南へ約60キロに位置するティエンザン省。この省一帯も数週間続いた熱波により干ばつと塩害に見舞われた。同省のタン・フ―・ドン地区は12キロもの海岸線を持ち、農業用水路が縦横に走っているため、深刻な特に被害を受けている。海から塩分を含んだ水が浸入するので塩害が生じ、乾季の間は周辺部に棲む44,000人の農作物と飲料水に影響があるという。長引く干ばつとティエン川の塩水が氾濫したことで作物に影響しているのです。
またHCM市に隣接するロンアン省を始め、カマウ省でも同様の状態に陥り、各省は非常事態を宣言したとあります。
新聞にはロンアン省でも塩水が川に入り込み、2万人の飲料水が供給できなくなり、省は大きなプラスチックの水槽を設置して無料で給水を始めたとある。
塩分濃度は1000分の1~4となっていて、これは何と内陸部で測定されたとし驚きを以って報じられています。
現在河川の塩分濃度は1000分の0,5になっているが、予報では省内2河川に1000分の4の濃度に達するという見解。1000分の3以上の非常に高い濃度になると洗濯機や給湯機に使えば危機を壊すことに成り兼ねず、まして飲料や調理用に使用すべきではないとしています。
省では政府に対し水不足と塩害対策で1640億VND(650万ドル)以上の支出を要請している。これは運河の浚渫やポンプの設置、上水管、貯水設備、塩水フィルターに使用し一般家庭に給水する計画という。
毎年起きているこうした原因は、気候変動による猛暑や海面上昇に拠るとされ、この脅威は年を増すごとに大きくなっているとしています。
今年3月に発表された研究報告では、数千万人国民に食料と生活手段を提供しているメコンデルタであるが、耕作可能な土地に塩分が浸入するという現象は金に換算すると年間30億ドル相当もの作物の損失になっているという。

・中部高原地域でも極度の干ばつ

中部高原一帯も乾季に入っていて、河川の水位や流量は徐々に低下しているという。これは長年に亘る平均値よりも低くなっており、今年は特に酷い。小川に至る河川、湖が干上がり、このため農民は井戸を掘り、湖底を掘ってまで水を汲み上げ作物に給水している、としています。
中部高原はベトナム特産のコーヒーの生産地。また茶、高原野菜や果物を栽培しており、国内消費はもちろんだが、加工して海外へ輸出しているので影響は大きい。特にコーヒーはブラジルなどで生産が低下しているので、世界価格に大きな影響、即ち価格高騰を招く可能性が高いのです。
ザーライ省の湖、12hrのバウナイ湖では水が枯渇。4000本のコーヒーの木を持つ生産者はこれに備えて水路を掘り、掘削機で井戸を掘ったけれど、水は足りない。そこで2キロ離れた別の湖からパイプラインで水を供給。
別の農家はイモ・米を栽培していたが、イモは水が無く農地は不毛の地に変身、米の多くは乾燥して枯れてしまい、残りを守るために一週間早く収穫せざるを得なかったとあります。
他のコンツム省やダクノン省でも同じ状況にあり、灌漑用貯水池も熱波で水位が低下。大規模な水不足になるとの予想をしているとあります。
中部高原気象観測所に拠れば、今年の乾季はエルニーニョ現象の影響が例年より高く、おまけに雨季の到来が遅いとされるため、乾季は長く続くと切望的。
しかし雨季でも断続的な降雨で水が不足するとされるため、適切な灌漑用水の使用と、厳格な水管理が求められるという。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生