HCM市の病院評価スコア

2024年8月28日(水)

日本の新聞では、全都道府県の病院の各診療科に於ける手術数を発表したり、週刊誌で名医とされる医師を紹介したりする記事を見掛けます。だがこうした手術例の多寡がその病院の優劣を示すものでもなく、また雑誌などで神の手を持つ名医と評して高度手術例も挙げているが、仮に技量だけ優れていても如何なものか。だが大都市の病院など一部の人が利用できるだけでしかありません。
親戚の医師がNPOで海外に行って活動。国内でも過疎地で高齢の域に達して自ら手術を受ける立場になっても辞めないで(辞められない)住民に寄り添った献身に頼らなければ成り立たない地域医療も現実にあるのです。
少し前に高橋一生が演じる所のブラックジャックを放映していたけれど、漫画の方が確実に面白く、手塚治虫さんの医師としての理念や理想などを描くにははるかに遠く、限界があったと考えます。
7月に亡くなった徳田虎雄氏のことも思い浮かぶけれど、彼が最初に開設した徳州会病院は大阪府松原市にあります。此処に行った事はないけれど、20歳代にこの市に在住したので病院の事は記憶にあるし、当時本部が本町と淀屋橋の間のビルにあって勤務先が近くだったため、この時の隆盛ぶりはよく覚えています。また学生時分に徳之島へ行った際に、ムシロ瀬という海岸の岩場で滑って左指を怪我した。だが病院など無く薬局で薬を買って凌いだこともある。鹿児島の離島には何度か行ったことがあるので、僻地医療の実態を経験したが、徳田氏のような自らの経験から、医療格差是正の行動には共感できます。

ベトナムの医療に関してこれまで何度かコラムにしたけれど、何年も住んでいれば彼の地でお世話になることは当然、幾度となくあります。また視察で有名病院へ行くとか、国際病院、国内病院などで受診も経験したけれど、その施設や設備、医療レベルの差は実際に行った者でなければ理解しようがないほどの落差が見えてくる。まして大病院であっても驚く程の貧弱な設備をみます。
現地報にHCM市保健局が市内の120カ所の医療施設、公立病院51、私立病院63、その他6病院についてスコアに拠る評価を実施し、ベストと10とワースト8を公表したとある。こんなことを行政がなぜ出来るのか、と疑問に思うけれど、2023年度に実施して、5点満点でランキング形式での評価。これに拠るとトップ10は4,57~4,78ポイントと高評価。この中に日本人にも有名なトゥーヅー病院、筆者が過去に健康診断を受けたフンブーン病院、第一小児病院などが含まれる。なお4ポイント以上は11%増えて41病院。
平均は3,71、前年より0,04ポイント改善。また最低ランクは3ポイント未満で、前年比では11%減少したとあります。
ワーストに含まれるのは韓国系の2つの美容病院なども入っています。
保健省のベトナム病院品質基準、手術品質基準、検査室品質基準、患者と医療スタッフの満足度に基づいたものだとされている。
さらにHCM市保健局では、健康診断内容、医薬品の保管方法、デジタル技術活用度、治療サービス広報活動、データベースへの出生証明書と死亡証明書の接続などの評価を追加で行なったとある。
だが食事栄養、民間病院での医療研究、デジタル技術の活用などで課題があるとするがこれは全体的に問題がある筈。
筆者は満足に病室を確保できていない現実。廊下にはみ出たベッド、満床どころか溢れる入院患者。受け入れるのは親切な感じもするが、こうなると満足な医療を受けられる訳は無く、また薬にしても院内では出ず、薬局で家族が購入。日本製などは外国資本の病院で一部出されるが、地場では国内製品かインドやフィリッピン製を多く見かけた。院内スタッフも待遇や技能、設備には決して満足しておらず、果たして正確な調査結果なのかは疑問。

どう見ても納得できるランキングだとは思えない。
お手盛りとまでは言えないけれど、日本の支援で建設され、ベトナム三大病院の一つとされる5区のチョーライ病院は上位ランクに入っていません。
チョーライなど新病院に移ると近代的な医療を受けられるけれど、さて優秀な医師の確保はと言えば難しく、外国留学をした技術を持つ医師など居つかないし育成も出来ない。国立などよりも、むしろ最近増えて来た民間病院の方に人気があると現地の人は言うのです。さらに監督官庁の無知さ。まともな医師は勤務が嫌になるという実態があることを聞いた。
またトップ10の病院も医療機械は古い。レントゲンなどもはや旧式の数十年も前の物を使っていたし、視力検査もオタマジャクシで目を隠す。だが採血はすごく上手だったのにはビックリだった。
V‐GAPと同様に、本来G‐GAPがあるけれど、これを採用しないのは、世界的な標準ではまともな評価が出来ないため、自国での評価基準を造る具合なのだから、このランキングを須く信用することなどない。
徐々に良くなったというけれど、近隣アジアの先進国に比べるとレベルは低く、要人やリッチ層は海外で手術を受けたり、加療を余儀なくされたりという具合で基本的に医療が進歩発達したという話でもありません。

10年程前まで白内障の手術でさえ眼科医は目にメスを入れるなど怖くてできないというレベル。これを日本人の服部先生が日本の各病院でアルバイトしながら資金を集め、若い学生など有志が支援して懲りもせず無料で行ったくらい。
従業員が診察を受けたHCM市眼科病院でさえ漢方薬を処方されただけ。医療用の目薬もなかった。専門病院もまともな検査機械とか手術機械・器具は無く、さらに日本の開業医で可能な手術でさえ出来る技量が無いのです。
チョーライでさえCTは何台かあるけれど、MRI、MRAは数えるほど。となれば市内の病院でまともな検査できる所は一体いくつあるのか。検査技師は居るのかだが、何しろ何億円もするような機械を保有できる所は少ないのです。
だから地方の病院では検査を受けられずに、HCM市に治療に来たところで、もはや手遅れ。最近は聞かないが盲腸で亡くなった母親を持つ知り合いが居る。

ある現地在住者。これは地方の都市だが転倒して指を骨折。日本の様な検査をされず、必要な材料とギプスを買って来て処置したと憤懣やるかたない気持ちで記事を書いていた。直らないので帰国して病院で検査すると、何と靭帯損傷と診断されたが、もはや後の祭り。今でも曲がったままです。
同じ様に視察に来られた会社の社長がケガをした。国際病院で診察してもらったけれど、帰国して後に再検察と処置を受けた結果、手術しなければいけない程の状況だったというお粗末な話。これが現地の医療機関の実態。

筆者も耳鼻科の専門医から手術しなければ行けないので帰国をと勧められた。
しかしどう見てもおかしいので別の国際病院へ行ったところ、外国留学の医師は笑っていたほど専門的知識や知見が疑われる医師は多いのです。
さらに筆者が居た7区の有名病院。さる人が盲腸になって入院した。ところが国際基準をクリアしているのに、手術の説明など無くサインだけさせられた。これは医師が一般人を低く見ているためで、説明しても分からないから無駄。と考える訳で、さらにあくどいのは患者から金品を受けとる体質は残ったまま。記事はある種のプロパガンダかも知れないが、恣意的とまで疑いの目は無いが意図は何処にあるのか。しかし仮にも行政が人心を煽るような行為をするのは良くありません。
こういう状況が横行しているのに拘わらず、先に病院の実態を明らかにして、患者が安心していける病院造りをしなければならないのに、話が逆です。
相も変わらない賄賂の要求もある。国が関係する病院が多い様だが、薬品や医療機器を納品するのなら同じ国営の業者が優先され、民間事業者や問屋が入り込む余地は少ない。
さらに酷いのは患者家族から金銭をとる習慣が今も続いている。金のある患者優先で、金が無ければ中々診てくれないこともある。こうした事を見ると日本は法的な事もあるけれど、一応公平に医療を受ける権利のある事がつくづく身に染みて来ます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生