中国メディアが報じるところ、「男の子が生まれる水」なるものが爆売れ。
何と月20万ケース以上出荷されたというが1本300ミリリットル・24本入りで22,5元(465円)もする。
オンラインショップでは一人1ケースまでとご丁寧に制限を掛けたというけれどまさに神格化。与太話の類に違いは無いけれど、この国でも男子偏重なのだから「信ずるものはワラにも縋る」勢いは仕方ないのかも知れないが、何しろ流言やデマがSNSで持ち切りとある。しかし誰が火を付けたのか、嘘を拡散したのか分からないのが現在の危険な世の中。
単なる弱アルカリ性の天然ミネラルウオーターで健康に関する効果は無い食品と発売元は言い、理性的な行動をとってとか、大学病院の産婦人科医師はそんなバカなと「ウワサを信じちゃいけないよ」とリンダ節でお説教。
かつてアルカリ度が高ければ男子が生れるとか、酸性度が高いと女性などの噂が出回ったような記憶があります。だからせっせと食品を選ぶ努力をしたなどの話もありました。だけどこれ等は殆んどデマだし、男女の産み分け方法など中国に韓国などでも古来存在し、因習に囚われた金持ちの婦女など弱みに付け込まれ大枚を叩いて偽薬を密かに買ったなど、テレビドラマにも良く出て来るので歴史が繰り返されているだけ。形を変えて今後も何かの拍子に出てきます。
またコメント欄ではこんなの信じる人がおかしいとか、男尊女卑が続いているとか等々の冷静な意見も噴出。中国らしいというより、未だに化学的根拠が無いのに迷信がまかり通る騙しの世界があるのは、ある種の民族的脅迫観念から脱出できない地域文化の恐ろしさかもしれない。
自然の摂理を超えて人の気持ちが割り切れないとか、現代であっても科学的に解明できない超現象はある。だがあくまでも作為的とも思われる事象には悪意を感じざるを得ません。
この記事を見て日本にも色々あるなと浮かんできたけれど、迷信とかでなく、ある意味で戒めとか、先人の知恵かなと思えるものもあったし、ベトナムにもそういう話があったことと思い出しました。この幾つかを挙げてみます。
その1 こんにちは赤ちゃん
知人の姉が出産。この時婚家に戻らず実家で1月過ごした。この間風呂を使わないままなのだが、これは穢れがあるというためだそう。産所から帰宅する際に悪魔に狙われやすいとの事で、懐刀を持って母親が付き添った。
また玄関入り口でろうそくの火を跨ぐという風習が残る地域もあるのだとか。
もちろん今なら病院から車やタクシーで帰るし、日本で出産するなら親は心配でもそういう風習は無く、若い人はアホくさいと一笑することでしょう。
子供の名前をわざと変につける。古い習慣とかで良い名前だと悪魔がヤキモチをやいて憑依するとか。流石に今は無いが、日本では橋の下から拾ってきたなどとしてワザとするが、健康に育つようにとの願いは同じ。しかし迷信や流言の部類の範囲を免れません。
また赤ちゃんに可愛いなど、褒めることをしてはいけない。これは出産の神様がいて、骨たりすれば子供はその反対に育つという。
しかしある日本人とベトナム人の一人子。彼女が初訪日で心配したのが「うちの子は可愛いから誘拐される危険がある」と霹靂、私は辟易だが片時も目を離さなかった。確かにベトナムは今でも誘拐事件があり、中国へ売り飛ばす組織がある。だが悪魔は全く以って無視なのか、親には全く似ず成績優秀ときた。
何と日本語、英語に中国語。挙句の果てに台湾大学医学部へと進学。どうしているのかな。子供時分、テトにはバインテットを持ってきてくれました。
因みに一年のお祝いを盛大にするしきたりもある。親戚や友人などを招くが、参加者は贈り物を持って行く。じいちゃん・ばあちゃんからは金の腕輪とかを貰うのです。これは乳児の死亡率が極めて高かったので、よく一年もったな!という心からのお祝い。物よりも現ナマが喜ばれるのはゲンキン。
その2 黒子に生える毛を取ってはいけない
多くのベトナム人、若くてもホクロに生えている毛が長いのにとる気配はない。
もし取ると、運が逃げて行くとか。一本どころか二本、三本であっても本人は至って大真面目。筆者が在籍した日系企業に真面目で日本語も上手なスタッフがいて、当初知らなかったので教えてくれた。だけど当時は珍しい大卒者。
散髪屋では顔そりを滅多にしないが、一部では顔を沿ってくれます。日本人の美容師が何人かHCM市で開業していたけれど、これを知らずに、もしやってしまったら、どうなのか。取り返しがつかなくなるかもしれない。
その3 写真は偶数で
日本も同じだが、奇数であればその真ん中に居る人が一番早く亡くなるという。
観光であっても、写真を撮る時はみんなが気にすることで、人数を数えて一人足りないとか言って呼んでくる。さらにこの人物が亡くならなければ、遅かれ早かれ他の二名も含めて何らかの災難に遭うとのこと。まあ迷信。
日本ではかつて葬儀を自宅で行うことが多かった。そこでこの葬儀中の家の前を通る時は親指を中に入れグーの形で通り過ぎるとされていました。
その4 数字の吉凶も幾つかある
4は不吉な数字。日本でも死に通じるからだが、ベトナムでも数字の4はbonとあるが、tuと呼ぶこともある。あまり使わないが死(tu)で、発音記号の違うのだがそれでも忌み嫌われる事があります。だがアパートなどでも4階が無かったりすることもあって、いまもって4階と表示しない場合もあるのでご注意。
また7もラッキーセブンではなく、しち=thatと失=that。発音記号も同じ。
しちはbayという方が多い様なので、単なるゴロ合わせ。これは一般人が外出すると何かが起きるので出かけてはいけないとか、経営者ならば失に繋がるので嫌がります。まして77=失敗、即ちthat bai、yとiだが発音は似ているので無理もないが、単にゲン担ぎなのかもしれません。
また一般的に35は、スケベという意味なので、年を聞かれてまさに35なら笑いが起きることもある。暫くたてばやっと理解できるのです。
だが9はベトナムではラッキー数字。日本ならさしずめ苦か。これは永久からの久=cuuからくるのだが、9999など電話番号とかバクのナンバープレートは高額で売れるのとニュースにもありました。また日本のベトナムレストランでも野飲めるビール333、これを足し算すれば9に成るのでラッキーといわれるが、意識して付けたという話を聞いたことがある。
6も良いと言われるのはlucだから。殆んどはsauだが縁起担ぎのゴリ押し観。
8もよさそう。日本では末広がりの良い数字八。ベトナムではtamだけどbatともいう。即ち開始の意味bat dau、発展のphatに発音が似ているとするが、過剰反応気味。商売に良い数字とか。やはり漢語の読みから来ている模様。
この他にも、夜にシャワーをしてはいけないとか、風の場合は冷たい飲み物は避けるなど健康上のこと。特に日本と違って衛生上の問題、水は綺麗でないとか、冷蔵庫が普及していなかった時代に氷は雑菌が混じっていて良くないとの意味だったのかもしれません。
またご飯にハシを立ててはいけない。これなど日本のも同じことを言われるはずだが、ベトナムでは亡くなった人と繋がるからだとか、線香を立てた香炉と一緒だからと嫌がるのです。
テトの際、朝一番の来訪者が良い人ならその一年は良い年になると信じられており、わざわざ頼みに行くほど念の入れ方。時間を決めて待機、他の人物が来ても空けないが、指名した人物と解かれば鉄のシャッターを開けて歓迎する。
贈り物は西瓜、中を開けて赤いほど幸運な年と信じている。
逆に朝一番に妊婦が来るとその日はマイナスというけれど、至って大真面目。悪魔は臭いものが嫌いは共通。幽霊とか猫や犬などに関してもあり、知らない迷信はもっとあるかも知れないが、一番怖いものとは、実は生身の人間です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生