現地大手トイチェなどが報じたところに拠れば、共産党中央委員会は第13回全体会議に於いてラム党書記長が議長を務め、進行中である合併後の省レベルの行政単位数を28の省と6つの中央統括都市を含む34にする事で合意した。
またこの大規模な計画の後には、草の根レベル?単位も60~70%削減すると提案しているのです。
この発表はファム・ミン・チン首相が議長を務めたハイレベル会議で行なわれ、政治局の指示を受けて中央政府の党委員会は、行政単位を合理化し、省レベルと草の根レベルの二重行政システムを作る提案に取り組んでいるとあります。
議論の中心となったのは行政単位の統合基準、潜在的な再編計画、新しく形成される行政の命名基準、および省・草の根レベルの行政と機能だったという。
チン首相は世論の大多数がベトナムの現在の社会経済発展、デジタルインフラの改善、交通ネットワークの強化、また効率的な政府の必要性に合せることを目的とした行政改革を支持していることを強調。この再編によって新たな開発機会が生み出され、地域の潜在能力が最大限に活用されることが期待される、と良いことずくめを自画自賛しているが、よく読めば肝心の中身は変わらない。
首相はまたリストラは地理的な地域、人口規模に加えて歴史的、文化的などの要因を考慮しなければならないとも述べ、新しい行政単位を命名し、歴史的、地理的、発展的な考慮すべき事項に基づき行政センターを慎重に選択、この際には歴史的に連続性を維持することの重要性を強調したとあります。
かつて日本は自治体の大合併を行なったことがあり、大阪では府市の二重行政を解消するとのお題目で、維新系の知事・市長が大阪都なんて統一を目論んだけれど完全に否定されている。これは選挙による民意が反映しているのです。
だがベトナムではこういう民意を問うなどの手続きは無く、党が都合に拠ってこうした大事業が実施され、誠にその言い訳が極めて理に適った作文に基づき報じられるため、何処まで、何が真実なのか、良く理解できません。
しかし合併によって行政は市民の効率向上、公共サービスの向上、生活の質的向上をもたらすことを政府が保証するとコミットメントを出しており、これを政府高官が再確認していると報じた。高官は利点として行政単位が合理化されれば地方自治と人間中心のガバナンスが強化されると付け加えたが、詭弁でしかなく、共産党一色の政治体制は変わらず、考えられないというのが巷の見解。
具体的に何を指すかと言えば、政府サービスのDX、スマート都市への投資といった公共部門の近代化を成すための広範囲な取り組みであるとしています。
これが、国民が納得するだけの、また人間的な暮らしをするために必要な事かと思わざるを得ず、であれば他にするべきことがあるのではと誰もが感じる。
然し早速波紋も出ており、大規模なリストラが行われるという噂が出ており、新たに合併した農業環境省などでは辞任が続出。3月6日には同省に勤務する職員などが717人も辞任・辞職を申し出る由々しき事態。さらに283人が金銭的補償を受けられるなら退職の意向を示しているのは本質をみたからか?
党の思惑が何処に在るのか、これは現場が最も良く実態を解かっているゆえのことであり、これから再編作業が進んでいく中で、こうした人材が辞めて行く状況に成り兼ねないという心配が出てきたのです。当局の考えとは裏腹に何か、何処か、違いのではと言った懐疑心がこうした大量の辞職問題として顕在化したのは憂慮すべきことにも拘わらず、シナリオに基づいたプロパガンダを作成するのだが、当然これは日本向けのベトナムニュースには全く伝わってこない。
そこでラム書記長は、政治システムを合理化するための戦略的で、前例のないイニシアチブをとるための一部で、急速かつ安定的、持続可能な国家の発展を促進するという包括的目的であることを強調したという。何やら煙に巻かれるような感じで痛みを伴うという訳。何を言いたいのか具体性が全くない呪文。さらに国民の生活水準を上げて、ガバナンスを受動的な管理から、積極的なサービスと開発の促進に移行することを目指すとした。この合併は科学的、革新的、実践的な原則に基づいており、少なくても100年という将来を見据えたビジョンを持っていると力説し、火消しに躍起と思われても仕方がありません。
また再編は経済的、社会的、文化的開発スペースを拡大することを目的とし、再編後、地方政府は効率的に運営され、人々に寄り添い、現代のガバナンスの要求を満たせる事が期待される。新しい制度では持続可能な支援を行い、国防・安全保障・外交を強化、特に民間部門における経済発展を促進することが目的であるとしているのです。また科学技術イノベーションの加速にも焦点を当て、人々の物質的、精神的な幸福を改善する。改革の取り組みは継続され、透明性、説明責任、監視の強化を強調し、これは全てのレベルと部門に渡って人事管理政策の包括的更新も含まれるとしているのだが、気に入らない奴は追放なのか。
この過程にあって、特に行政単位の再編成と公的資産の管理に於いて、汚職、浪費、派閥主義、権力の乱用を特定し、厳格に対処することも含まれるという。
新しい構造の下では、省レベルの部門は、中央の政策を実施し、省・市の政策を行うと同時に、コミュニケーションレベルの行政を直接監督するとしているとある。これを素直に読めば国の指示に従って、しかし行政レベルでは独自の方法で表向きはやっていい。日本でいうなら法律があるけれど各道府県の条例があるという類のようだが。しかしどう見ても市民優先の目線からではなく、中身は変わらず住民管理をし易いように組織を改変するだけとしか見えません。
権限の委譲とされるが省レベルから受け継がれた政策に責任を持つ一方、地方は法的文書を発行出来るし、法執行機関も組織できる。管轄内での問題が決定可能な自治権を獲得するなどホッペを捻りたくなる感じだが、一体全体各省でこの様な盛沢山な案件を処理できる能力があるのか。それだけの有能な人材が居て、実施に資金があるのかなど何処まで実施が可能なのか良く分からない。
若い能力のある人が登用されるとなって、これが地方自治に反映。そうなると仮定すれば省間での富裕格差はこれまで以上に大きくなる可能性がある。また高等教育も重要課題であるけれど、では子供に基本的な考え方を無視してまで好き勝手自由に民主主義的教育の実施をしていいのか。こうなると完全な体制変換で絶対的権力放棄を意味するため、中央政府が認める訳などあり得ない。
であれば、長々と書記長が上手に説明したのはきれいごとにしか過ぎません。
共産党としては一流の国家を目指して法律の整備を進め、賄賂の無い社会を目指しているけれど、道徳や法律を疎かにして来たためで、今さら思うようにルールなど作れないし運用できない、これが表面化してきたとしている。そこに来て人材不足が顕著になってお手上げの状況。確かに世界的にも稀に見る成長を果たしてして来たが、
成長は多面的に外国、外資に依存したものであり、これに並行して国内人材が政府でも民間(企業)であっても追い付いておらず育成もされてこなかったツケなのです。
ラム氏が書記長に就任した時から、極端な見方をすれば、何らかの意図や思惑で、これらを含めた改革、省などの行政組織から再編成から手を付けかとも推測できる。だが書記長や政府が躍起になろうが、強権発動しようが、農業環境省であった大量退職の通りで現場の雀が踊らなければそれまで。折しも習近平国家主席が来越。
相当の重要案件が合意したけれど、国民の医師に関係なく中国と接近するのか。
草案に拠ればハノイ、フエ、ライチャウ、ディエンビエン、ソンラ、カオバン、ランソン、クアンニン、タインホア、ゲアン、ハティンの各省は再編されないとあります。HCM市、ダナン市、ハイフォン市、カントー市など残りは面積、人口、地区単位の数、此の三つの主要な基準に基づいて統合の可能性を評価するとしているが、万一要件を満たすことが出来ない地域は再編成の対象になる。
また山岳地域、または高地の省は最低面積が8,000平方キロメートル、人口は少なくても900,000万人以上でなければならない。他の場合5,000平方キロメートルで、人口は140万人と規定している。
中央集権的都市は最低面積1,500平方キロメートル、人口100万人以上。また全ての行政単位には少なくても9の地区レベルが必要。区の面積は少なくても35平方キロメートル、最低50,000人必要。
ベトナムにコミューンレベルが10,035あり、この内9,996の70~75%が削減される予定とあるが、多民族国家ゆえ纏められない悩みともいえる。
コミューンレベルでは、山岳地帯、高地、または人口が少なくても30%以上が少数民族である土地に国境を持つコミューンを新たに再構築、人口7,000人以上を満たすことを求めている。4つ以上のコミューンが統合される場合は、面積と人口の多寡は関係なく免除される、場合もあるとしています。
こうした中で、どの省がHCM市と合併するべきかという議論がある。専門家はアジアのハブでもあるため、近隣のどの省が適しているのか提案しています。
地理的、人間の調和はいいとして、天のタイミングまで伝統的に重要だとしているのには恐れ入る。また海岸線が長く港湾施設があるとか、工業団地が多い省が良いとか喧々諤々だが、インフラプロジェクトが戦略的に見直され、調和のとれた開発が可能になってこそ、最大化されるのが良いと提案している。
だがこうなるとHCM市の独り勝ちと巨大化が見えるだけ。近年トゥドック区を分けたばかりなのに、またもや再編成とは?訳が分からなくなってきます。
書記長は、ベトナム祖国戦線委員会、社会政治組織、および全てのレベルでの団体を統合し、これを合理化することに対しても合意したというのです。
記事に拠ると、これ等には公務員と軍隊の組合の解散、公務員やその他の従業員の組合費拠出金削減が含まれる。さらに中央委員会は人民法院と人民検察院の再構築にも合意したとあり、地方裁判所と高等裁判所、および検察院は解散し、最高人民法院・検察院、省・市裁判所、地方裁判所・検察庁の三段階へとシステムが置き換えられる。だが軍事裁判所と検察の構造は変わらないとしているのは、斜めから見れば書記長の権力保持のためでもあり、より強固にと考えても可笑しくない。
ベトナムはかつて国有企業の再編と合理化を進めた。しかし数は減ったけれど、再編された企業に勤める人の絶対数は変わらなかったという事実があります。
今回の省などを減らすということが、これと同じ様に、形は変わったけれど、実は何の変化も生じていなかった。ふたを開けると、これと同じになっていた可能性が無きにしもあらず、という状況になるのではと思わざるを得ません。
ではベトナムに在住する日本人の見方は、一部であるけれど、この再編の話が出て来た時期に合わせるように、行政手続きの遅延が非常に多くみられるよう
になったとあります。明日は自分がどうなるのか?気もそぞろになるのは仕方がありません。
また多くの国民のいら立ちを感じている様だとあるのが真実だろうし、表向きは経済成長を続けているが、内実は思うほど良くない時期になぜ、と訝るわけなのです。
掛け声通りに上手くいかないで再編、統合が出来ず時間が掛かっている。統合出来てもこれを運営する人材が党内で育っておらず少ない。必要とされる規則に法律が追い付かないなどの問題を指摘しているが、長年住めば自ずと見えて来ることです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生