円は150円辺りをウロウロしています。日銀はアメリカの動向から政策金利の引き上げを今回は見送りました。70円台だったころ、ベトナムでまだ生活している時分だったけれど1万円=370万VND超えだったと記憶している。
それが今は150万VND程度だから、円はほぼ半分の価値。それでも5月のゴールデンウイークのお勧めは旅行会社に拠ればベトナムだとか。この理由、円安はあまり考えなくても十分ツアーを楽しめるとかで盛んに募集しています。
しかしこの当時の円:VNDの為替レートを覚えている者にとって、全く響いてこないキャッチ。まして現地の物価など大幅に上昇している。なんてことを想いながら新聞広告を見ていました。
デジタルノマドってナニ!? これはベトナムの現地報に掲載されていた記事のヘッド。しかし筆者が初めて聞く言葉でした。
固定された場所に縛られることなく、リモートで仕事をする個人を指すのだそうで、それなら日本だって震災以来増えてきているし、それ以上に興味があり、リモートで仕事が出来る人なら、日常は田舎暮らしをしながらデザインなどの仕事を受け、意思決定をする会議の時だけ上京するというスタイルの方を取材していたのを思い出した。誠に羨ましいと思いつつ、しかしこれでは不器用な筆者にはとても無理!と考えていたところです。
するとアメリカの労働者の11%がこのデジタルノマドだと自認し、昨年には1810万人も居るとある。しかしこの全員がまさにこの仕事に従事しているという訳ではないし、各国の大手企業でさえも反対意見がかなりあるけれど、これからもっと増える傾向にあることに違いはありません。
そこでどんな場所が適しているのか、ということをトラベル誌が調べたところ、高額な費用を避け地元の文化体験が出来る、一年中温暖な気候を求める傾向があると云うのです。そうなるとスペインが一位で、フランスが二位に選ばれたとされているけれど、別の報道ではアジアの国々が滞在に手ごろな価格で済み、完璧な選択肢であるともしていました。
ランキングで評価されるのは、仕事上インターネットが繋がりその速度が速いこと、税制と免除、ビザ取得要件が容易、生活費・医療費の質、観光が魅力、などの要件だが、現地生活するには言葉が分らなければ容易ではありません。
これに当て嵌まるのがスペインとかフランスだったようで、スペインは外国人がリモートワークビザで一年間居住する事を認めているものの、スペイン人の最低賃金の2倍に相当する2646ユーロ(2855ドル)以上を稼ぐことを条件にしているといるから、意外と楽に行える仕事ではないようです。
さてベトナムだが、結論から言えばダナン、ホイアンがアメリカ人のデジタルノマドにとって、アジアの手頃な目的地トップ5にランクインしたとあります。
これは旅行ガイドブック、トラベル・オフ・パスの2025年度の調査で判明したがベトナムの2カ所。この理由は、ダナンが文化、歴史、自然が融合した魅力で旅行者を魅了している。生活費は手頃で月額の平均賃貸料は355ドル、PHOは1,6ドル高級レストランでも24ドルだとしています。
さらに寺院があり、スピリチュアルな隠れ家として過ごせるし、ビーチが多く、山のリゾート施設にも近くて、今では様々なアミューズメントが楽しめる。
しかし今のアメリカ人には分らないけれど、此のダナンはアメリカにとっては越米戦争の際に米軍のヘッドクォーターが置かれた要衝で、ここを拠点として中部地域で韓国軍などとともに殺戮を繰り返したのです。
直ぐ隣にあるホイアン。ここも文化の豊かさや、生活費から見て最も魅力的な目的地に上がっている。街の中心部に歴史的な寺院があり、海のシルクロードとして栄え、さらにフランス植民地時代の建物も残されている。そこに毎月の生活費は909ドルと格安。こんな優しくて良い所は他に、タイのチェンマイ、カンボジアのプノンペン、インドネシアのマカッサルだとしています。
ホイアンに関しては以前コラムに書き記したが、切り口をデジタルノマドから変えて、アメリカのトリップ・アドバイザーの読者投票に拠れば、2025年度世界の新婚旅行先ベスト25の内、4位にリストインしているとあります。
しかし別の記事にホイアンは長い間バックパッカーに人気があり、黄色い壁と赤い瓦屋根の民家で知られ此処で写真を撮るのが人気とある。昨年もアメリカ紙に拠る世界で人気のある最も美しい観光地4位になったが、物価上昇で長期旅行者にとってそれほど魅力はなくなったとしています。
これは一つに物価の算定に使うアイテムに問題があるからで、筆者の経験に拠ると旅の目的を変えるとなれば、また彼の地に歴史的価値をどのように見出すかによって判断基準は自から変わってきます。このため調査会社のレポートを基準に旅行先を選ぶのは良いとは思えない。旅の醍醐味というか、面白さというのは物見遊山や現地の豪華で美味しい食事を越えれば、最後に残るのは人との触れ合いであり、現地の文化や相手の慣習を尊重しこれを受け入れることではないかと考えます。短期間ではなく、長く逗留するとなれば現地の人の助けが無くては生活するのには限界がある。この辺りの事情を事前に調べてから行くべきで、だとしても思わぬ障害はあるもの。雑誌などに惑わされず自分なりの手作りの楽しみ方に挑戦、生活体験を通じて本当の旅の価値を見出して欲しいと考えます。この二都市へはベトナム航空のダナン直行便が就航しており、古都フエなど中部地域へ旅行と併せ計画し易い場所です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生