水害の甚大な被害が拡大

2025年11月25日(火)

今年の日本の夏、全国各地は異常気象に見舞われ、最高気温30度以上という夏日がこれまでの最高を記録した。また雨風の被害も大きく、この先も場所を問わずに続くのかと思えばうんざりする。黒潮の蛇行は7年ぶりに元に戻ったとあるが、これで気象の異常さが消えるというものでもなく、原因は温暖化が石炭や石油など、エネルギーの利用が急増した産業革命以後に地球規模で進んでいる説が一理ありそう。
ベトナムでも今年の台風の多さは異常と言われるが、9月、10月の2ヶ月間で4個もの台風が相次いで北部を襲い、観測史上最も甚大であるという豪雨、それによる大洪水を北部でもたらしたと現地ニュースは報じています。
発生数、勢力共に例年を上回るスーパー台風とあり、年末にかけてさらに2~3個の台風が発生する恐れがあるとしているので戦々恐々。
スーパー台風9号(ラガサ)と10号(アロイ)は何れも強い勢力であったが、この原因は海水面の温度上昇とラニャーニャ現象で、9月初旬から再び発生。これで大気の循環が変化、東太平洋の海水面温度が低下、反対に西太平洋側の海水が温まり台風の発生を促進していると云われます。

これは1998年にも同じような状況があり、2000年には中部地方フエ、ダナンへ相次いで台風が上陸して大きな被害をもたらしています。大勢の人が亡くなった様だが、道路は遮断されて状況は掴めない。フエ市内はフォン河が氾濫して市内は1メートル以上も水に浸かり、水が引くのに1週間かかった。民家の壁には水が浸かった線がくっきりと表れていました。
この道路遮断に慌てた政府はハイバントンネルを早期に完成するため、日本のODAを活用して工事を急がせて完成させたのだが、この当時、気象に関する予報は全くできておらず、それこそいつの間にか風雨が強くなりあっという間に水嵩が増えたと前近代的。さらに防災という考えは殆どなく荒れ狂う雨風に身を任せる外なかったのです。殆どの住居は平屋、しかも田舎に行けば行く程に粗末な造り。救助を待つ間、何処にも行けずひたすら屋根の上で辛抱していたという酷い有様でした。海岸に近い海では陸が後退、また河川に近い住宅の敷地も流されてしまった。護岸工事など全くしてなかったが今も変わらない。
HCM市に居住するこの地域の出身者は、親や親戚に見舞金を送るため郵便局へ駆けつけたが、相手に渡るまで10日間も要した。また被害を受けなかったHCM市の会社や人は出来る限りの募金に応じ、企業も食料品を送ったけれど、行政に頼らず新聞社へ預託するか、自社でトラックを手配した。この理由とは、信じて任せると現地には行かない恐れが多分にあるためというからビックリ。

・HCM市でも物価が急上昇

水害に遭った地域以外でも都市でも市民生活に影響があったのは、風雨の被害だけでなく、物の値段が急上昇した事です。青果は供給が途絶え、葉物野菜が特に品薄になり高騰した。さらに雨は野菜にダメージを与えるとかで入荷量が激減、仕入れる方も早くに傷むのが速いというのでは慎重にならざるを得ないわけで、これらが上昇の要因だとか報じている。ものによっては30~50%から、数倍になるものまであるようだとしている。

・ベトナムの都市は時代遅れの排水システム

現地報はこの台風(10号来襲は10月15日)による被害を地域ごとにその状況を航空写真入りで詳しく報じているが、生々しく農地など完全に水没している状況が分ります。
北部の港湾都市ハイフォン市は4時間雨が降り続き、市内の殆どが50センチメートル以上の深さに達したという。この原因の一つに古い排水系統であるためで雨水排水が機能しなかったのです。市の排水はフランス植民地時代に建設され、改修は続けたけれど時代遅れのため追い付かない。また市内全域に渡る排水計画がされていないので、50mm/24Hの雨量で広範囲に洪水が発生するのです。市内の主要道路は浸水、また運悪く満潮と重なったために雨水は海へ排出できなかったのです。

国立気象予想センターでは、弱い寒冷前線と亜熱帯性高気圧の山から流れくる東風が相まって北部に大雨をもたらしたと発表。記事には4つ北部の省(タイグエン省、カオバン省、バクニン省、ランソン省)が最大3メートルもの洪水に遭ったとあり17000戸の家が浸水、1600戸が孤立しており、広範囲に被害が出ている。
他の北東部の雨量はクアンニン省で123㎜、フンイエン省タイトゥイで169㎜、キエンスオンで159㎜を記録したとなっている。紅河では30~70㎜、一部で130㎜、北部では20~40㎜、から80㎜とあり、昨年の大型台風ヤギよりも被害が大きいとあります。
また多くの地域で停電し通信が困難になり被害の実態がつかめていない。問題はこの後に想定される地滑りで、軍が3万人を派遣して生活が遮断された地域へ救助に向かっている。
バク認証は工業団地にサムスン、フォックスコンなどの世界的企業の生産施設があり、此処でも約2メートルの洪水となっている。このため軍が堤防を建設しており、孤立した村ではボートを使用して住民を避難していると報じている。

・メコンデルタでも洪水

メコンデルタ・ドンタップ省のドンタップムオイにある数百ヘクタールの農地が冠水し、栽培しているジャックフルーツ、ドリアン、米などに甚大な被害が出たと報じています。このドンタップムオイは広大な湿地帯、かつては作物ができなかったという地。
フランス映画の秀作ラ・マンにフランスから来た家族が騙されて購入したのが此処です。実話を小説にしたのが映画になっただが、サイゴンのリセに居る女子学生(主人公)の母親は教師、プライドの高い人で一家の生活が豊かになる様にと買ったのに反って貧困度が酷くなってしまう。
ラストシーンはサイゴン港から大型船に乗って帰国するのです。

ある果樹園の経営者は堤防を設置して農園を保護していたが決壊、雨水が流れ込んだため、この排水のために数十台のポンプの設置と20人の労働者を雇ったが効果なく全滅したと書いてあります。最高水位は2,82メートルにも達したのでこれはお手上げ。
辛うじて残ったのは農薬や肥料を保管する倉庫だが、あと2年で収穫が始まろやっと投資した金の回収が始まるのだが、先ずは水が引くのを待たなければ何も始まらない。しかし堤防の修復には数万ドルも掛かると諦め顔とある。
農業環境収穫省によると、このドンタップムオイは収穫に向けて6000ヘクタールの米が栽培されていると報告。このうち7507ヘクタールの米はほぼ熟していたけれど洪水で全滅した。

・日本が洪水の規サイトへ緊急支援物資を送る

日本政府はJICAを通じて農業環境省へ緊急支援物資を送ったが、防災堤防管理局が被災したバクニン省の住民に輸送したと報じているが、これは最初に届けられた国際救援物資とあります。救援パッケージには浄水器40台、毛布5100枚、水の容器1000個、多目的用ビニールシート50枚が含まれており、ノイバイ空港に到着した。引き渡しには伊藤駐ベトナム大使が、最近のベトナムの洪水で発生した多大な損失に、引き続き日本が支援プログラムを通じて支援すると表明した。
ベトナム側は災害堤防管理局のティエン副局長がタイムリーで有意義な支援に感謝し、同庁が速やかにバク認証の困っている被災者に届けることを保証したと報じている。
日本を始めとしてオーストラリア、ロシア、アセアン防災センターなどの国際機関も人道支援をする準備を進めているとあり、北部の他の省に割り当てられるとあります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生