アジア開発銀行(ADB)は、今年度ベトナムのGDPが6,2%に達する予測を行い高い成長率を維持しているとするけれど、現地報道はベトナムは単なるコスト重視の投資先でないとの記事を掲載。
このきっかけは、HCM市で開催されたグローバル・ビジネス・フォーラムでハイテク、グリーン産業、デジタル分野の地域リーダーとして確立していると専門家が述べたからとあります。
このフォーラムは、財務省外国投資省に属する南部投資促進情報支援センターなる行政の支援を受けて、RMIT(大学)が主催したもので、政府、学会、地元企業と国際企業の関係者が集まり、今後ベトナムが戦略的改革と多国間での協力を通じてFDIを将来どのように形成するかについて議論したのです。
そこでベトナムへの外国企業の投資に関して、コストベースの投資先とされるこれまでの概念を、イノベーション、持続可能な開発可能性、デジタル変革のハブに移行していることを強調したとある。この大学のビジネススクール部長のロバート教授は、ベトナムの目覚ましいFDIパフォーマンスを強調して、議論を進めたとしています。
今年のFDIは上半期だけでも、昨年同期と比べて32,6%増の215億ドル以上の誘致に成功している。製造業、不動産、テクノロジーと科学研究に拠り促進された成長であると誇らしく、ベトナムの台頭を反映しているとした。
センターの所長イエン氏は、競争力のある投資環境を構築するという政府の取り組みを語り、世界経済の不確実性があるなかで、こうした海外からの投資はベトナムの回復力と海外投資家への魅力を発信するものだとした。そして質の高いFDIへの機運を高めると語っている。
これまで書いてきたけれど、ベトナムの発展は海外企業の投資進出によるものであり、ベトナムが世界の最貧国のひとつから抜け出した背景には低賃金で働く若い労働力があったからで、過去に政府や地場企業が世界に通用する技術を持っていたというからではありません。
先進的物つくり国家にさせて豊かにするという国家目標にしても、自助努力で賄ってきた訳でもなく、土地と労働力を提供するという以外に大した資源もないのでアッセンブリーを行うのが関の山。労働集約産業しかなかったのです。
その結果、外資系企業の輸出割合が70%を超えるまでになったけれど、それが解消されたということではなく、過大評価し過ぎの感がある。
この所、ベトナム人の若手人材が成長してきていることは確かな事実であって、この先も外資系企業にとっては重要な投資先であるに違いありません。
政府は長い時間をかけ外国からの投資に対して徐々に改善し、企業側の負担が軽減してきたのも事実。こうした結果、多くの外資系企業は現地で事業を拡大する考えであることには相違ありません。投資リスクは徐々に減少しており、重要かつ魅力のある投資先のひとつであることに変わりなく、多くの海外企業が肯定的に捉えるのは、道路や物流などのインフラ整備が進んできたからでもあり、さらに文化の異なる特に欧米からの投資にあっても、受け入れ側に問題が少なくなって来たからで、ハードルが低くなったと言えなくありません。
だが今も残っているとされる管理の複雑さ、人材不足、これは単なるワーカーではなく高度な専門人材を指すけれど、足りないのは事実。高度なまた専門的教育体制が不十分であり、手先が器用とされてきた工場労働者でも外国の向上で勤務するには即戦力というだけの能力はない。さらに工場勤務を嫌がって、第三次産業に就きたい若者は多いが、この現象は何れの国であっても発展するに連れて出て来るのは必至です。さらに問題となるのは高齢化社会に突入してきた結果、これまで有利と言われた人口ボーナスが目に見えて減少してきた。
これに並行して企業側にとって成長の結果、労働コストが膨らんでおり、一層加速する傾向にもあるのは高いリスクであるのです。こうなるとこれまでにもあったのだが人の取り合いが出て来る。まして海外に留学し高度の知識と経験、開発能力などを持つ技術省はもはや数千ドル。すると今度は金銭の対価だけではなく、要求が高くなり現地企業の役員など経営側に就くことになるのだが、これなど日本企業が中国などで経験してきたけれど、この国でも近々こういう処遇を行わなければならなくなってきます。
これから進出を計画するのであれば、こうした事情の変化を歴史的に考慮しながら文化に生活習慣、社会とビジネス慣習の違いにも慣れなければいけません。
フォーラムでは、欧米の国の代表がベトナムは最後の進出目的地とか、リップサービスが通用しても現実のビジネス・フィールドはそんなに生易しくない。
多くの日本や欧米企業はベトナムを魅力的な投資先という考えを持っているし、さらに先に有望とされる投資先はインドだし、西へ行くとアフリカ諸国は更なる投資先であり大消費地。そこで中国は例の如く援助をチラつかせて来たが、日本はこれに対して先般閉幕した第9回のTICADで、日本とアフリカ諸国が共創という理念で新たな次元で日本の産業協力や保険政策、人材育成などの重点分野に取り組むとした採択を行なったが、これこそアフリカが最後の投資の目的地であるに違いないと考えるのが良いようです。
だがこのフォーラム参加したインドの商工会議所は、インドへの投資は未開発とし、印越間での協力を奨励し双方ともに有望な消費市場であると指摘。またインドはHCM市とダナンに金融センターに付きインドにとっても魅力とした。
インドは近年急速にベトナムへの投資や観光客が訪問し、ベトナムにとっては新規の重要な国であるのです。
国内企業はFDI企業がベトナムにとって、バリューチェーンの先にどのように役立つのかを共有し、若手起業家の育成を促した。また地場企業に対して、質の高い外国からの投資を呼ぶには、質の高い世界基準に合わせる様に促したという。投資家の信頼はインセンティブやインフラもあるが、ビジネスの透明性とし易さと多様性であり、労働力とサービス部門の拡大はFDIの次の段階で優位に繋がる差別化要因となる、RMITの外国人教授が指摘したのです。
即ちこれまでと本質的な部分で地場企業の進歩はなく、単に外資系企業の資本を誘致する事だけではなく、コミットメント、創造性をもつことを指摘。
ベトナムの国家戦略はハイテクとデジタル産業に重点を置き、FDIは量と質の両方を目標にしているとあるというが、何とも依存体質は変わらない。
・ADBの評価
ベトナムは2025年1~7月で輸出は前年同期比14,8%増加、2624億ドル強に達し、輸入は17,9%増で約2523億ドル、この結果1-2億ドルの黒字を生み出し、工業生産指数は8,6%の増加となった。
外国投資はどう8,4%増加、136億ドル。公共投資は成長を維持、公的債務はGDPの約36%でほぼ財政的には健全とする。
国内消費はVAT2%引き下げなどの結果、財政刺激策が有効的に進んだため安定して成長していると評価。さらにアメリカとの関税交渉で積極的にアプローチ、経済の推進にポジティブに効果を発揮したとしているのです。
しかし課題が無い訳では無く、短期から中期に亘って逆風の強まりを指摘していると警告。関税の引き上げ、ロシアとウクライナ戦争の長期化、これはベトナムがロシア側に立たなければならない歴史的事情があるけれど、また中東の不安要素が成長の重石になる可能性があると予想しているのです。
2025年度も投資、輸出、国内消費は主要な成長原動力ではあるが、好調なパフォーマンスを維持するのは難しい。国内推進力として特に公共投資を強化するのが良いのではとしている。また積極的で長期的な政策の必要性を重視し、ベトナムは高度に開放された経済だが、世界貿易と地政学的緊張、保護主義によって引き起こされる貿易と投資の流れに脆弱。輸送とエネルギーで高品質なインフラを通して競争力を高め、正津の改革と資本市場の発展、質の高い人材確保が経済効率を向上させるために必要で、さらにサービスとイノベーションの拡大も重要としたのです。より良い二次ネス環境の創出、地場企業の技術と管理能力のアップグレードを求めているのだが、これが現在の真のベトナムの地場企業とビジネス位置なのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生