ベトナム女性の社会進出 実際例

2019年10月26日(土)

4つの例を挙げます。
 
・一介の工員から日本人社長秘書になったLさん
早くから進出した企業。仲良くしていた社長は気の良い方で、工場の立ち上げから苦労し今では5工場を持つほど。功績で役員になり、だが胃を切るという代償と海外から逃れない人事は辛く、ベトナムから他の新興国の新工場へ。
彼の秘書は元工員での採用。だが日本語を話す、良く気が付く人となりが評価。抜擢されて事務所へ異動。地元から毎年500人を故郷のベンチェ省から採用するほど貢献者として新聞にも出たほどのシンデレラ。妹を大学に学ばせ私がいた7区のアパートを購入するまで頑張りました。でも周りから羨望や祝福というより何で!という誹り妬みが常に支配。社長が転任してから村八分、引かざるを得ませんでした。これが現場の怖い所。
しかし当方が事業をしている貸し事務所に入居した日本の大手医薬関係企業に就職したのです。こういうご縁が。
 
・国営企業から子会社の社長 後に独立して成功者
日本で言う大手総合商社。この一事業部門の社長を任されていたのがHさん。北の人なので色白で細身の美人だが、主人と離れて子供は2人。兄妹は海外へ留学なので教育熱心。来日は数えきれない程で家族ともども京阪へきて一緒に観光と食事をする間柄です。法律が変わり子会社として事業が出来なくなった昨年、社名も変更してれっきとした社長に。住いは150㎡ある分譲アパート。家具や置物はセンスのある立派な物。
我は強くなく控えめ。自分をアピールする様なこともせず、どちらかと言えば神経を常使う人だが着実な性質。日本人とは性格が合います。
今は日本の人材不足。毎月の様に日本へ行き、大きな人材派遣要請が大手企業から来るほど。さらにアジア各国へと飛び回る日々。だが手を広げ過ぎないのがモットー。キメが荒くなって信用を落とすのを嫌がるのです。
 
・現地法人の副社長に抜擢
大阪外国語大学(現大阪大学)を卒業、帰国してからは日系の大手銀行に勤務。
この銀行は窓口に日本人は居ない、ベトナム人職員も丁寧でない人も多いが、ある時に在阪企業の社長が彼女をみてリクルート。在日経験には得難いものがあったので抜擢しました。だがそれだけではなくビジネスセンスは抜群。現地人民委員会との折衝は彼女に任せればお手物の。難しい案件もこなす。
真面目に仕事をしていれば必ず背中を見ている人がいるという事です。
偶然ある現地視察で訪問した際、随行スタッフが彼女からベトナム語を習っていたのです。偶然の再会、二人とも当日まで知らず、顔を見てビックリ。
 
・新聞社社員と自分の会社社長の二足の草鞋
有名新聞社に勤務し、傍らコーヒー販売とカフェ5店持つHさん。自ら農場を持ち、新規にコーヒーの有機栽培を始めました。実は私が日系企業に居た時、新事業立ち上げの際に採用した子。当時は携帯電話もバイクも普及していない。面接当日に来ず翌朝一番に来て面接してくれという。ベトナム人によくある嘘でなく市内から自転車で来る途中でパンクし時間に遅れたのです。長年日本で面接して来たのでこれは本当と確信、反対を押し切って採用を決めたがなんと大正解。ベトナム人の接客は挨拶もなく笑顔はない。買わない客には不親切。だがこの人は違った。携帯電話の店を4人に任せたのですが、一番多くお客が付きリピート率が高い。愚痴は言わず笑顔が素晴らしいのを客は分るのです。大学の通信教育を受け英語も勉強するほど意欲旺盛さは途切れない。今日は私と友人の農業専門家と堆肥工場を造るためクチへ視察に行きます。普段の彼女の苦労と努力する姿勢が支援と幸運を招きます。利益は公平に分配するという。
アテにはしないが成功が恩返し。明確な理念を持っている人は少ないのです。

簡単に書けばこの様な人物像 他にも事例は沢山ある。
此処では社内教育制度が殆どなく育てるにも社員に甘えがあり厳しさを勘違い。日系企業で営業統括をする女性部長は厳しい指導で恐れられている。日本人が同じ様にすれば即辞め、優しくすればつけあがる。しかし安心して現場を任せられる能力とセンス、マインドを持った人もいて、日本人より日本的な姿勢や考えがあるのは嬉しいことですがなぜか女性が多いのです。
ベトナムで事業をするなら現地人脈を大切に、と常々話していますが、何時か結果が出てきます。但し何処でも同じですが相手とまともに付き合う姿勢が無ければ叶いません。また金銭関係が無い、家族とも仲良くなるなど、長く良好な信頼関係が築けるのは世界共通のことだと思います。
社内では人間関係も重要だが、単に対価としての給与だけでなく、正当な評価と処遇が大切。外国人社員と日本人社員という立場ではありません。社員ともこういう立場でいる社長が居て、ある時新聞から工員を冷遇する記事を出した。ところが反発したのは社員の方虚偽記事をネタにする札付きタカリ記者が社長に無心した事を知っていました。普段から社員への処遇がこういうリスクをヘッジした実例があります。
多くの企業は新興国進出が不慣れ、本当の意味でグローバル化とは何かを考え、将来の方向性を見据えるべき時です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生