ベトナムの教育①

2021年5月6日(木)

・中国のネット記事から考える

日中のノーベル賞受賞者の数。すべては教育の違いが原因、という記事が中国メディアに掲載されました。日本は特に自然科学分野に受賞者が多く、一方で中国は世界一の人口があるにも関わらず、2015年に生理学・医学賞を受賞した一人だけ。で、この違いはどこから来るのか?というものです。
而してこれは教育の違いからくるものとし、二つの問題を指摘していますが、概して日本の幼児・義務教育に関するお褒めの記事をよく見かけます。
指摘の一つは教育の開始が早過ぎる。早いほど良いとされ小学校に上がる前に教育を始め、宿題の量は半端でなく最低2時間もかかり子供が勉強嫌いになる。
二番目は詰め込み教育。枝葉末節に囚われ、社会で必要とされる素養に欠ける。
日本では言われなくても手を洗う。給食も清掃も指示を仰がずに児童が行い、
時には共に手助けをしながら綺麗に始末できる。体験型の教育も多く農作物の栽培や小動物に触れ合いや戸外活動も行っている。自然と接することで探求心、生き物や生命への畏敬の念が教えられなくても育まれると考えられます。

私は何故か小学生の時に飼育園芸部で動物の世話をした。高校を選ぶ理由は山岳部顧問がダウラギリ初登頂の野村哲也であり、大阪の最高峰金剛山が近くて入り浸り。就職しても本社に馴染まず群れもせず、アホな上司と話すのは無駄。社内に居るのは窮屈極まりなく現場主義で地方出張が大好き。職人と駄弁る方が面白く仕事の為になる。出向や小さくてもお山の大将が良いとの考えはこの時分から?海外一人暮らしも苦にならないが普通のおっさんです。
娘は幼稚園の教諭。兎を飼育して生と死の尊厳を園児が経験することを論文に纏め府代表として全国表彰を受けたが、3歳児でも考える情操教育は必要です。
日本の教育も完璧ではないが、一つのことに辛抱強く集中して取り組む姿勢。目先の成果を追わない、求めない。基礎研究という忍耐と継続が必要な資質は子供の時から備わっている。教育の質が受賞数の差と中国ネットは考えるが、
今時の現実を知らず過大評価かも。

・ベトナムの教育事情概略 急速に上級教育校への進学率は上昇

さて、ベトナム。急速に発展する中所得の国という位置付けで、このところは高等教育校への進学率が顕著に上がっています。また政府も学校のデジタル化やITツール導入に力を入れており、特に理数系教育に熱心で数学オリンピックでも常時上位にランクインするほどの実力を発揮しています。
英語教育も早く公立小学校3年から。日本語も一部地域で導入され東南アジア初等教育学力指標ではベトナムは6ヵ国中トップ、全ての分野で一位の成績。
さらに義務教育は2019年の法改正で10年間となりました。これは小学校へ上がる前の5歳児教育を義務化と一年間前倒した為だが、ここまでやるか。
ベトナムの義務教育は1998年までは小学校(5年間)だけでしたが、基礎中学(4年間)を加えました。しかし当時は全員が就学できたわけではなく、家が貧しくて行けなかった子供は多い。識字率が高いと評されても実際は地方から都会に来た中には字が読み書きでない人が意外に居るのはこのため。
電気も水道も無い僻地や貧困地域では、夜に教師が蠟燭を灯しボランティアで教えていました。余りのローカル事情なのでこういう実態は分からなかったが、ベンチェ新聞という地方紙の記者から聞かされ、苦境を何とかできないかと問われたことがあります。

こうした事情もあってか2018年の学歴調査では学歴無し16,9%、小卒20,2%、中卒28,3%、高卒16%、大卒・職業訓練校等18,3%となっている。
しかし最終学歴調査(JETRO:2010年)に拠ると、小卒22,7%、中卒27,1%、高卒14%、職業訓練学校11%、短・大・院卒5%であり、就学なし6%、修了学位なし?6%でした。
中学校への進学率が全国平均65%程度とは統計上の数字だが、その中身には色々と複雑な背景が存在します。
たった8年間でこれほどまで大卒等が上昇するのはいささか考えにくい。
また2018年の資料で高卒者は都市部が91,6%、地方88,1%。特に低いメコン地域では55%程度とあるが、先の資料からみて単純に数字が合わず多いのだが正確なのか分らない。
以前にボランティアで民間学校を手伝ったが、高校まで行った子供は実に少ないのが実態。50歳前後の方に拠るとHCM市でさえ当時は行ける人が少なく30%は居なかったと聞いたが、そこまで増えるものだろうか。
さらに2019年時点で大卒者28,3%だと言われるが、45~50歳の人の内、大学進学率は精々3%ほど。日本の資料でも推定2~3%との記載を読んだ事がある。4年制大卒以上ではなく恐らく短大や専門訓練校などを含む高卒以上という認識の方が正しいと考えられるが、それでも数字の整合性はない。

そうとしても就学率が上がっているのは事実。それと共に上級有名校への進学競争が激しくなり宿題の量は多い。このため学校で補習授業(有料)が行われ100万VND(約5千円)とも聞く。また家庭教師に日本から進出した進学塾があり市場規模は数千億円になるとの見方があります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生