ベトナムの教育③

2021年5月11日(火)

・ベトナムの学校

ベトナムは教育熱心でどんな所にも小中学校があり、メコンの片田舎では外国人訪問は珍しくて笑顔で大歓迎。だが狭い校庭に簡素な校舎に暗い教室、設備や教材等は不足している。子供は休み時間に思い切り遊び、鐘がなると教室に戻り大声で教科書を読む。家に帰れば農作業や家畜の世話などの家業をこなさなければなりません。貧しいけれど素直で純朴、都会の学校とは大きく異なる。
HCM市でもかつて学校が足りなくて2部制。友人の子は7時~11時時頃迄が弟、昼~5時迄兄が通っていたが、今は改善されました。

教師は塾などでアルバイトをしています。「先生の日」があって生徒が感謝の気持を込めて贈り物をする日だが、昔は給料が安くて生活が大変。というので元来は支援が目的だが、まさに「花より団子」と友人の話。
教科は国語(VN語)と算数がかなり重視されているが、文字を綺麗に書く事も大切で、声調記号の間違いは徹底して直されます。

・高校での経験 「父兄会」とは日本のPTA

先の子の高校は人口急増地域の新設校。校舎は綺麗で校庭も広く地面(市中心はコンクリート)だが何故か西向きだし満足な施設や設備はありません。年中暑いのにプール、体育館、食堂も無く売店だけ。だから体育は上手くならない。
一応順位はあって学力に合わせて相応のレベルの高校へ進学を検討する。私立校は特別なので一発勝負。半年後は53人居た同級生は授業に付いて行けない、授業料を払えないで、3人退学。だが教師は去る者追わず、気にもしません。
時間割を見ると国語、数学、英語を重視。数学は全く理解できずハイレベル、見るのも嫌になります。その他に物理、化学、地理、意味がなさそうな道徳。
担任はアオザイの中年女性。生徒はピリピリとしてまだ純粋、先生の凛とした指示を素直に聞く。日本の教師に見せてやりたい。
この高校では女生徒の制服は白いアオザイではなく、チェック柄のスカートにブラウスとネクタイ姿でヤングのお気に入り。アオザイ姿の通学風景は誠に美しいが、「これぞベトナム!」という胸キュン感動のフォトジェニックは今後無念にも見られなくなるかも。
最近の教科書は紙質がコート紙になり文字も写真も綺麗だが随分前はザラ板紙、見辛くて酷いものでした。教科書は全部揃えて50万ドン程(2千円強)だが安くない。交通不便なためにバイク通学はお咎めなし。校内にズラッと並んでいたがしっかり駐輪代を徴収します。
ある時父兄会があって参加。まずは校庭で校長が長話、ほとんど解りません。だが時間通りには始まらないのが流石ベトナム。陽が高くなるに連れ暑さが増すので、太陽の動きに伴って椅子を持って移動するのだがたいして変わらない。
教室で担任から話があり1時間半ほどで修了。殆どの親か祖父母が来ていたが、個別面談は無くほっと安心したとある日曜日でした。

・学習上の問題 個人的観察

知識偏重型、実験など無いので頭で理解する詰め込み式。要するに体験しない。教科書を見て結果を覚えるだけ、過程を五感で感じないから組み立てが分らず想像だけで机上の理屈。正しいかどうか確実に検証をせず曖昧模糊。好奇心を持つとか考えるスベが無く、額面通り受け入れるだけでは疑問も湧く筈がない。
知識は付いても身体が覚えないから知恵は回らない。何事にも基礎がなく応用が利かない。知ったかぶりで屁理屈を捏ねる割に論理や創造に乏しい頭でっかちの性分は、早いうちからこういう指導方法に原因があると考えられます。
また暗記させるのが方針なのか相当なボリューム。国語、英語の暗誦に時折付き合わされたが宿題は多く試験も頻繁。殆どの家庭で親は子供に背中を見せることが出来ずマナーや情操教育など期待薄。家庭教育は重要だが親の教育が先だと思えます。

課外活動は盛んでは有りません。点数評価は絶対で席次も分るので夜遅くまで机に向うので近視が増えた。部活や遊びが無く文武両道と行かないが、買い食いはOK。甘いチェー(餡蜜のようなもの)やシントー(ミルクセーキ)を買って飲んでいる。熱い国ならではこと、エネルギーと水分補給です。
おまけにこのところの進学熱。希望者に補習(夕方・日曜祝日)を行なう学校が多く、生徒は休みどころではありません。
たまに友達と遊びに行くのが大事だと諭すが親は歓迎しない。子が高校生になっても親が成熟していないので、子供の自主性や権利を認めるまで意識は進んでいないと感じるが、それ以前に愛情のかけ方が分らない様に見受けます。
家庭教師を付けるのは珍しくないが効果テキ面策は担任に頼む事。友人はそうしたが、事前に試験問題が分り答案が作成できるというその場限りのつまらない期待感が残るだけ。
人気がある伝統校へは越境入学をする。当局はこれを止めさせようとしますが、教師も絡み親は何とかして子供を行かせる為あの手この手の腐心。自分の子供さえよければ良いという考えだが、恥も外聞も厭わないヒートアップする教育。子の素質を考えず親が経験した苦くて苦しい思いをさせたくないという親心。大学を出ないと良い職業に就けないが、語学は英語+1を習得する時代です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生