ワーカー採用が困難な実態と グローバル化とは

2024年7月31日(水)

新人でも初任給は700~800万VNDもらえる。経済高成長とインフレで一概に比較できないがそれでも企業の負担は大きい。だが此処まで上げなければ若者がどこを優先するかと言えばサービス産業への求職。何しろかっこいい。
生産現場のあまり良いとは言えない作業環境の中、というイメージが付き纏い、それよりも楽しい職場の方が良いのは今時の思考。また学歴と語学力が備わると外資系企業に勤務してビルで働くことがステータスだと考えます。
こういう時代の流れの中、しかしベトナムは未だに加工組立が主流で、しかもこれらの製品は海外へ輸出される。造る製品は違ってきてもこの構図は基本的に変わりませんから、どうしても若い力が必要なのです。
HCM市の雇用サービスセンターでも、5月だけで求職者は8,500人なのに、求人数は49,000件、だが一方で失業手当の登録者は6万人近くなっているというアンバランスが続いている。採用は高まっているけれど、人を見つけるのはますます難しくなっている。事実企業と人をマッチングするジョブフェアを21回開催したけれど常に求人が上回っている現象。大手企業は40~45歳までに採用枠を広げて実務経験者を数千人規模で採用を掛けるが集まらない。未経験者では務まらないので30歳代の実務経験者を採りたいがもはや無理。
これはHCM市に限った事ではなく、隣接のドンナイ省、ビンユン省でも全く事情は一緒。特に縫製、靴履物、木材加工などの地場企業が得意とする部門が深刻なピンチ。ビンユン省では3210社の41,000人の求人があったが、何れの企業も必要数を満たせない状況にある。ドンナイ省は5月だけで1万人以上の募集があったが、採用枠には達せず期間延長をしているが見込み薄。
こうした原因。COVID-19で帰郷した人達がもう都会にいる必要はないと戻ってこないのです。故郷の方が安全だし、地元にも工業団地が出来て外資系企業も操業している。何も苦労して都会で辛い生活をする理由などなく食っていける。
筆者はかつてこれから地方が面白いと書いたが、図らずもCOVID‐19が促したとは思いも寄らなかった。産業構造の変換と併せてもっと早く手を打つことは可能だったが、其処まで考えが及ばず何をするにも遅々し手遅れの政府が悪い。
労働者にしても何を今さらと思うのは無理からぬ事。企業は勝手、安易に大量解雇しておきながらこんどは掌返し。三顧の礼を尽くすもフザケルナです。
田舎に戻れば豊かな実りを得られる生活は気楽。都会にしかなかったスーパーも進出、通販ではリアルタイムに物が買えるし、SNSで事情は何でも分かる。なにも都会に戻って嫌な思いをして暮らすことなど必要ない訳です。
ベトナム地場企業もこうした切掛けで、社員を大切にして福利厚生を重視し、美味しい給食が食べられる様に変わって来た。従業員の選択肢も増えました。

・グローバル化とは 知識よりも経験から生まれる知恵を活かせ

日本企業はグローバル化という命題をあげているが、責任ある役員や管理職が海外の現場を分かっているかと言えば、現法や自社工場であってもそうで無い。
念願の進出を果たしたとしても、彼の国の地理、多様な文化伝統、気候風土、ビジネス習慣とか風習に生活などを分ろうとしない人が多く、共有されていない事は結構ある。相手の国を知らずんば如何ともしがたく重責など果たせない。
こうなると常に問題になっているのが、本社と現場の認識の違い。現地の状況を知らないにも関わらず須らく本社の指示通りに、ということになって、間に挟まれた現法社長や駐在員は為す術がなく苦労することとなる。無理解の果て社員が辞職した例も見てきたけれど、勝手な解釈と勘違いをしてはいけません。
本社の役員が進出を決定。いい所とりをするけれど、後はよろしくと着任した社員が苦労するケースも見聞するが、これは海外経験が余り無い企業に多い。
要するに役員が海外を全く分かっていないだけの話で責任回避にすぎません。
現地の実態や事情に合わせ思う存分やってくれ、なんて親分が度量のある話を聞いた試しはない。それだけ決済権限の移譲を恐れるのか、現地を信頼、信用していないのかと考えるけれど責任だけを求めるのは間違い。また雑用をさせるのはマイナス、然るべく役目に専念する時間と経費を惜しまないのが重要。
また外地に赴任しても休暇があれば帰国。国内を隈なく回って相手の国を深く知ろうという気が無ければいけないし、現地の料理が食べられないとか家庭の状況がどんなのかも分からないとか、興味もないのであれば早く交代した方が会社や現地の従業員のためになるが、こんな事例も身近に結構ありました。
欧米の駐在員など、例えばテトなど長期間の休日に近隣諸国を訪れていたが、これまで経験した文化とアジア圏の違いが面白いからということや、帰国するには遠くて費用も掛かるという事情もあるけれど、出会ったベトナム在住者はこんな風に話していた。これは先に大きな差別化要因として戻ってきます。
近頃の若い人は海外で働きたくないという考えだとか。しかしそれ以上に先ず役員などが海外経験をしていないのであれば言語道断、社内に外国人スタッフが一名も居ないのであれば話にならない。ある有名老舗企業、国際課は以前からあったけれど全く機能していなかった。そこへこの会社にベトナム人が入社。だが上司は外国人と実務経験がなく指導できない。幸い同期入社は仲が良かったけれど本人は徐々に意気消沈。長く続かなかったという実態があります。
さらにベトナムに駐在員事務所を設立したからこれで海外進出を果たしたとか、実習生が勤務しているから我が社もグローバル、なんておこがましいにも程があり全く無意味、何の役にも立たない。こうした状況は実に多い。
海外勤務は楽でない事が多い。だから如何に面白く生活しようとか、楽しめる環境作りは良い製品作り、R&Dや技術向上には必要不可欠な要素となります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生