実習生の質の低下が顕著 日本語を覚える気など全くない

2024年12月11日(水)

YAHOOニュース。ベトナムとワードを入れるとベトナムに関するニュースが盛沢山。このところ気になるのが実習生や元実習生(不法滞在者)の犯罪。これが連日ネットを賑わし増加傾向にある。強盗傷害殺人などの事件・事故はもとより詐欺、偽造に監禁、闇バイト、薬物、密漁、医師法に薬事法違反等々、あらゆる犯罪のオンパレード。一方で消防団へ参加とか人命救護など社会貢献もあるけれど、こういう行為は陰に隠れてしまっている。

さる11月中旬の産経新聞のネット記事。これに掲載してあったのがタイトルにある通りの記事。そこには外国人材制度は歪んだビジネスから脱皮できるか、との副タイトルがあり、受け入れ先日本企業に取材を行ない、此の所の実習生に関する状況を記事にしていました。
これに拠ると、熱心に働く実習生がいる反面、やる気のうかがえない実習生も多いと書いてある。30年以上続く外国人受け入れ制度、これには劣悪な環境でも転籍が認められず失踪が相次いだ。そこで政府は対策として転籍を認める要件の明確化を図ったが、制度を取り巻く問題はこれだけではなく令和9年に育成就労が始まるのだが、受け入れ企業から本当に改善されるのか疑問視するとある。また悪意のある企業と行政や入管の未確認も結構問題になっています。

・行きつくところ語学力に問題がある

長年実習生を受け入れて来た企業の経営者は、当初は面接で一生懸命さが伝わってきて10人の内8人を採用したが、徐々に質が下がって来たという。
要するに言葉を学ぶ意思は無く、やる気があるのか分らない。業務を指示しても伝わらないし休憩時間が終っても休み続ける。簡単な言葉も分からないのでは業務が出来ないとの感想を漏らしたとあるがこれは大きな問題です。
この原因、日本語試験が必須ではない。新制度では来日前に日本語能力N5を取得するなど一定の条件が求められるが、この企業では社員を日本人に戻すかもしれないと打ちあけている。実際に言葉が原因で事故が発生しているのです。
実習生の方でも言葉の問題で仕事が出来ないので、責任者からバカとか邪魔とののしられ耐え切れずに逃げたとするケースがある。この様な失踪者(逃亡)は昨年に9753人と過去最高を記録しているのが実態です。
何故バカとかジャマという言葉なら分かる?と疑問に思うけれど、これは日本だけでなく韓国でも同じ様な事情をかかえている。韓国は日本と違って政府が直接採用し期間は10年。事情は全く異なるけれど逃亡者が急速に多くなっていると聞くがベトナムには帰国したくないのが理由です。
文化の違いをそう簡単に乗り越えられる訳では無いが、若くて精神的に未熟、国内でさえ旅行で都会に出たことが無い。飛行機は来日時に初めて乗ったなど、多くの初体験が恐怖心となり、そこに言葉が出来なければどうしていいか分らなくなることもあり得るが、これを紛らわすのが同国人のSNS。
しかし日本側は当然最小限の言葉を修得し、ある程度の仕事の内容も理解していると思っている訳で、稚拙な仕事振りに猜疑心が生れ、此処に両方の齟齬が浮かび上がる。これがやがて信頼関係が崩れる切掛けとなるのも現場の実態。
言葉が出来ないことには筆者は驚きがあります。何故なら私が親しくしている現地の送り出し機関。ここは社長や役員とは長年の親交があり、来日の度には家族ともども会って食事をする仲。在住時や帰国後でも訪越時には訪日間近で派遣先が決まった実習生に特別に講義するが、彼らは私の日本語で話す内容が完全理解できている。要するに経営陣は随分前から来日、セミナーを依頼されてきた人で日本語は全く問題ない。だからこそ言葉の習得を重視している訳で送り出し機関に拠って相当の格差があるというのが実態。要は送り出す側の国・行政がしっかり機関を管理していないのが根本原因であると考えます。
これを日本の受け入れ企業が悪いと一方的に決めつける団体や教授が要るからややこしくなるのだが、彼らは現地の本当の実態を解かっているのか疑問です。

筆者が在住時に日本語を教え、日本の公立大学に留学した国家大学HCM校の人が居る。もちろん在学時にN1を取得。留学時にアルバイトを掛け持ちしていたが何と隣県の企業に依頼され、通訳を兼ねて週に一回、県外の企業を訪問していた。これほどまで言葉が出来ないのが実態だが、当然ではないのです。
さらにある受け入れ機関。ときおり問題が生じているが、就業中に怪我などの事故がある。しかしこの理由も言葉が理解できずにうろ覚えとか、勝手に解釈してしまう事に拠るケースが多いという。ベトナム人は現地の業務でさえ自己勝手に解釈することが実に多い。怒るべくして起きている。これは上司の許可を得ないで判断するなどこれは国民性とも言えなくない。こんな状況に遭遇すること頻繁にあって現地赴任者はビジネス文化の違いに面食らいます。
外国に出れば相手国の文化やビジネス慣習通り、あるいは企業の要求する業務の指示通りに作業を行なうなど無視するといういささか幼児性が残っている人は多い。一歩間違えばとんでもない事故に繋がるという意識が無いわけです。

・劣化する要因はいくつか考えられる

現地の実習生については、以前と異なってかなりの農村部に行かないともはや求められないのが実態。さらに地方省・県単位の人民委員会の協力でなんとか人のやり繰りが出来ているなどの状況でもあるのだが、実に厄介な仕事です。
かつては家族のためにと食いしばって頑張った。実際に筆者の友人の弟が大阪に実習生としてやってきて何度も会ったけれど、この時に居た若い人達と話をしても基本的に語学力は問題無く、入国後でさえ語学学習は欠かさなかった。
今でも基本的な人の考えは変わっていないけれど、地方であってもある程度は経済成長の流れに乗っており、どうやら若い人がもはや戦争を知らない世代に変わり、ハングリーを失ったという印象を強く持っている。意欲の情熱も弱くなったとみるが、これは自己逃避で豊かな時代に育った甘えでしかありません。

・管理団体にもそれなりの問題がある

新聞記事には監理団体の問題も書いている。この企業が属する組合には一定の金額を毎月払っているが監査などは行なっていない。こういういい加減な組合の存在があるわけで人を派遣すればいいだけ。これでは実習生を指導する組合が機能せず、問題が無くなる筈など絶対にありません。
出入港在留管理庁は11月1日、実習制度の運用要領を見直し、転籍の要件に暴行やパワハラ被害などを明記したと公表しています。
制度を監督する外国人技能実習機構による令和5年の実地検査では、4537団体のうち2352団体に、即ち半分以上もが監理・指導が不適切という違反が見つかったとある。新制度では管理支援機構と名称変更されるが、中立性を高め、外部監査人の設置を義務付けるとするが機能することは望めません。

・借金してまでの来日に意味があるのか 搾取されるのが分らないのか

これまでに実習生の来日に関して問題としてあげられたのが、現地機関の多くが手数料などと称して実習生から得る手数料だという。他国であっても無いのではなく、だが日本が多いらしいのが問題なのだとしています。ベトナムだけでなくカンボジアなども含めてアジア各国から来日する実習生は約40万人。
実に10年前に比べて2,5倍に増えているのにしわ寄せは増える一方です。
手数料に関しては送り出し側が派遣ビジネスとして捉えているからだとあるが、国がしなければ民間。となれば無償という訳にはいかないが、ではどこまでは正当なのかだが法的に基準があるものではない。ここに付け入るスキがある。
調査では一人当たり20~30万円が最多で30,1%、次いで30~40万円が26,9%とある、しかし管理庁の調査では平均54万円と高くなっており、来日に際して借金したのが54,7%。ベトナムやカンボジアは8割以上が借金しているという。実際は百万円とか無知につけ込んだ悪質な事例もあるようで、これが若者を縛り付けているのも事実。しかも簡単に取り戻せるなんていう悪質業者も居るのは間違いない。恐らく相手国の行政と送り出し機関の癒着構造が無いとは言い切れない。そうした闇を失くさないと悲劇は無くなりません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生