日本向け労働者の確保に苦戦

2025年1月20日(月)

年末も押し迫った頃、上記のニュースが現地から入ってきました。

先ずは11月に掲載した実習生に関する記事の一部を抜粋。
ベトナム労働傷病兵社会省労働局とは海外にベトナム人労働者を派遣する所管であり、同局の発表に拠ると今年10カ月間で海外に送り出した労働者総数が130,640人になったと現地ニュースが最新の海外派遣数を報じています。
これは年間の目標125,000人を早くも4%上回ったとしており、このうち日本が62,722人を受け入れ相変わらずトップを継続している。円安だから日本への派遣者数は減少しているとの報道もあったけれど、実はそうではなかったのです。続いて台湾48,533人、韓国が10,877人となり、中国、シンガポール、ルーマニアとなっており、このところ東欧諸国が伸びて来た。
要するに海外で研修し、自国でその修得した技術を活かすなんて思考は頭の隅にも無く単なる人集めのスローガンに過ぎません。コストのかからない単なる外貨稼ぎの手段でしかないわけで、送り出し国にしろ、受け入れ国にしても、彼らの大半は単なる単純労働者の役割でしかないのは周知の事実。

これを単純に読めば、派遣目標を早くも達成。しかも派遣国のトップは日本。
如何にも海外へ労働者の派遣が順調であり、今後もこの傾向にあり、ベトナム側も相変わらず派遣目標の設定を継続する、と思って間違いありません。
これまでにも実習生に関する様々な記事や現地事情をお伝えしてきたけれど、報じられているような素直な性格、今後も日本へエッセンシャル・ワーカーとして良い人材が派遣されてくると考えるのは早計で甘い考えです。
現地発が報じる所でも「実習生の劣化」が進んでおり、この理由に関しても書いている。またネットで溢れているのは、日本に失望して早く帰国したいとか、借金がなかなか返せないし貰える給料も少ない。なども見受けられるのです。
原因は色々あるし、派遣国、受け入れ国双方の行政と期間が真剣に捉えなければならない筈だし、筆者も実習生に関連する問題点を指摘してきました。だが余りにも問題をホッタラカシのまま、元凶を改善しようという気がありません。一番気の毒なのは派遣された若い人達。全てではないけれど、まさに人身御供。解決策のひとつとして2019年から始まった特定技能制度も、実際に思う程の効果が表れず、端から悪意で利用する人もいる。
こうして実際には徐々に実習生の日本離れが起きているという状況にあるが、正面切って報じられる事は無く、写真で笑顔溢れるベトナム人の顔が掲載され、如何にも憧れの日本で活躍しているというデマゴギーに溢れています。
内閣府に所管される機関である(公財)JITC0・国際人材協力機構など、複数の省が設立した実質的な監督官庁と言えます。しかし結局は日本人がやりたくない所謂3Kと揶揄される仕事を外国人にしてもらうために造った窓口であるが、如何にもきれいごとを書き並べているものの、その実態など単なる役所の仕事の為のお飾り仕事。
後は組合がよろしくね、と無責任。権限など無く、何の役にも立っていない。多様化とか共生など美辞麗句を並べても、一向に進化していない社会が日本の現実です。

記事には、日本での実習生の需要は高まっているが、ベトナムの送り出し機関では「労働者」の確保に苦戦しているとある。すなわち誰も実習生と思っておらず働き手。
すでにこの言葉から、理念なんて無く、単なる外貨稼ぎ要員でしかないのです。
日本からの要求に応えるため、業者は「仲介業者」に2000万~3000万VNDを払っているという。しかし此処まで努力しても派遣目標に届かないと現地の送り出し機関は困っているが、日本向け実習生派遣を主にしている業者に共通するとあります。
此処で気になるのが「仲介業者」の存在。最近ではこうした業者が人材を囲いこんでいるので、雇用サービスセンターでの人材確保が難しくなっているという。このために送り出し機関は多額の手数料を払っている様だが、仲介業者はこの手数料額が高い機関を選び放題になっており、これが原因で結果として実習生に金銭的な負担のしわ寄せがかかっているとあります。
知人の送り出し機関は上場大手商社の一部門であったが、政府の方針で分離独立したけれど、ますます人材確保が難しくなっている中、独自ルートで地方の人民委員会の協力を得て直接受け入れたのだが、ますます遠隔地へ行ったのか定かでない。
何れにしろ、ただでさえ実習生が支払う費用は法律の定めと言え安くありません。
こういう商売が成立し、しかも行政が何の手立てを講じずに野放し状態であるなら、またライセンスを受けないで非合法的に仕事をしているのなら問題は深刻。筆者が思うに、必ず背後に役人がいてご多分に漏れず目こぼしをしている筈に相違ない。
恐らく儲かると踏んで送り出し機関から独立した人物だと考えられるが、この状況は管轄している労働・傷病兵・社会省も把握しているが、さらに悪質化して実習生を金の成る木として転売している実態さえあるという。もはや人間でなくモノの扱い。
経済成長していても国民が等しく豊かさを享受しているのでなく、むしろ様々な格差が拡大している。また海外へ留学するとか、出稼ぎに出る若い人も増加しているとあるが、こうした人を手玉に取り、日本へ行けば稼げるとか嘘をつき国債事情に疎い若者を囲い込んでいるともあります。
高校を出ても、都会へ行っても、地場企業では良い給料が望めない。また若ければ海外へ行ってみたいという憧れも強いのだが、こういう心理を上手にくみ取っていると考えられます。だが教育水準とか、語学、業務に必要な知識など望めないので、これまで相当数を送り込んだ機関でなく、足許を見て新しい所へ送って利益を得るわけ。
こうなると、明らかになって来た問題として、言葉が理解できないとか、慣習やマナーに疎い人が増え、「話が違う」なんてことになる。そこで互いに認識の違いから齟齬が生れ、結果として仕事が嫌になり逃亡や事件、事故を起こす原因になる訳で、これは双方にマイナスでしかありません。

問題を確認しているのであれば現地政府は至急に違法業者を摘発するべきであり、さらに根深い問題・課題の解決に走らなければならないのに、これが出来ない。
ベトナムからの人材供給が減少する傾向を感じて受け入れ機関では、これ以外の国からの受け入れを強化し始めており、TVでも話題になっているのがミャンマー。またインドネシアや、フィリッピンなどに声をかけているとか。

ベトナム側でも、此の所の円安傾向にあって、故郷に送金する金額がどんどん目減りしている状況にあります。さらに日本国内でも物価の高騰が続いているので、生活費のやり繰りが大変であるとの認識が高まっている。相対的に日本への実習生送り出しに陰りがあっても仕方がないのです。そこへきて費用の増加はダブルパンチ。
こういう状況下、以前コラムにしたが、過去には日本で3年間働けば家を新築できた。これは知人の弟で実際にあった話だが、今は何が買える?さらにベトナムの賃金も上がっており、物価も急上昇。日本との差は縮まる一方で、目減りを続けている一方なのです。では借金してまで来日するだけのメリットが何かあるのか?この所やっと5%UPだとか言いだしたが、時遅し状況。
実習生は金を稼ぎに来るだけで、双方の国が先進国で得た技術を母国で活かして、なんて嘘八百。実入りが少なければ何も日本を選ぶ必要などありません。
こうした現実を、政府や行政が真に現場の実情が分かっているのか疑問です。

この様な事情から、昨年にコラムにしたのは、日本を始め、台湾、韓国というアジア圏中心であったのだが、東欧が中心だが何れは他のヨーロッパ諸国へのシフト傾向が出てくる可能性も無くはない。手数料も日本ほど高くは無いし、このほかにも中東なども少ないけれど派遣されているのです。
もちろん彼らにしても、文化、宗教などが全く違うので、では直ぐにという訳にはいかないけれど、選択肢に入るのはやむを得ません。

多くの問題が指摘されながら解決する方向に全く無い。ならば実習生とか特定技能という小手先より、実質的な労働者として受け入れるとか、「移民」にという論議も湧かないままに中途半端に時間を浪費するだけ。
国や国会が事態を重く見て行動を起こさぬ限り、何の変化もないままに気が付けば実習生が来なくなった。と成り兼ねない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生