実習生が大量に失踪する本当の理由

2026年2月24日(火)

筆者はこの前だが、11月のコラムにベトナム人の日本国内での犯罪が増加している状況に付いて、長い間、現地と日本から観て来たけれどこの主な原因は人材の劣化であると書きました。
確かに問題がある企業もあるし、制度自体にも欠陥があると考えるが、彼らを擁護する立場の人達からすれば、これは認められない主張に違いありません。多くの場合擁護派は実際に現地の実情を分かっている訳では無いので、コラムを書く者からすれば一定期間、現地に住んでこの問題に関して、ベトナム国内の事情をつぶさに観てから正確にコメントして欲しいと考えます。
日本の受け入れ側、ベトナムの送り出し機関、ベトナム政府機関や専門教育をする現場を知っているのか。担当者と直に話をしたことがありますか?
ある方は実習生の家に行き実情を調べたと書いているが、元々の前提条件が送り出す方に問題がある、という色眼鏡で見ているならそもそも事実は曲げられており、それ以外は目や耳に入らないだけの話。
従がって、一面だけ捉えて一方的に彼らが可哀そうなんて日本人特有の感情論で済ませるのは摺り替えであって、本質を見ないで議論するのは間違っている。
むしろ、ベトナムが未だ以って新興国というレッテルを貼っている自分の姿に気が付かないだけで言語道断、似非慈善に過ぎないし、学者先生も正義の味方という間違った自負に問題がある。

12月7日に掲載された日本での記事。日本語どころか母国語の読み書きがおぼつかない・・専門家が指摘する「技能実習生が大量に失踪する本当の理由」というタイトル。これは神戸学院大学の斉藤先生がインタビューで答えた記事だが掲載されていました。
日本では毎年約5000人~1万人の外国人技能実習生が失踪しているけれど何故彼らは失踪してしまうのか。に踏み込んでいるのです。
いわゆる移民政策をとってはいないというのが政府の公式見解。だが実態として外国人が様々な労働力になっているし、その多くは日本人がやらない、したくない仕事。即ち建設業、機械金属などだが、91種類168種の作業に実習生が主に労働者として働き、その人数は約45万と貴重な存在であるのは確かな事実です。
ところがこの内、タイトルにある様に最大1万人が失踪し、何処に居るのか分らない。恐らく転々として日本国内で表に出ない仕事をしている可能性がある。
中には不法行為だと知っていても人手が居ないからと雇っている企業もあって始末が悪く、これが彼らを増長させている訳なので、罪は重い。
さらに2024年度の失踪者の6510人のうち、2025年5月時点で所在不明者は2951人と45%もいるのです。もし捕まれば強制退去になるが、何処に行ったのか分らないと入管でも掴み切れておらず、もしかすれば組織があって彼らを闇のルートで受け入れているかもしれません。ということは合法では無いので何らかの犯罪に巻きこまれる可能性もあるし、ベトナム人の犯罪組織も活発に活動しているのでこれが隠れ蓑になり、彼らの資金調達の一役を買っている訳で、そうなると悪の組織が日本国内で拡大している他なりません。

・失踪する三つの原因

斉藤先生はこうしたトラブルに巻き込まれたベトナム人実習生の世話を団体が立ち上げて、自らも数万人の相談に乗ってきたと云う。
失踪者が一番多い国はもちろんベトナム。彼はベトナムで一年間日本語教師として在住し、現地の送り出し機関の実情も調査したから、かなり日越の状況は熟知している。そこで失踪する理由を ①実習生と受け入れ側の日本企業とのミスマッチ ②日本の労働市場の魅力低下 ③不法就労者を受け入れるコミュニティーの存在 を挙げている。

・問題は日本で沢山稼げると聞いていたけれど実は違った。

これは相手国側の機関の条件盛り込みが原因。日本に行く前の実習生と受け入れる側の基本企業の両方に良い話をしているだけ。だからミスマッチが起きる。こんな筈ではなかったという思いが双方にある。
要するに実習生に日本での夢の話をしてドキドキさせ、給料も高くて何て魅力のあると錯覚させたまま。しかし、日本側では、真面目と聞いていたが、刺青は入っているし怠け癖が付いていて、おまけに日本語は話せない。
こういう低学歴者で地元でも通用しない人物を派遣する。となれば不満が溜り逃げ出すのです。
おまけに日本の管理団体もいい加減で、双方がグルならどうしようもない。
筆者はもはや現地で人が集まらず、とんでもない地方で地元の人民委員会に接待してまで無理に確保するからとした。
 

・日本語の読み書きができない人材が居ると指摘。

私が現地に居る時日本語教えた大学院生。アルバイトで隣県の会社へ通訳に行っていた。どんどん日本語能力の低い若者が入ってきているのは事実。筆者の知人の送り出し機関ではこれは全くなく、日本人も数名在籍しており、時おり特別講義をしたが、職員も日本語は話せるし、会長、副会長は年に数回来日して派遣先を回っていた。筆者とは食事もするので間違いありません。
こういうケアは大切だが、多くの(有名大手)送り出し機関はしていません。
日本の給料は円安もあって地位が低下。また語学教育は相手任せだが、現地で言葉の試験をする国もある。筆者の友人がノルウェイに行ったが、現地語を教える機関に無料で入れると話していた。
実習生の派遣は未だ以って日本が一番多いけれど、最近はヨーロッパなどにも移っているのが実情。能力が高ければ他国を選択する人が増えたが、母国語も出来ない人が日本にくることもあるという。実際にボランティアを現地の施設で行なったが、メコンから両親ときた少女。小学校にも行っていないので話すことは出来るが、文章は殆ど書けないし、特に声調記号の間違いを頻繁に指摘されていた。底辺の教育実態とは実はこの様な状況にあります。この様な現地現場の実態を知っていて、問題を来日する時に相手側に多額の金銭を渡すのが原因で、日本側で必至になって働けど金は貯まらない。罵声を浴びているから可哀そう、というけれど、物事の道理、理解が出来ない訳があるのです。
だから工場での作業ミスを日本の企業教育のやり方が悪いと追うのはオカシイ。
むしろ何度も教えても理解できない、手順を間違えるし注意散漫、この結果、入院という事態も起きているのを知っているのか?語学力が最低限でも不足、基礎レベルに達していない人材を送り出すこと自体が危険行為です。また多少の職業訓練をしている学校もあるけれど、もはや先進国の時流に合っていない。

・失踪者は何処に消えたのか。

斉藤先生は、先輩的な存在のあるコミュニティーに転がり込んでいる可能性を指摘。日本で外国人が家を借りるのさえ難しい。結局こういった存在があって、転がり込むが、関東が多く群馬、茨城、栃木、また関西では姫路に元々ボートピープルの地域がある。仕事は農業に解体業が多く、偽造した在留カードを出して登録している事もある。摘発はバレモトで長く居て金を稼げるだけ稼ごうと悪びれもない。
さらにこういう失踪者と知って、在留カードも薄々偽と分かって採用する会社もあるのだから始末に負えないのです。摘発の多くはタレコミと職質。

斉藤先生がこのページで特に強調したのが最近のベトナム人実習生のレベルが低下していることで、これは筆者が書いたコラムと趣旨は全く同じで良く観ている。これは本当の現場を知っているからこそであり、バランスの取れた考えをしているから。実態を知らないで人権だとか騒ぐのは無視すべきです。
また現地のブローカーに就職する実習生がいて、リクルーターをしていることに注目。彼ら元実習生はスキルが身に付いていない。日本語も余りできないが、帰国後に就職するに際して要求する額は高いから何処にも仕事はありません。
また金銭感覚が狂っていて元に戻らず、職にあぶれ結局リクルート役になる。
夜の飲み屋街で元実習生が女性を雇い入れ、日本人専門のバーをしていてぼろ儲け。こんな商才のある奴もいたけれど、日本語を活かして大手企業に入社した堅実な人も知っています、
またブローカーになった彼らは、田舎に行き、あるいは故郷だが、其処で情報に疎い人材を見つけて送り出し機関へ渡す役目もしている。
直接地方にコネを求めて行く機関もあるが、この様な場合もあると費用が嵩み、その結果実習生となった人がその分を負担する仕掛けにもなる訳です。
この手数料に関して先生は、実の所良く判らないとし、仮に不当であっても、金は戻らないし大きく報復される事もあるが、これは日本人には理解できない。
そういう国民性。だから日本国内でも理解できない悪質な犯罪者が出てくる

・国家ぐるみで外国人を搾取 これに異論はないが 相手国にも問題あり

日本政府はとかく問題があり過ぎる実習制度を2027年度から育成就労制度と新たな枠ゴミとするけれど、実態は変わらず何の意味もありません。
表向きは日本語能力をN5にとか(殆ど無意味)、就労期間内での転籍を認めるなどの改善をしようとしているが、根本は同じで人が不足する業界へ外国人材を送り込むだけの話。こういう制度設計をする役人が現地・現場の実態を知らないので虚像は幾らでも描けるが、これは何処の省庁も同じ、さらに不愉快な天下り機関JITOCOの存在も利権の構造なので解体するべきです。
日本国内で論議と実習制度の改善は大切だが、筆者がこれまでに指摘している相手国政府の労働者輸出という、基本的な思考の方が問題だし、国内での行政と送り出し機関との間での明確な法的解決をしなければ日本は悪者になるだけ。ベトナム側が国内できちんとした制度設計を洗い直し、問題となっている実習生が送り出し機関に支払う高額手数料規制、悪徳業者への犯罪立証と語学能力対策、専門知識どころか基礎学力に至らない人物排除、現地で生活をするため最低限の講座にマナーを教えなければ送り出すのは本来国家の恥であるはず。
これを実施しないのはその国のレベルがそれだけのこと。だから子は親の背中を見ていて海外に行くと悪さをし、自国の地(国民性)が出て来るのです。
さらにかねがね筆者が疑問とし、自国をサプライチェーン国として成立をする積りがあるのなら、地場企業は若い社員を採用して研修と育成を行い製造能力と品質を上げ、海外先進国に並ぶことが出来るだけの製造能力とR&D能力を持つ方向性をしっかり付けなければならない。そういう責務を果たしていない。
この実習制度、現地では年間派遣労働者数の目標を定め、彼らが各国から送金してくる金額に満足する監督官庁がある位、笑いが止まらない。こんな状況で海外から進出する企業へどの様な人材を送ることができているのだろうか。

・現地が報じる日本での外国人実習生の事故

日本でベトナム人労働者が最も高い職業事故率を被る 記録的な増加が続く。
と、日本で働く外国人労働者6244人のうち、ベトナム人の職場での事故が最も多く1594件とあると報じていた。これは厚生労働省が発表したもので、4日以上休職した人の数だが、因みに死亡者数は過去最高39人になった。
安全訓練やコミュニケーションの不足が原因と考えられると省関係者は言うけれど、コミュニケーション力が不足し、語学能力と学習意欲の低さと、注意力の散漫が原因で、指示通りに作業ができていないため負傷事故が多いのです。
事故の多くは製造業で2979件、次いで建設業が1165件と大半を占める。
一般的な事故原因とは労働者が機械に巻き込まれるとか、引き込まれるもので1441件、次いで転倒事故が797件とするが、注意していれば避けられる。
日本の工場内での事故も、その多くは熟練した人よりも仕事に慣れない新人が多い筈、統計では仕事開始から事故に至るまで何年経過したのか分らないので何とも言えないが、筆者が大学を卒業後間なしに大企業の工場建設現場に配属になった経験からすれば余程のことが無ければ事故は起きない。それほど安全確認には何れの企業、どこの現場でも全社を挙げて取り組んでいるのです。
偶然というか、ふと気が緩んだ時に、機械に服の裾や袖が巻き込まれることもあろうが、ならばきっちりとした服装が基本である。ベトナムの町工場は薄暗くて暑苦しい、こうした環境でも事故が起きないのは何故か。基本的には日本の工場の方が明るくて空調もあるし、道具も整理整頓、片付けはされている。
現役時分、現場事務所はプレハブ。暑いし寒いけれどエアコンなどない、だが作業服はきちんと着用していた。朝一番の仕事は氷を買って来て麦茶造りで、喉が渇けば皆が飲みに来る。徹夜の時は汗で全てビシッョビショ。今は暑さが半端でなく、一定の数値になれば作業は中断、誠に羨ましい限りです。
労働者1000人当たりの事故率は一般的な職場であれば2,35だが、外国人スタッフの場合には2,71になるとしている。また実習生の場合、同じく3、98だが、熟練工は3,98となっていて、実は大きな格差はないのです。
これをどの様にみるのかだが、これに関して斉藤先生は外国人労働者より多くのリスクに直面していると指摘したと現地報にはあるが、そうではないはず。
彼らは限られた日本語能力で採用され、場合によっては労災を申請できないとしている。こうした事故を政府は全国平均を下回る水準に引き下げることを目指しているとあるが、日本の高齢化と人材不足が事故との相関関係があるとしているが、それよりも外国人実習生を3年の期間にしているので、語学・技術修得には無理があります。根本的に韓国や台湾の様に在留期間の制限を見直し、事前の学習に力を入れ、これに関する費用も合わせて実習生側の自己負担なしにする、だが採用は厳格するになどの対策を打つべきではなかろうか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生