ベトナム EC活発化と進化し始めた小売業①

2021年9月7日(火)

・急速に拡大する電子商取引

ベトナム経済はCOVID-19禍により多くの分野でマイナス成長が続き、苦境に立っている業種・企業がひしめく中、電子商取引は急速な発展を続けています。
他国でも同じ状況である事に違いありませんが、電子商取引は直接人と接触する機会が少ないため安全だと思えるし、またテレワークやロックダウンに拠り外に出たくても行けないとの事情に拠るものと推測できます。
このため昨年の電子商取引市場は30%程度伸びて、130億ドルに達したと推測されています。これに対して統計総局が発表した昨年度の小売業統計では
小売の通年売上高は前年比2,6%増の約5060兆VND(約2200億ドル)。
Eコマースという業態としての市場規模は小さい事情もあるが、単純に伸び率だけをみると店販を大きく上回っています。
伝統的小売り形態が主流で市場や商店・路面店、またはスーパーで品物を手に取って確認してから買うというベトナム流購買スタイルは、今回のCOVID-19の世界的蔓延に拠りそう簡単には出来ない。そうしたところへ今では多くの人がスマホを持っている。暇を持て余す合間に画面を見てストレス発散、お好みの商品があれば手間を掛けずに購入できる便利さが時の利を得たようです。
若年人口が多く所得も徐々に増えてきており、消費性向や嗜好、買い物習慣が変化しこうした世代への訴求がヒットしてきた。インターネット環境が格段に良くなり、世界の商品情報に直に触れ購入もできる越境電子商取引も可能。
しかもモバイル決済で容易に支払いが済ませる便利さ。これ等に全く抵抗がない世代の人達に受けない訳がない。行動を制限された特殊な生活環境下、最も効果的な商品購入方法だと評価され拡大したと思えます。

・事業拡大と潜在的需要の発掘は見込めるが

電子商取引は世界の流れからみると、多くの事業機会に恵まれたベトナムにも潜在する大きな需要があるとされているのだが、ビジネスの歴史に地場業者の経験が浅いために問題も数多く、また新規参入も簡単にできるので業者はこれからも試練を迎えるとマーケティング関係者はみています。
歴史的にかつてテレビショッピングが電波媒体の主流で、旧態のアメリカ方式で放映。韓国のCJ・ビナグループなどは自社スタジオまで持っていました。
専用チャンネル(ケーブルTVが多い)で、主な顧客は時代背景もあるが殊に年配者が多い。時たま日本製などもあるが扱う商品は中国・韓国製品が多数を占め、男女の饒舌でけたたましい掛け合いを長々と何度も見せられ、殆ど訳の分からない、安っぽくて危なっかしいと思われる商品まで売っていました。
これがもう観られなくなり、当方が入居しているビルの向かいにあった会社も看板が無くなり聞けば撤退。何年か前にスタジオ物件が売りに出され偶然これを見に行ったことがあります。
紙や電波媒体がまだ多い日本。アナログ的な商法が並行して盛況なのは高齢化社会が原因か、国民的感覚なのか。無視できないようです。

急増したECだがベトナムでは未だに主要都市部が中心。地方はこれから都市化が進むに連れて拡大する段階。購入世帯は若い人が多いけれど、電子商取引を販売手法として採用する企業は多くありません。
そのうえ流通(配達)段階と決済でのトラブルは表に出ているだけで結構あり、水面下で起きている問題まで含めると相当数。改善されていると言え各事業者のガバナンス能力向上が求められます。
これは過去のTV媒体のアバウトさが継続しているのかと思えなくはないが、大学教授で経済専門家の言に拠るとベトナムは世界レベルに近づいているが、技術が急速に進化している状況からまだ遅れている。従来の方法から近代的なインテリジェント管理システムに進化させる必要があるとするが、抽象的で、具体的に何を指すのかよく分りません。
さらに企業間競争はこの所激化しているが、経営者は明確な企業理念を持って企業内で共有、利用者へ提供できているか考えれば、まだその段階ではない。企業としての信用、扱う商品の安全・性能が保証され信頼性がないなら、利用する企業、購入する消費者からも安心を得ることなどできません。
また何かしら作り手の拘りが感じられる逸品、地域の特産品などの物語や文化、単純明快であるべき顔や姿が見えてこない。顧客満足度(CS)や充足感は無く単に安価な品物を並べて売っている露店と変わらない。製品力やブランド力もなければ競争から脱落するのはいとも簡単、目に見えているのです。
地場企業は商品企画力が強いと言えず、研究開発力にも優れている訳でもない。商品試験など検査体制も充実しているとも思えず、これでは安心を得られない。
一方、一般消費者にとっても商品知識が十分ある訳ではなく、多くの場合使いこなしが出来ない成長段階。これは商品流通が段階的発展をせず、圧縮されて急激に進化する一方である中で所得格差が拡大。商品の目利きができ自ら選択、必要なものを適時に使えるのは一部の人でしかないというのが実感です。

法整備に関連して、所管する商工省貿易デジタル経済局では、国内企業に対して電子商取引の導入を促進する。第四次産業革命の発展と、ベトナムが各国と締結した自由貿易協定の背景を鑑み、この支援と補助を行って法的な枠組みを構築して、オンライン市場分野での急速な発展に便宜を図る。としています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生