COVID-19で影響を受け、経済再生に向けて生産農家でも販路拡大がネックになっているという。多くの農家は販売ルートを持っていない。かつてメコン各地域へディープな農水業視察を日本の研究メンバーと同道したが、トラックなどは一台も保有しておらず、地域の昔からの輸送手段には違いないが、クリークに浮かべてある小舟に果実を詰め込み集果場へ運んでいったのをみています。
彼らは生産するけれど何処で売られているのかさえ知らない。日本ならば生産者の顔が見える、と陳列した野菜・果物などに買い写真入りのポップが置かれていて、コメントも書いてある。こうなると消費者は安心して買うことが出来るけれど、折角良いものを丹精込めても何処で売られ、誰が買うのかさえ分からなければ気が入らないと思うが、毎日の労働はキツクそれどころではない。
そこでこの所、時代は進んでこのような地域の生産農家と連携し、其処で産出される産品の販売経路を、強大な流通網を持つ大手小売業と組んで店舗で販売するとか、ネットでの販売に結び付ける試みが活発になって来たとあります。
例えば、メコンの省の一つドンタップ省の商工局では、先のマサン・グループと組んで省内の地域農家と企業を結ぶ会議を開催しました。
マサン・グループの小売を統括するWMC(ウィン・コマース・サービス社)は国内63省・市で約2800店舗を展開しているが、商品の90%はベトナム製、またこの店内商品における国産農産物は30%を占めているとします。
この後、早速成果が出て、省内7カ所で販売を開始、さらに9件の販売を行う覚書きを交わしたと、この先の見通しは明るいと期待している。
また韓国系ロッテマートでも中部ラムドン省、HCM市、ハノイ市で生産者等と国内14のスーパーで、年間2000万人の顧客に商品を提供してゆくため地域と連携するとあるが、地場が強くなり何か差別化を図りたいのが本音です。
過去において、国内流通企業は明確な理念やコンセプトを持っていなかった。
これは歴史的過程からみて無理からぬ状況で、小売業の段階的発展をせずに、伝統的小売り形態が続いていたが、発展と共に近代的小売り形態が都市部から地方へと展開する中で業界と生産者の意識が変化。この様な生産者・小売業者・消費者、夫々にとって新鮮で安全、流通経路が明確に分るような方法へと変化したと考えます。特に暑い南部の地域は農薬を過剰に使用する。でなければ育たないが反対に危険性も高い。そこへきて急速に有機栽培野菜や減農薬野菜が少々高くても売れるように消費者の意識も徐々に変化して行きました。
いわゆる食の安全に消費者は敏感になっていて、商店で買ってきた野菜などを洗剤で洗う家族も居たほど。だが生産者や大手スーパーなどは余り意識していなかったのが事実です。
HCM市で中部バンメトー産有機野菜の販売をいち早く手掛けた日本人H君、農業の経験はないが中部で研鑽してから独立した。この当時HCM市の消費者でさえ関心はなく殆どは日本人家族向け。だが大きさはマチマチ、売れないから鮮度が落ちる悪循環。国内配送業者の扱いは酷くて返品が多い。散々な目にあって撤退。だがこの後に急速に地場企業でも意識変化が起きたのです。
時期を見誤ると折角良いものを提供しようとしても売れない。先んずれば人を制す場合もあるが、進出する際は時流を読むのが大切な仕事。
・ベトナム産農作物の海外輸出
先日のテレビで映っていたのがココナツジュース。美味しそうに飲んでいるのだが値段は398円+消費税。何やらタッグを付けて高級そうだが、何の事はない。現地の路上で売っている物は精々50円。青い実に包丁で口を開けてくれる。個人的にそんなに美味しい物とは思わないが残念なのは果汁を飲んだ後、日本人は殻をそのまま捨ててしまうこと。本来は内側の白い果肉はスプーンで穿って食べるもの。因みに缶入の果汁が日本国内でも売っています。
他にベトナムからタンロン(ドラゴンフルーツ)、ソアイ(マンゴー)、ヴァイ(ライチ)、一部でバナナも入ってきているがそれほどの量は無く、珍しいけれど現地の値段と新鮮な味を知っているのなら全く買う気になりません。
日本からもミカンやリンゴなどが輸出され、無い物ねだりかも知れないが高い値段にもかかわらず人気があってよく売れている。日本産はとにかく美味しい。
ベトナムにとって日本は農産品の重要な輸出先。しかしその割合はわずか3%に過ぎず、輸出拡大を図りたい。日本に取ればベトナムからの野菜果物の輸入は
たったの1,7%しかないのが実情。そこで商工省の貿易促進事務所は日本への輸出を強化するためワークショップを開催しました。
だが衛生面では安全のための厳格な基準、動植物検疫、残留農薬に抗生物質。そして物流コストの高さだが、取り分けこれはベトナム国内よりも、日本でのコストは数倍かかるため何とかして欲しいのが本心です。
検疫に関して日本は島国のためもあるが、一旦害虫が入ればとんでもないことになる。テレビで放映される空港での検疫犬の行動を見れば一発アウトは正解。
現地では日本の農水省の管理下で蒸気熱処理、他の方法は認めていない。実際に国境を越えれば隣国ならこんな厳しいことはしておらず、また生産農家でも輸出したいが相談に来ても勉強していない。この姿勢には腰を折る。
政府は生産能力、品質の改善を続け、貿易促進へ積極的に働きかけるとしているがLL,L,M,S等サイズや規格に煩い日本人が納得するのか。
不揃いなら何か支障があるのか?収穫の3割以上を廃棄する日本人の意識改革も必要ではなかろうか。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生