発展進化するベトナムの電子商取引とデジタル化

2022年8月9日(火)

・ベトナムの拡大する電子商取引 21年度成長率20%

ベトナム電子商取引協会は2022年度の国内電子商取引指数を発表。これに拠ると、2021年度の市場規模はその前年比で20%を超え、160億ドル余りに拡大したとします。だが都市部と地方との格差がまだ大きいとの指摘がある。因みにトップはHCM市で全国平均である20,4を上回る90,6となっており、最下位のトゥエンクアン省の9,2との格差は比べものにならない。2位ハノイ市、3位ダナン市、4位ビンユン省、4位ドンナイ省とトップ5は例年通りで、南部が高い。

・農業生産家に恩恵 売上が倍増も

電子商取引(Eコマース)の普及に連れ、ベトナム農産企業や生産組合、農家などがその恩恵にあずかっていると言う。農産品や加工品の売り上げが倍増したとあるが、消費者へは中間業者を通さずに直に販売でき、これが浸透していると伝えています。
都市部では滅多にお目に掛れない埋もれた優良な産品が、ネット上で情報が開示されるとそのオリジナリティーとか、かつて愛用していた、珍しいなどの理由から全国的に注目されている。
地方の小規模業生産者や家族の手造り品や伝統を守って造られる商品は人の温もりを感じるとか、工業生産された安価な物より少し高くても丁寧な製造法や希少性が人気を博しているとある。
これはインターネットの普及が主要因で、またネット通販の普及で小口物流が全国的に発達してきたことに依るもの。日本でも宅配便など、権力を傘にした役所とのバトル歴史があるが、今や物流の大企業に成長。消費者の事を全く考慮しなかった無駄な規制の緩和や撤廃が経済の活性化に大きく影響を及ぼすと言う証明でもある。
こういう簡単な経済論理を知らないのが、現場が分らない政党政治屋と、市民生活を知らないオツムの良い理屈で生きている官吏。大手企業と結託し、利権やこれまでの法規制を盾にして権力で潰しに掛る行政が証明する所で、阻害要因にしかならない。
このような生産者にとって売りあげが伸びると言う好循環は、生産する商品の増加は勿論だが、品質の更なる改善や新製品の開発に繋がり、また原材料の調達が地元で行われるなら地域活性化に貢献でき、良いことずくめでもある。もちろん生産者へは所得向上に拠る生活が良くなるけれど、これはこれまで満足な高等教育を受けられなかった地方の子弟へも良い影響となり、さらに物流改善や新たな雇用も生まれる。こうしたプラスの連鎖が起きることで最終的には国力が強くなる結果にもなります。
何れの国や地域でも小規模伝統的産業は衰退の傾向。だが古来受け継がれてきたモノへの再認識が深くなることは地域産業の矜持であり、純粋で価値ある本物を絶やしてはならないとする人間の本能的な造詣か。

・農産物生産家のデジタル化促進

ベトナム情報通信省は今年にも農産物を生産・加工する1000万軒の農業生産者に、ベトナム郵政公社(BCVN)がインターネット販売を展開するプラットホームサイトであるポストスマートと、携帯電話大手・ベトナム軍隊工業通信グループであるベトテル系VoSoというサイトへの加盟を計画している。
BCVNでは通信販売用のウェブサイトを積極的にリニューアルしていると言い、冷蔵チェーンの供給の最適化にも力を入れている。また農家の生産物販売を情報面から支援するためにスマホ用の販売アプリを構築するとか、原材料の産地や履歴を検索できるサイトを作るなどしていると言います。
また単にオンラインに頼るだけではなく、対面での販売に向けた戦略会議を開催し、ワークショップなども企画しているという積極姿勢。過去の農家の実情を知る者には何という様変わりかと、時代の流れを実感します。
この会議に生産農家はもとより、製品加工企業と販売会社、BCVNやベトテルも参加、汗を流し、頭を絞っていると言う。なかなか考えられない大きな真価が見て取れます。具体的な成果があればこそだが、音頭をとったお役所が偉い。
本来こうした農業関係は農業農村開発省の仕事だが、デジタル化ということなので、情報通信省がお株を奪った形だが、同省郵政局は農業分野のデジタル化は農家や生産組合、加工業者などに成果が得られた為、小規模でもビジネス参加できるようにする。彼らがシェア拡大やブランディング、原産地認証やマーケティングに関心を持つ様になったのは大きな成長。儲かる農業とスマート化へ幕開けです。

この状況に日立製作所は、ベトナム国内での金融サービスを行うについてその地域間格差を減らすための事業を始めるとしました。Inspire The Nextで事業を拡大しようとするが絶好の好機。これはビデオ通話と人工知能を使い、金融サービスが受けられなかった農山村漁村や遠方の地域でも、都市部と同様レベルのサービスを地元住民が受けられるようにするとあります。
この様な金融デジタル・トランスフォーメーションはこれから需要が見込めるが、国内で日立製家電製品をそれほど見たことは無いが、この様な事業部への参入は他社が行っていない差別化、新規開拓に成果が見込めるのではと考えます。

具体的にはベトナム郵政と現地金融企業のベトクレジット・ファイナンス社との協業。手始めにベトナム郵政の40拠点にタブレット型自動契約端末を設置。ベトクレジットの担当者と消費者、テレビ電話対応でローン申し込みから契約まで一貫してできる。最終的には全国13,000の郵便局の窓口でこれが出来るとしています。システムはユーザーがタブレットで撮影した本人確認写真を元に、申し込み情報確認をするが、不備があればその場で担当者が指摘できるのでミスが無く手間が省ける。
ベトナム人の多くは契約行為に慣れていないため効果があるし、審査にはAIを活用するので精度が高く技術差がなくなるので一定の基準を確保できる。
将来的に保険などの金融サービスに拡大できるメリットがあり、さらに郵便に関するサービスなどのキャッシュレス化が可能になるとしています。

一般市民への金融サービス、即ちローン貸し出しがこの様な形で簡単になることは、これまで考えられなかったこと。状況は異なるが商売人がその日の借り入れを行ない、夕方になって1割以上の利息を付けて返していた。頼母子講の様な貸金形態もある。また銀行系不動産会社が販売するアパート等、不動産へのハウスローンはあったが、貸付限度は50%となっていたリ、国全体でみると個人金融システムなど整備されていなかった。
現在の状況は金融商品の設計開発もしやすく、消費者には透明性が担保できると考えられる。こ明確な形式でのローンや割賦販売など、ベトナムではこれまでなかった筈で画期的。また郵政を利用するのは明察、今後他社の追随参入もでてきます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生