日本向けベトナム産農産品の輸出が好調とあるが

2022年10月14日(金)

2021年ベトナムから日本へ農水産物の輸出は18億ドル(0,5%減)で、魚類、海老などとその加工品、果実・野菜、コーヒーに大豆、穀物が主だった。
水産品が7,4%減少した他は、胡椒56%増、カシューナッツ39%増、コーヒー25,5%増。青果は20%増加するなど好調であったが、特に南国産果実であるマンゴー、ココナツ、ドラゴンフルーツが市場を拡大したといいます。

日本人が一番好きなバナナも第1四半期の3カ月間、世界で7番目の輸出国となり、1500トン・130万ドル。これは前年同期比で輸出量は38,5%、金額ベースだと約30%増加したとされるが、日本の総輸入量からすれば僅か0,8%にしかなりません。この先増える可能性は高いとみるが、近年在住するベトナム人が増えたこともベトナム産食品の需要拡大に繋がると現地報にあるが、それはチョット違う。ベトナムには他に甘くて味の濃い品種もあり差別化するべきだが、知らない筈はなく、そこまで気が回らないのでしょうか。
因みにフィッリピンが一位で約19万トン、132億ドル、続いてエクアドル、メキシコ、グアテマラ、ペルー、コスタリカとなっています。

ベトナム産青果物は日本ではまだニッチの部類。先の果実の他にも現在は現地でしか味わえない人気のある品種は沢山あるが、輸入できるまでには至っていません。燻蒸などの防疫とか残留薬品等の問題もありドライフルーツや冷凍品が多いみたいで、価格は別にしても生鮮果実が輸入できるようになれば双方にメリットはある。この辺りアメリカなど市場性は高いし可否の結論が早い。
日本市場でのベトナム産食品の市場性も高く拡大できる余地はあると考えるが、日本の厳しい食品衛生や安全基準に適合するため、ベトナム側生産・輸出業者の留意は勿論だが、さらに日本市場や消費者のニーズや感性・感覚を調査研究し、品質や味覚は当然だがパッキングやロゴに至るまで改良改善も重要です。

これまでの多くの生産者・企業を訪問したが、小さい企業はマーケティング力が低く自社ブランド化出来ない。バルクで日本等の大手流通業者へ売っている残念な実態があります。至って製品は優秀で、自然の旨みが凝縮されており、混ぜ物が全くない逸品。品質管理や安全に十分注意している証明、自社検査室もあって日本製検査機器をそこに見ました。
これが日本の業者のブランドとなって販売されているのは事情を分かっているだけに勿体ない話です。大手企業も輸出したい、中堅どころでもしっかりした企業理念を持って生産、販売している企業もある。こうした処の企業へは実際に訪問し経営者と話をしたが、なまじの日本側の担当者であればむしろ位負けする強い信念もお持ちとみた。
会社も製品も市場に出ていない。物語も聞いたし試食や試飲もした。此処までの苦労の結晶は旨い。だがブランドは有名でなくベトナム製というイメージで損をしている感じだが、これは農産・加工品だけでは無く水産加工品も同じ。
正当に価値を判断・評価できる舌の肥えたバイヤーに見出されるのは何時か。

・シェア拡大を志向するが

ベトナム農水産品にとってまだまだ開拓の余地がある海外市場。このところは時節柄オンライン形式で貿易促進活動をしています。また日本に駐在する貿易事務所や市関連の事務所では得意先開拓も行なっており、この結果、現地工場などの視察も行った実績があるため一定の成果は上がっていると感じます。
日本市場でベトナム農水産品の割合は3%に過ぎません。分り切ったことだが、この割合を如何に増やして行くのかが課題。ベトナムから隣国への輸出に在っては人為的国境をトラックで越えるだけ。通関手続きはあるけれど厳しい検疫など聞かない。これと同じ様に考えているのなら問題だし、国内向けは不揃いでもOKだが、しかし日本の消費者は厳しい目で選別する事と知るべし。

是非はともかく、形や色、糖度など規格の遵守が求められ、検閲や検疫があることを忘れて送り返された実例や廃棄処分がこれまでに結構あるのです。だが海外への輸出とは何処でも同じく厳格、なにも日本だけが特別ではありません。
果実を輸出したいと相談を依頼してきたが、事前調査もなく勢いやってくる。そのまま船積みすればいいと思っている。こういう姿勢では海外輸出する資格があるのかと思う人だっている。輸出拡大のスローガンはいいけれど、行政が先に生産者や輸出業者に指導すべき課題は沢山あります。

日本最大の食イベント、フーデックス2022にも5社が10ブースで出店。
ベトナムの食品を各種出品したが、さて引き合いは如何だったのでしょう。
機会を捉え海外の展示会に出品するのはやぶさかではないが、具体的な成果を何処まで得られるかはわからない。経験則からすると費用対効果は見込めない。
珍しさは先行するにしても、さて商談となると思う程の商談や進展はないのが実情。これは日本企業でも同じだが、むしろ通信販売やSNSの方が現代的で効果があるかもしれない。効果的なのは如何に継続して発信できるかであり、また話題性や商品のストーリーが必要だが、積極的に活動してこのような方法を採用しているとは思えません。ならば貿易商社を通じ価格は低いけれど確実にさばける方が簡単で楽。だから敢えて努力せず、バルクで満足する生産者が居るのです。何も日本企業だけではなく、欧米の企業でも同様の方法を採り、資金や種子まで貸し付けるケースもあります。ほぼ隷属的委託生産に近いが、それでも代々受け継ぐ野菜や米作りをするよりもマシというから恐ろしい。
日本のスーパー等でもベトナム製品を扱っていて、中には現地業者を指導しながら商品開発や栽培を手掛けている場合もある。他の工業製品と同じく相手先の仕様に基づく委託なので日本企業が全量買い付ける。B級品は取らないが、モノが優秀なら先は価格が良くなるとか取引が増えることもある。こうなると競争力が付き品質も向上、収益も付いてくる。国内市場でプロモートするより売上げに利益も確保できるし将来的な国内販売の実験ができます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生