テト後 大きな心配事が起きる可能性は

2023年3月28日(火)

・COVID-19はどうか

行政が最も危惧しているのはCOVID-19の感染急拡大。大都市に出ていた人たちがテト休暇に故郷に戻っている間、各地へ散らばっていた多くの友人や知人も帰郷している。となれば久方ぶりに会って親しく飲食を共にし、募る話もあるだろうし互いの近況を知りたいのが人情。だが感染していても自覚症状がない人も結構いるため、知らぬ間にうつしている可能性も否定はできません。
さて休暇が終わり地方から都会へ一挙に人が戻ってきた。となれば新しく発見された変異株XBBが蔓延することも考えられなくはないと懸念している。
1月にHCM市で発見されたのは僅か数例しかないとされるが、さらに変異していることも分かっており脅威となる内心ビクビクとしている。ワクチン効果が薄れてきている事情も考えなければいけないと焦るのは当然です。
こうなるとこれまでは毎日数百人であった連日の感染者は数十名、殆ど死者が無かった状況に変化が起きないよう警戒しなければならないと気を揉んでいる。

・経済に関して

昨年の経済はかなり好調であったとしており、この状況は現地報に基づき今回のコラムでその内容に触れています。だが公表される数字だけや一般的な記事を追っかければ成長を続けている姿そのままです。ここ3年ほどはCOVID-19の影響があるので、これを割り引いてもアジア圏内で目標を達成したと世界の機関や銀行は高く評価している。
また調査に拠れば日本企業が海外投資をするとなれば、ベトナムが8年連続の圧倒的1位。伸びはないけれど、今年は2位のインドを2倍ほど上回ったとされるほど未だ人気を維持しています。それでは先ずはベトナムのマクロ経済はどのようになる、とみればいいのか。

不動産に関して一度目のバブル崩壊はテトが開けて直ぐ始まったが、2022年は長く市場が低迷。今年のテト後はどの様な動きを見せるのか。これに現地の複数の専門紙が報じるところ、一般的にベトナムから発信される期待感に拠る回復説とはまた違う、現場での生の厳しい状況が伺えます。
こうした実態に関しても、今回は年末年始にかけて現地から様々に報じられている情報を元にして先行きどうなるのかを考えて行きたいと思います。
また現地で長く事業をされている方からは、大きい企業と中小、あるいは堅実に経営をして来た企業と一気呵成に成りあがってきた企業とでは落差があり、一括りにして好調だと考えるのも無理があるとの見解もあります。
ローカル度が増す程に多くの地場企業は歴史が浅く、人材も育っていないし、事態は深刻であるのは事実。また日本のネット記事にいつも出て来る勤勉とか、酷い場合は日本人のルーツはベトナムだったので真面目な人が多いなど、現場を知らずにいい加減な説を書くのは度を越えすぎ、アホらしくて話にならない。

・昨年度の経済成長は何故過去10年で最高まで伸びたのか

昨年12月29日に統計総局が発表したところに拠れば、2022年度の経済成長率は8,02%で、2011年からの10年間で最も高い成長を記録したとあります。
現地で長く銀行業務に携わっているHSBCでも、12月に8,1%との予測をしていたのではほぼ差違いはなく実情をよく観ていた。
だが前年比ということは、即ち一昨年の落ち込みが酷かったというだけ。殊更これを持ち出すのはいかにも最高に成長したと言いたいだけ。ベトナムの経済専門家と称する人達も同じ様に数字を取り上げているが、如何なものかと思えなくはない。2021年度は6,5%に目標を置いていたが、結果として実際には2,5%に過ぎませんでした。状況は錯誤しない様に正しく伝えるべきです。
年末にかけて数カ月間は特に製造業で落ち込みが観られたため、これが無ければ8,5%はクリアできた可能性があったと悔しがるが、むしろこの原因は何かを精査する必要がある訳で、危機感を持つべき。仮に他の近隣諸国と比較して優位性を評価するにしろ冷静に捉えるのが賢明と考えます。

では成長要因は何だったかと言えば、国内消費(内需)、輸出、外国直接投資が順調であったため目覚ましい数字を達成できたと専門家は自認している。
内訳としてサービス業が57%と大きく貢献しており、急速に三次産業の成長が明らかになっています。
また元々政府が先進工業国化目指していた製造業・建設業は約38%。国内の社会インフラ整備は急速に進んでいるし、今後は都市改造も視野に入ってくる。さらに裾野産業の構築は遅れているがサプライチェーン化を本気で目指すなら、技術力向上、人材の教育・育成と精密機械設備の導入が必要。
このところ話題が盛りだくさんな農林水産業は5,11%となっており、長期間この国を支えてきた一次産業ながらその比率は低下傾向。だが国民の食生活が変化し畜産と乳製品事業は需要が高まる傾向にあり、農作物の品種改良も進化。新市場開拓で輸出が伸び絶対額は増加する可能性は高いとみる。
国内で産業構造の転換が急速に行われているのは、年々こうした数字から読み取れる。国民の所得が増え、生活の質が良くなっていて内需が活発になっているとの証明。今後は高品質、高級商品が売れ、二極してゆくのが定石です。
2022年度の商品とサービスの総売上高は前年から19,8%も上昇したと報じている。もちろんCOVID-19での冷え込みもあったが、秋口から感染者に死亡者が激減しており社会と経済が円滑に回っていたことが分ります。
この傾向はこれからも進むと考えられるが、先のベトナム進出人気を考える上では、こうしたマクロ数字だけでなく現場の実態である肌感覚も重。これを踏まえ何が最も適切なのかしっかり状況を見続けるべき。

輸出入とFDIに関してはどうだったか。前回にも述べたが輸出主要国の市場回復もあり輸出額は3710億ドルを超え10,6%の増加。100億ドルを超える黒字となりました。
FDIは11%減少するも、実行額は13,5%増加して約224億ドルと過去5年間からみて最高。しかも欧米企業に依るこれまで以上の大型投資がみられ、中国から生産拠点の移転が増える可能性があるのは間違いありません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生