重要な技術はあるけれど

2023年9月28日(木)

重化学工業に製造業、エネルギー産業では大量に二酸化炭素が発生します。
地理の教科書では京浜工業地帯とか阪神工業地帯に、石油コンビナートなど、全国各地のもの作りの地域も学習した。だが高い煙突から黙々と煙を吐いて、製造に伴って出される汚染物質や廃棄物は空気中や河川・海に垂れ流したまま。
これが如何にも工業国の象徴だったとする時代に我々は生きて来た。だが徐々に環境保全が叫ばれ、長い時間を掛けて改善されてきた記憶がある。
二酸化炭素は温暖化の一つの原因として叫ばれ、アメリカの副大統領であったゴア氏が一石を投じたけれど、これには様々な否定的な見解もありました。
近年気候変動が顕著に具現化して海水温度上昇。これが日本ではこのところの台風の大型化や大雨、また速度が遅くなった一つの原因となっている様だし、海流の変化もあるが採れる魚の種類が大きく変化、さらに気温の上昇で作物の栽培限界が北上しているとある。二酸化炭素が悪者とすれば地球の環境破壊が進み、人の生活にも多大な影響が出て来ると思われます。

この所、この二酸化炭素を大気から回収して地中の貯留層に圧入させる技術が進んでいて、これをCCS(Carbon dioxide Capture & Storage)といい注目を浴びているとされる。これは泥岩などCO2を通さない地層を利用、隙間の多い岩石・砂岩層に貯める方法で、日本でも実験をして結果は良好の様です。
またCO2を吸収するコンクリートも日本企業で開発されているが、他にも幾つかの新技術が出て来そうな感じで、実験段階にあり実用化は近いかも知れない。
さらにCCUS(CCS+Utilization)とは回収済CO2の有効利用と貯留する技術。アメリカは古い油田を利用している例もあり、36カ所の施設を有して世界一とされ、今後は急速に増える見込み。
世界各国が二酸化炭素排出削減に積極的に取り組んでいるが、これ等の施設は自国領の中で出来るので技術と資金があれば、後は地質調査でその可否が分かるので、これからもっと利用されるかもしれない対処法です。

ベトナムでは現在この技術の認知度は一般的にみれば低いけれど、政府は重要性を十分認識しており、一部の大企業でも取り入れる準備を進めつつある様に聞きます。しかし電力を創るためベトナムが最も使っているのは化石燃料で、石炭・石油が90%強。温室効果ガス排出は人口増加と生活が豊かになる過程で電力使用量増加と比例して増加するので、真っ先に解決すべき問題。
経済が回復すると一層電力使用は増えるため政府は化石燃料依存体質を改善、政府が主張するカーボンゼロを実現する政策に大転換、推進する必要がある。

・気候変動に対するベトナムの考え方

国の2050年までのエネルギー分野での基本的戦略に関し、天然資源環境省は二酸化炭素を含めた温室効果ガスの削減のため基本計画を挙げています。
第一に再成可能エネルギーを開発。全エネルギーのうち、此の割合を73%に引き上げること。
二番目には、再生可能エネルギーを開発。2025年以降、炭素の回収と貯留(CCS)技術を実施すること。
三番目に、再生可能エネルギーに関連し、現在最も二酸化炭素を排出している
石炭火力発電に代わり、原子力を増やす。これは2035年以降に実施する。
とあるが、研究には着手している様で、ダラットに研究施設はあるのだが。
ベトナムは二酸化炭素削減のため、2022年から3000トン、2030年から2000トン、2040年からは500トン、2050年には200トン以上排出する施設に温室効果ガス排出調査を実施するとの厳しい方針だが。
2027年までに炭素クレジット管理、炭素クレジット取引所の規制を策定し、2028年以降に取引所の運営を予定する。実現は如何。

・先に解決すべき課題が目前にある

先ずはこれまでに幾度となくコラムにして来た不動産だが、各企業は資金難に困窮しているのは周知の通り。しかも顧客心理は一向に回復せず、需要は無いという訳ではないけれど動き(実需)が見られないまま市場も固まっている。中国ほど危険な状況では無いにしろ、一般の購入予定者からは何れは買いたいけれど値崩れが期待できるなど不安感は払拭できず、様子見状態が続いている。
国が前回の経験をもとにして事前に策を講じなかった責任はあると考えるが、業界をテコ入れするために資金を出すことは絶対にない。しかし各不動産企業の債務超過が明らかになるのは今年から来年にかけてと予測されています。
こうなると手持ち物件を売却するしか、打ち出の小槌などありません。手取り速い策がM&A。現地の識者は一般客へ販売は見込めないため、こうした資金調達法で一括処分。このため活況を呈するのではとの見方をしているが疑問。
これまでにも不動産市場の回復は今年末からなどと推測していたけれど、その内実とは、即ち外資系企業の軍門に下るというシナリオ。これをどう考える?
既にこの兆しはあり、大手であるN社は物件価値相当で子会社の株式の大半を売却している。この手法でM&Aが不動産業界で盛んに行われる気配がある様だが、土地は民主主義国家のように外国企業・外国人投資家が権利を得られる訳ではないため、事業への参画と相成る訳です。こうなると政府も阻止しようがなくなる。投資する方に取れば利益が出ればいいだけだが、では物件をどのように処分(販売)してゆく考えなのか具体策は定かでありません。
もう一つの問題点はベトナムの投資家が動かない。この理由は外国の投資家が高い利子率を提示するのに対し、国内投資家は低いためであり、此処は踏ん張りどころかも知れないけれど、圧倒的に資金力が違うというのが最大相違点。

日本企業はと言えば、不動産事業進出は他国に比べてかなり遅かったけれど、堅実に現地企業とJVだが建築品質は高く、住み易い間取りと設備仕様の物件を供給。安定した供給と安心感と信頼度が高く、特に高所得者層に人気がある。しかも無理しないのが企業体質。ここにきて二回目のバブル。現在は目立った動きをしていないが、リスクを取らないから相手が期待しても時勢が落ち着き、上向きと判断しなければ手を出さない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生