現地の有用なコンサルタントの必要性 綱渡りの税務申告も問題なし

2024年6月26日(水)

・日本人が分からない現地事情とコンサルタントの実態

現地のFREE PAPERなどに広告が載るさるコンサルタント会社。何でもかなりの料金を取られると聞く。此処はある自治体の委嘱を受けており、ミッションを派遣することになって担当者が視察先をリクエストしたけれど、全く伝手が無いと断ってきた。公認会計士を抱えているとかだが、地場企業との接点はなく、見栄を張っているだけで中身の薄い話。
また長年在住している人物が所長。本社は東京だが現地スタッフに仕事を任せているだけ。此処もまた別の機関から要望があったにも拘わらずコネクションが無いと断ったのはスタッフが有能でない証拠。これが実態です。
ある大阪の地銀。以前セミナーを聞きに来た位で、クライアントの進出相談は自社でできないので委託。担当者を2年程HCM市に派遣し、帰国後にこの方が銀行の名でセミナーを開催。一回だけで終わったのは底が知れていたから。さらに公的機関である✕✕機構、此処でも相談を受け付けていたけれど担当者は現地に数年駐在した経験しかない人物。まるでお飾りでしかなく上辺だけ。来越時には当方にヒアリングに来た位。
このように日本の中小企業が本当に知りたい現地の真の実情や、現場の実態が分かっていない人は実に多い。個人的に現地の要人や企業の実務レベルで依頼が出来る接点も持っていません。だから分厚いデータで誤魔化して資料作成、視察にしろ、進出支援などの法人設立等でも高いコンサル料をとられる。高額=有能ではなく、騙されてはいけない。

この国では毎月の経理状況を税務署に報告しなくてはいけません。幾ら有名な会計事務所でも臍を曲げられると上手く行かない。そこで進出を支援する以上に大切なことは、さらに進出したとすれば次に重要なのはこの会計事務を確実に行ってくれる事務所です。地場であっても権力を振りまわすのが税務署。
特に外国人が役員に居るならば、イチャモンを出した鉾先を中々収めてくれず、力関係の強さもあるけれど、如何に交渉できるかが有能な事務所となる訳です。これは大小関係なく儀式の様な感じでなかなか引かないし、引けないのである程度の成果が無ければ嫌がらせは延々と続く。

・信頼できる相手先パートナーの選択は重要

ある時、日本から取引先となる予定の現地企業の状況を見てきて欲しい、との連絡があった。恐らく財務諸表は手に入れてあるようだが、操業の状況などを知りたいという。流石にこれはお断りした。
相手企業を経営者自らが訪問して面談、会社内や工場などを自分のこれまでの経験や培った目で見てこそ分かる事があります。それには公式ではなく抜き打ちで良いけれど、実際に操業している日本企業の中には管理者が居なくなれば現地雇用の工員が怠けて休息しているとか、菓子類を摘まんでいるのを見たが、取引先であった日系企業何社かでこういう実態を直接目にしている。
また多くの工場では仕事にとりかかる前にクリーンルームで清潔にするのだが、それでも様々な毛やゴミが付着していることがあります。ある工場は錆が出ては商品にならない繊細なものを造っている。このため完全空調で汗をかかないようにし、手先の器用な人が手袋を付けて作業しなければならないのが規定。しかしこの規則を破り素手で作業していたことが発覚。こうなると個のロットは全量廃棄となる。理由はやりにくいからだが、こういう規則を守れないとか、企業風土に馴染まず、仕事への矜持もない工員は実に多いのです。

こうした中でも地場企業でもしっかりした優秀な企業はあります。現法社長が日本に留学、仕事も納期も厳守。要求通り高精度の製品供給を行ない、信頼を得て大手海外企業から受注を増やしているベトナム人経営者もいる。この様な会社の工場を観ると整理整頓が出来ていて綺麗、一目でワーカーのレベルが高いと分かる。これは客が視察に来た時に挨拶ができることでも見えて来ます。
なぜ笑顔になれるのか、それは給与が高く支給される食事もかなり良い事から伺える。だから離職率は低いし、業績は年々更新しているのです。
敷地を拡張し、工場の増設をしなければ受注に応えられない。こういう企業の経営者の特徴だが、モノ造りに対する真摯な姿勢が自然と見えて来る。例えば金型も自社で生産できるし、設計も自社に技術屋を抱えているのはもちろん、最新の機械を装備している。もちろんその投資額は相当なものだが経営観とか哲学を持っているのです。さらに仮に留学していても品質向上には受注先からのアドバイスを真摯に受け改善改良に常に取り組んでいる。その結果、品質と信用が顧客を新たに連れてきている。現地生産を行うための進出であるなら、こういう相手先の協力工場を見つけることは極めて大事な要素です。

・リスクを減らすには慎重に効果的な相手企業の調査を実施が必至

海外ではなにかに付けてリスクは付き物と考えるのがいい。相手国の商習慣は違うし、グローバルビジネスの経験は極めて少ない。特に新興国は政府・行政が経済とは何か分かっていない上に、なおさら自由主義圏でなければ頭は固い。
近年は若い人が海外に留学や外資系企業に勤務、そういう環境下で仕事を覚えた人は使いやすいが、自国の大学を卒業しただけでは実際に大きな差がある事を理解した方が良い。これは進出企業が経験し、最も良く知る事実です。
世界大学ランキングがあり、これを見ればベトナムの大学の順位はかなり低い。
それ以上に企業やビジネスで役に立たないのは専門学校でも全く同じで、世界のトレンドに悉く遅れているのが実態なのです。これは教授陣に問題があって先進先端技術を修得していないとか、実践的経営を知らない人が理論だけ分かっているから。義務教育・高等学校の授業でも実験とか実習はないし体育実技なども行っていない上にクラブ活動が無いのが実情です。だから教科書通りに覚え想像するだけの弊害が仕事にも出て来る訳で、こうした経験をしていないから数学は世界的レベルにあると言える。それは金が無いから教育に金を掛けられないからという単純な理由です。こういう教育に意志ある親からは問題提起されているが、大学でも事情は変わりません。知識はあるが知恵や企画力、思考力がないと言えるのです。さらに財務経理に弱いのが一般的。

日本企業が現地進出にあたって、実際には現地企業との業務提携や合弁会社の設立にM&Aはよくあること。多くの場合、実績がないのに聞くと「できます、やれます」と答える。だがこれは日本語能力を聞くのと同じで、例えばN1を期待していても、相手はN5であっても「できる」訳で、必ずデータや数字を要求して確認すべき。これと同様、費用を惜しまず相手先の調査をするべきで、日本の在越弁護士事務所などに依頼。最後は自身の経験と勘に目で判断。また現地進出の企業にも助力を得るのが良い。

多くの企業は歴史が浅いのを考慮する事が肝心。社歴が浅いということは企業風土や理念に基づいて事業活動が行われていないとか、経営センスがある役員が少ないとか、従業員の離職率が高く、仕事への情熱や矜持が低い場合がある。
また取引先とか内容、経営陣・キーパーソンの経歴と経営力、資金力も必要。政府関係と行政、大学や業界での人脈とかコネクション。特にベトナムならでは不正行為があったかどうか調査が必要です。

これはある企業が進出に際してのこと。現地に在住した社長の親戚筋の紹介があり(官庁の機関勤務)、この方が現地企業との提携を進言し紹介した。ところがやり取りの中で、ある役員が疑念を抱いた事案があり、このことを相談に来られた。
その話の内容とは、この現地企業はその所在地の省と関係があったにも関わらず、工場の建設地を別の省にするとなったのです。米を主原料にするこの会社。提携先の省はメコンの米所。原料はすぐ手に入るし輸送も楽な工場用地もあるのになぜ別の省にある土地を紹介するのか疑問に思ったという。この勘は大事。
相手はHCM市に近いし用地代は安いという。ところが調べると水を引く必要があり、進入路を幹線道路まで接続しなければならない荒地。
となれば余計な工事費が掛かり結果として全く意味がない。要は持て余していた土地をプロジェクトに乗じて日本企業に買わせてようと画策したのです。
日本企業は得てして充分な調べをすることなく相手を信用する。性善説に立つことがままある。須らく疑って掛かれとは言わないが、相手の話を鵜呑みにすればとんでもない大損を招く場合もある。
相手は委細承知で紹介料を得るために個人的に役員が行ったのだが、このような不誠実な行為は往々にしてあると思った方が良い。
落とし穴は何処に成るのか分からず、慌てて事を構えない、充分に現地事情と相手先企業を調べるのが重要です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生