ベトナムコーヒーの価格動向
コーヒーの価格はどんどん上がっているとか。日本のスーパーなどで売られているコーヒー豆も段階的に一昨年の2倍ほどに急騰。さらにコーヒー専門店で買うとなればそれ以上になる。ベトナムでも今年のコーヒーの出来具合が良くなく不作、収穫される量も減る可能性があると云われている。さらにコーヒーをこれまで飲まなかった中国などの消費国が大量に買い付ければ争奪戦となるのは自明の理、この先価格が下がる傾向にあるとは思えません。
ベトナムの中部地方の山地であるダクラク省、ラムドン省、ダクノン省が主な産地で、高級とされるアラビカ種が約20%、80%がロブスタ種という構成。このベトナム産ロブスタ種はかつて余り品質が良いと言えなかったので、複数原料としてブラジル産などに混ぜられていました。しかし中には大変美味しいロブスタコーヒーがあるけれど出回っていないだけ。要するにコーヒー生産者が美味しい豆を造ろうとの考えはなく努力もせず、指導体制も出来ていなかったわけです。ベトナムで最高級品とされるのがチョン(CHON)と呼ばれるが、これはイタチ科の動物が実を食べた排せつ物に出て来るもので、インドネシアでも同じ様なものが最高とされるが自然の摂理を利用した人の知恵。
民間(米国のベト僑)の農産物貿易企業のロブスタ種に比べ、市場に出回る品は一口含んだだけで旨さに大差があると感じたけれど、これは焙煎だけでなく栽培での工夫や研究がされていなかった証だが、このところ日本の各メーカーからは支援や品質改善指導などがあって、栽培技術に品質が向上しています。
バンメトー市には国立コーヒー研究所があり、コーヒーやカカオ栽培に関する研究をしている。筆者は此処に日本の農業生産者と農大卒の研究者と共に訪問したけれど、思うほどの設備もなく積極的な印象はないとの記憶があり、品質改良や生産農家への指導は出来ているのか、その成果は疑問です。
このコーヒーの輸出は世界的価格の上昇で、2024年12月時点で135万トン、約56億ドルを輸出しました。この数字は昨年同期比で数量は13,5%減少したけれど、金額は38%増えています。また2024年度は過去最高額の56億2千万ドルに達するとあり、1トン当たり4178ドルと過去最高値。
こうなるとベトナム国内での価格上昇も避けられない。ベトナムでのコーヒーの収穫は12月から始まるとされるが、昨年11月末には取引価格が1K当り121,800~122,700VND(約4,8~4,85ドル)とほぼ1カ月の間で10%程度値が上がったとしています。
こうした状況からトレーダーは、生産農家では収穫した豆の価格上昇を期待して様子を見ながら在庫を保持するのか検討しているとあります。
今年になって1月の統計でコーヒーの輸出が約155千トン、価格にしてほぼ8億ドルとなったと協会が報じています。
農業農村開発省は今年の生産目標を198万トンとしているが、これは昨年をわずかに上回る程度の量。因みにアメリカ農務省では所世界のコーヒーの消費量は1億6810袋だが、ベトナムの輸出量は2440万袋となると予測する。
ベトナムのCafe 休業の増加にもかかわらず増加傾向
日本ではタリーズとかスターバックスなど大手外資系資本のコーヒーチェンが店舗を増やしています。画一的で個性がないけれど、何やらお洒落で近代的で人気があるのはやむを得ない。商品や味が何処でも同じというのはマス流通の典型で日本人がこれに慣らされてきている証拠。鳥取県ではスナバはあるけれどスタバが無いなどと揶揄されたけれど、これがひとつのたかがコーヒー文化で都会の先端文化に遅れたと感じるのは大きな間違い。何で勘違いするのか。
ところがこの所、個人経営の昭和感満載の古い喫茶店に若者や外国人に人気があるという。それは落ち着いた雰囲気で気分がゆったりとするというのだが、如何にも古くてレトロな内装に重厚感があり逆に新鮮で嬉しいという。
大阪に6758の喫茶店があり日本一。心斎橋にはかつて愛好者が集まるBCがあり、英國屋は人が少なくてゆっくりできたし、大阪名物ミックスジュースは新世界の千成屋が発祥。余った果物が勿体ないからとの知恵から生まれた。ビジネス街でも営業に行く前にモーニングを食べて、ホッと一息入れることが出来る本町のサワダコーヒーに世話になった。現場で真っ先に調べるのは飯屋と茶店。建築現場では職人とか親しい客との打ち合わせにも使ったが、店主も心得ていて頼もしい限り。即ち大阪は応接間の代わりに使ったと識者はいう。
紅茶専門店の老舗ムジカ、ここは北新地に近くにあった店が西宮に移転した。
京都も喫茶文化が育ち、河原町界隈には古くからの有名店がある。東郷青児の画があるカトレア、ワルツが流れにウインナコーヒーが有名な築地に六曜舎、今は焼肉店となったミューズやイシズミなど学生時代から親しんだ店があった。しかし観光客が増えすぎて地元の馴染み客が入れないほど人気は雑誌の影響か。有名なだし巻をサンドイッチにしたのもこの様な昭和の時代の京都の喫茶店。
東京ではコーヒーゼリーが安くて旨かったルノアールが筆者の好みでした。
飲み物として口を癒すだけの機能だけではなく、店の個性があったのがこの様な何処の町にもある喫茶店でした。心地良いと感じる人間の気持ちは誰も同じ。
だから情報過多で見えない人と繋がるSNS社会に疲れ、人との触れ合いがあって流行のとろふわ玉子に掛けたデミグラスより、昔ながらのケチャップ炒めて固めに焼いた玉子に包んだオムライス、日本のナポリタンに味噌汁が付いているなど一見アンバランスと緩さが何とも暖かくてほっこり癒されているわけ。
ベトナムのカフェ。HCM市にも至る所にあって、それこそ路上でおばちゃんが家で作った濃い目のコーヒーを目の前で氷を砕いて入れてくれる露店から、路地裏の小さな店や、若いウエイトレスが居てケーキもある綺麗でしゃれた店やチェーン店まであって、価格も千差万別だが味は何れも美味しいと感じます。何処の店でもベトナム茶を何杯でもお代わりしてくれるのは嬉しいサービス。
友人の一人がコーヒー豆を産地から仕入れ、自社で焙煎して売っているほかに、Caféを経営している。何れはオーガニックコーヒーを店で出すとして高原に土地を買って自ら開墾しコーヒー畑を作っているほどの熱の入れようです。
こうしたCaféはベトナム国内に50万件以上あるとされ、やめる所もあるけれど新規開業も多いという。統計総局の報じるところでは、2025年1月には53800社が撤退、これは昨年比で8,1%の増加。しかしその反面、主要都市では新しい店舗がオープン、伝統的な店からユニークな発想とコンセプトで新店舗は次々に進化しており消費者のマインドをくすぐっているとあります。
調査会社のデータでは2024年度5億1千万ドルであった市場は、2029年までに7億6500万ドルに成長すると予測している程の喫茶文化がある。
この背景には日ゼニが入ってくるとあり、日本人のベトナム人配偶者が露店で昼までの営業で得られる収益は毎日50万VNDというから結構儲かっている。このように少しでも家計の足しにと始めた投資もあるけれど、上手く行けば月に大体600ドルの利益は固いとか。
朝食やランチを出す店もあり、友人の所は若い従業員を監視するためにスマホでチェックしているというけれど、実は日本のベトナムレストランも一時帰国オーナーがリアルタイムに店の状況を確認できるというのですから恐ろしい。
しかし業界関係者はCaféの経営は思う程簡単ではないとして警告しているという。参入しやすいけれど、少し間違えば廃業の憂き目。余計な所に金を掛けるのは間違いで、客が好みそうな最新デザインの豪華なインテリアも無駄。食材の品質問題もあるし、余計な広告が必要、従業員のレベルに問題があったなど運営や投資に失敗することも多いとある。さらに現金が入るのは良いが、殆どドンブリ勘定という悪しき慣習もあるが、多くのベトナム人に共通する。経理能力が劣っていて損益勘定が分らず、会計処理ができない事に原因がある。
またブランディングに欲が出て、場所や設備に過大投資をするとか、思いもかけない賃金上昇が収益を圧迫する。さらにこの所福利厚生が問題だが、休日を如何に取ることが出来るかも必要。残念ながら多くの新規参入者はこのCaféの事業経験が無い。友人は新聞社に勤務しながらコーヒー会社でも経験を積んできたから産地での買い付けも焙煎から販売も出来る。さらに理念とか経営者なりの哲学や目標があって着実にそれを実現する行動力とか勇気が大事だが、多くの場合ベトナム人に欠けているのが企業観に戦略的思考と行動力なのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生