木材協会は、こういう実態を解かっているからこそ慎重な姿勢を崩してはならないと戒め、また仮に外資系企業が撤退するという事態になれば、業界全体に大きく広範囲に影響が及ぶことを認識、危惧していると伝われます。
先ずはアメリカで市場を確保することが不可欠である。と机上の空論でなく、ビジネス現場から本当の国内ビジネス実態を把握した人のもっともな発言だが、これが正しい見解です。
カシューナッツ協会の副会長は、最近輸出は減少したが依然としてベトナムの主要輸出市場であるとしている。2024年は約11億ドルのカシューナッツを輸出、これは総輸出額の21%になるとしています。ベトナムには60ものバイヤーの中で重要な位置付けをしており、市場規模と需要は不可欠とします。
伝統的な陶磁器産業もアメリカに大きく依存しているといえます。ビンユン省はベトナムでも最も生産量が多く、国道沿いには多くの窯元や販売店が並んでいて、HCM市でもこの製品の販売をしている。また有名な北部のバチャン焼きも実は此処で生産され販売するものが多いのだが、観光客は気がつかない。
実は南部の生産地の収入割合の70%がアメリカという。今回の関税が上がることに関しては6%から16%で、仮に生産者が負担することになっても許容できる範囲であるとしている。この製品はアメリカが主要市場だが、この業界としては競争が殆どないというので余裕を持っている。
野菜・果物の輸出はアメリカが中国に次いで二番目の大きな市場であり、その輸出割合は総輸出額の10%程度。しかし近隣国の鯛、マレーシア、インドなどが大幅な低関税を受けているので痛手を受けるかも知れない。
ベトナム果物野菜輸出協会は、2025年の最初の月には前年同期比で出荷が60%以上も増加していたので、アメリカ市場は大きな可能性があるとして認識したが、今回の状況を受けて市場の多様性に加え、混乱を乗り切るために政府からの支援を求めるとしています。これには税制上の優遇措置、金利の調整、融資期間の延長があるとしている。
これ等、カシューナッツや果物、野菜に関連する業者は、過剰在庫を避けて、関税引き上げに備え最小限にリスクを抑えるため、90日間の猶予期間に輸出を加速する業者があると伝えており、中には30%増えたとしている業者もいる。
・戦略的適応と市場拡大
こうした中で、いくつかの業者は日本、オーストラリア、ヨーロッパなどへの新しい市場の開拓を拡大する必要があるとしています。何時までも翻弄されるより自分たちの力でこれを行なうべきとの意見で、これにはその国の消費者の要求や思考を満たすだけの製品を開発する必要性もあるとしているのです。
例えばカシューナッツの輸出については、10%程しか加工されておらず、企業は新しい設備機械を導入し付加価値を高めて競争力を付けたとしています。
ベトナムでのお土産にこのカシューナッツがある。多くは真空包装されたモノでそのまま食するが、丸くて硬い殻に切れ目を入れて売っている。ひと手間かかるけれどこれが面白い。こうした遊び心を企画に煎れるのも知恵の一つ。
木材会社はより費用効果が高い原材料を調達し、有利な関税コードの資格を得るために製品ラインを再構築。インド、韓国、EUなどの市場での成長を模索している。これはアメリカへの家具などの輸出が平等に課税されている訳では無いというのです。ベトナムは高級家具に適した木材が自国で調達できない。
耐用年数が来たゴムの木と、そのチップで作った集成材。この他は殆ど海外からの輸入であり、中には中部地方などラオスなどから山越えで違法伐採された木材を運んできているのです。これの槍玉に挙げられる可能性もあるのです。
・関税圧力を変化の触媒とみなす
ジリ貧に追い込まれてこそ人間は考え抜き、知恵が生れて進化する。新たしい発想や発明が生まれるのです。麦は踏まれて強くなる、の言葉通りに、逆向に意外と強くなる可能性もある。そこに来て、結束が出来て、対抗することだってある訳で、何時までも言い成りになるものではありません。
ベトナムの各業界の経営者は現在の置かれた状況に対して、内省と改善の絶好の機会ととらえているのです。彼らはどうしようと悩むとか、内向きになるよりも、生産を洗練しより効率的で競争力が持てるようになるとする動きが出てきたと、ゲーム感覚で見ている所もあるいう。
そして与えられた関税の課題が新たに間接的に利益をもたらす可能性があると認識している。これは当時記であるがアメリカのバイヤーが中国の供給元から離れて多様化しているという点を取っても明らかな事実。
決してマイナスだけでなく、捉え方ひとつ。また実際に現場で起きているこの様な事実にしても正確に確認すれば悲観することなどありません。逆に新たな市場では大きな貿易拡大が見込め、生産と利益が得られることも視野に入れるべきです。またそのためにユニークな製品を造る必要があるので、企画力など製品力があがるというプラスの要素が出て来る。こうなるとこの業界にとってはアメリカ、トランプ様サマであり、彼は自滅の道を歩んでいるだけの話です。
・水産物輸出業者はアメリカへの出荷を加速させている
ベトナム主産物輸出生産者協会に拠ると、各企業は5・6月にアメリカへ輸出を急増させる考えで、特に海老とパンガシウスに主力を置いているという。
教会のデータでは2025年度最初の4カ月間の総輸出額は33億ドルに達し、前年比21%の増加だったとします。
アメリカへの輸出はこの期間は15%減少して、1億2050万ドルとなったけれど、これは現地アメリカ側業者が慎重だった方としている。しかし5月には10~15%増える見込みでとあるとしています。
海老は4カ月間で前年同期比30%増、12億7千万ドルで漁種別ではトップ。
また4月は好調で日本、中国、EU向けも15%増となっている。
パンガシウスも6億3270万ドルで、前年同期比9%増えたが、他のカニや軟体魚類なども堅調であったとしています。
協会はベトナムの水産物への高い反ダンピング関税がコストを押し上げており、またトレーサビリティー要件の厳格化や食品安全検査などの技術的障壁も自国業者にとって高いハードルになっていると指摘。ベトナムの水産物輸出状況はこれから大きく変化すると予想されるため、これ等に拠って多方面の代替輸出先に目を向けて市場開拓する必要があるとしています。
別の記事にはベトナムの海老輸出が急増、水産企業はアメリカ向け輸出を関税が上がる期限前に注文を履行するため出荷を加速しているとしています。
ベトナム水産物輸出生産組合では、4月の海老輸出額は3億5千万ドルと推定されるが、これは前年同期比で24%増加となりました。
1月から4月での記録では、輸出総額が13億ドルに達し、これは35%の増加で、ブラックタイガー、1キログラム平均で17,7ドルだったのです。
これは他市場よりも安定しており、この好調な輸出は最南端のカマウ省の企業でも実績として反映。今年第1四半期は前年の同期比で純利益が280万ドルを超えほぼ3倍になったが駆け込み需要による結果で、この先の見通しは不明。
・ベトナムコーヒー価格の上昇 第1四半期に74%もの急騰
国内のコーヒー取引価格と輸出はこの所上昇傾向にあると現地紙が報じている。
コーヒー豆の価格は1キログラム当たり最大で129,00VND(約5ドル)になり、4月末と比較すれば一週間で5,000~6,000VND上昇。今は輸出価格が継続して上がっていると言います。
協会ではベトナムの主力品種であるロブスタ種コーヒーの価格が1トン当たり平均で5,415ドルに達したとあり、4月の上半期には生豆79,163トンを輸出し、4億3,773万ドルを販売した。
これは数量として8,5%増えたけれど、金額的には68,8%も上昇している。この内、ロブスタ種は3億9千万ドル以上、前年同期比では金額で62,3%の上昇とあります。
世界のコーヒー取引所ではその国際価格は貿易摩擦とトランプ関税の影響で、4月前半には下落の傾向にあったのだが、しかしベトナムでは第1四半期に約28億ドルを輸出、これは1トン当たり平均5614ドルとなり輸出量、金額ともに上昇となっている。
この世界価格下落は、世界最大の輸出国ブラジルや他の生産国での天候悪化に拠り期待通りの収穫が出来なかったためであり、コーヒーの供給が充分ではないとベトナムのコーヒー協会では考えている。
しかし5月はブラジルでロブスタ種の収穫期に入り、また翌月からはアラビカ種の収穫が始まる予定となっているので、供給は増えるはずとみています。
価格高騰は筆者が思うのは、これまでベトナム産コーヒー豆は品質的に劣っていたため、他国産の豆のブレンド用として扱われたのです。
ところが現地に進出した日系企業の育成や指導が功を奏し、品質的にはかなり良くなった。また現地で栽培している日本人で農学部出身の人、アメリカから移り住んで農産物を扱うベト僑、有機栽培でコーヒーを作ろうとしている人もいるのだが、こうした人の努力もあって徐々に認知されてきたのではと考えるのです。さらに山を挟んで隣国のラオス、ここでもコーヒーは栽培されているけれど、品質はイマイチの評価。しかし日本企業の支援があってから急に良くなった。そこでこれをベトナムに運んで、ベトナム産に変わるという仕掛けもあります。良くない事ではあるが、何処にもこういう闇の部分に聡い人が居る。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生