現地報に掲載された記事だが、VIVFASTが計画している所では、同社が販売する電気自動車の全国シェアを2025年度は40%にすることを目指しているという。このため2024年度の2倍を販売する強気の計画をしている。
同社は7月11日に、ベトナム国内市場において6月に11,382台のEV車の引き渡しを行ったと業績発表を行いました。内容はVF3モデル3,667台、VF5モデルが3,060台だが、この二つの車種が最も売れているとしており、上半期にVF3が23,083台、VF5は21,812台売れたと報じている。またVF6がベスト3に入っており、6月に1,245台、半期では8,552台、VF7も6月725台、半期の累計で3,586台となっている。この他の車種を入れて上半期の累計が67,569台と過去最高の実績を記録して、年間販売計画の約33%を確保したとしています。
しかしこの数が多いのか少ないのかは、世界のシェアからすれば国内での販売実績に過ぎないが、これからインド、インドネシア、隣国カンボジアへ攻勢を掛けるためにも国内販売で販売台数を積み上げておきたいが、無理をしている。
タイトルにある様に来年は今年の2倍のEVを販売する計画なので、この目標は野心的なのだが、半年が経過しても未だ3分の1に留まっているという事態に経営者として憤懣やるかたなし。売れるのか?との不安要素が付きまとう。
データに拠ると、2025年度の上半期のベトナムでの自動車販売数は254,000台となっており、VIVFASTのシェアは約27%となっている。
同社は6月にハティン省ブンアン経済区に2番目の工場を開設、此処でVF3、ミニオグリーン、バンなど国内外への新車種の生産を手掛ける専門工場として位置付けているという。戦略として生産量を増やすのは世界的にEVの需要が増すとあるけれど、トランプの政策にしろ、ヨーロッパでもガソリンを燃料にするレシプロエンジン車に戻りつつある状況であるのも事実。折角アメリカにEV工場を建設し、販売店を確保したのが先行きはどうなるのか。売れば売るほど赤字体質から抜け出せず、改善しないままの状況は企業として重いのです。
ベトナムはVIVFASTのEVを促進、化石燃料で動く車の制限を行うように首相はハノイの人民委員会にロードマップの作製を命じたとあります。
予定では2026年7月1日から、環状一号線では全てのオートバイの通行が禁止されるとなっています。また2028年1月1日からベルトウェイ1,2号線でガソリン自家用車、2030年からはベルトウェイ3号線でも全面的に拡大される計画となっているが、まさに政府がVIVFASTの後押しをしている格好になっているのは否定できないが、消費者の環境保護への意識が高まっているとして、ハノイなどの大都市でEVへの移行を促すものとする。
同社は現在ハイフォンとハティンの2工場で年産500,000台のEVと、250,000台の電動バイクを生産。売れなければ困るのでこうした政策を打つ訳、というべきか、政府が黙って見過ごす訳に行かない所に来ている。
エコだとか、グリーンとか、カーボンフリーなどの環境汚染に対する市民意識は大切だが、本来は車とは異なった視点で見て行かなければならない筈。
そこでVIVFASTは、ハノイ市域で全面的に(同社の)EVをカバーするということにして、12の金融機関と提携し、ハノイ市民の人には最大90%の借り入れを支援することとし、その金利に付いても3~4%という優遇措置を講じる策に打って出るというのです。愚策か賢策か!見方で分かれるのだが、こういう策が企業単独で出来るというものではあり得ない。銀行にしても足並みを揃えて一企業のためだけに優遇策に応じるという筋合いもありません。
優遇融資をするとしても、ハノイ市民が対象で、ハノイで車のナンバーを登録する購入者のみというのも納得できるものではないはずです。
実際に現地紙が報じているのは、VIVFASTと12行と調印式にあっては、政府の政策と国民への協力と支援の精神に対する、ビジネス界の共同の努力を示す特別なものとしており、一企業への特別な政府のあからさまな支援があることが言外に認められ、銀行への指示か圧力も伺える。しかし表向きは排ガスで年々空気が汚くなるハノイへの策とし、本来暖房のために使用する石炭などの燃料を規制することも並行すべきなので、道理と整合性に欠けるのです。
この策に関し顧客への具体的な支援プログラム内容だが、ガソリン車からEVへの移行促進ため、電気自動車と電動バイク両方へ優遇融資を実施するというかなり柔軟な金融パッケージを用意している。
これに拠ると、VIVFASTト金融グループとが署名した書面では、各銀行は価格の70~90%を、融資期間8年、金利は通常より低く設定して3~4%の分割払いとなる予定。
また電動バイクを購入する、ハノイに永住権または一時滞在権を持つ個人に対しては2つの方法があるし、そのひとつは個人で購入する場合、顧客は代金の20%を払い、残り80%はローンを組み3年以内で払う。またVIVFASTに運営がサポートされている顧客グループでは、10%を支払い、残りの90%は保証付きで3年間借り入れが出来る。即ちVIVFASTを使ってビジネスを行う顧客への優遇策であり、初期投資が無くても良いという訳です。
さらに2025年7月24日から10月24日までに、VIVFASTの電動バイクを購入するハノイの市民は登録料の100%が免除されるというもので、如何に行政がVIVFASTという民間企業に肩入れしているかが分ります。
なぜ北のハノイ、首都だけなのか。疑問に思う人はいます。VIVFASTの工場は企業設立当初からハイフォンに在り、今年新工場が出来たのもハティン省も北部です。
地の利、足掛かりが良いというだけでなく、元々ベトナムには南北問題が存し、南部の人は北を未だに良く思っていません。現在では多くの北からの移住者が居るけれど、戦後のドサクサの渦中に南部に残った北の兵隊(殆ど幹部)から、不動産を盗られるは、家財に貴重品もやられるなど散々な目に遭っているので、殊に60歳以上の人は当事者に当たるため、その多くは決して北の人を信用していない事情がのしかかっているのです。
ある日本企業の実際の話だが、初期の進出では南部のHCM市、北部のハノイ市の両方に企業を設立し、企業名も製品名も異なるという戦略を講じた所もある位です。
また結婚してハノイに暮らしていても、常に帰りたいと話していた南部出身の日本食レストランの経営者が居たほどで、ハノイに行って店に寄れば必ず愚痴をこぼしていました。同じ民族であるけれど、体制に主義主張が異なれば容易に瓦解するのは実に難しい。だから日本の様な転勤を命じられると即座に辞めてしまった、こいいう状況であれば注意が必要です。
ところがVIVFASTは、国民が電気自動車に買い替えが出来、新車を購入する際に選考できるように、2025年9月から「グリーン フェスティバルグリーンカーへのアップグレード」と称して、HCM市と国内の全ての省で開催、同じ金融条件での購入策でイベントを開催する予定となっている。
内燃機関を搭載した自動車やバイクを使用するユーザーは同じような手続きで、迅速にVIVFASTの代理店で購入できるとしているのです。
もはや生産したEV自動車にバイクを余すところなく売りつくしたい。これが本音でなりふり構わず、一企業・一経営者が政府首脳や地方行政を巻き込んで大芝居を打つのだが、表裏一体か官民一体で、筆者から見れば茶番に等しく、民主主義国家では考えられないヤリ過ぎを見るのです。
でなければ、これまでの累積赤字を何とかしたい。何時まで経っても創業者の懐から補填など出来ない。もはやベトナムの工業力と捉える国産車、これ以上の赤字を出すことなど許されない、というのが焦りであり真意ではなかろうか。
此処まで企業を巨大化しグループ化し様々な事業を行っているけれど、矢面に立っているのは創業者であるブオン氏。これだけの事業体を受けられる後継者とか有能な役員が居るのだろうか疑問。
これまで書いた事情に首を傾げるとか、またこの様に企業の見方をしている人も少なからずいるのではないかと思うのだが、如何。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生