HCM市は8月1日から27の路線に新しい電気バスを導入、クリーンで環境に優しい公共交通機関への取り組みをおこなう大きな一歩を踏み出した。
フォンチャン(FUTA)はオレンジ色の車体で主に国内長距離とカンボジアへ国際線を運営しているが、新たに443台を追加したので、HCM市内には計613台の電気バスは走ることになります。これで全バスに対して電気バスは26%強となり、現在運行しているCNG(圧縮天然ガス利用)バス500台と併せると、環境に良いとされるバスはほぼ半分にまで急増する状況になったとあります。だが現時点で2200台以上のバスの内、まだ半数がディーゼルエンジンかガソリンで動いており、出来るだけ早く切り替えたい訳です。
新たに導入したバスには、GPS、車載カメラ、無料Wi-FI、自動アナウンス、キャッシュレス決済サービスなど新機能を搭載、定員は30~60席迄あるが、これは路線等で異なるとする。だが悪評高い車掌の同乗は中止し、全車両ワンマンになるのか。運転手の中にはカラオケ持ち込みで音楽を大きな音量で車内に流す者も居るし、停車ランプや冷房は常に故障したままとか、完全に止まらないで客を乗降させるなど危険行為を平気で行なう運転手も居るが、こうした乗務員の異次元の世界で運転する姿勢を正す教育が先だと思うが、バス乗務員も人手不足とか。当局はサービスの質的強化がやれるのだろうか。
フォンチャンもネットワークを拡大、都市部で騒音とか排ガス規制を行いながら高品質な運行を行うとある。この会社、テトにダラットまで乗ったけれど、乗り心地は良かった。何よりもテトに乗客全員に赤いお年玉袋に500VNDを配ったのだが気持ちの問題、結構親切だった記憶があります。
・HCM市は2030年までに100%のクリーンエネルギーバスに完全移行
市は国の方針に沿って2030年までに排出量を削減し、持続可能な都市交通を促進するための広範囲な取り組みの一環として、市が保有する全てのバスを電気バスかクリーンエネルギー車に変換する計画をしている。
市の計画に拠ると、2025年から新たに開通するバス路線の全てにおいて、電気かCNGなどのクリーン燃料を使用した車両の使用を義務付けるとして、6月1日からの運行に関しては補助金を出すとまで力の入れようなのです。
またこれまでガソリン燃料で動く配達員、バイクタクシーが使用するバイクの電動化計画も立案し、2027年までに推定40万台の内80%・32万台を改造し、残りは2028年度までに完了させること、2029年からはアプリでの配車アプリでガソリンバイクを禁止することを推奨するとした。こうなれば日本企業にとっては戦略を見直さなければならない事態に追い込まれます。
これ等の変換計画は市独自ではなく、建設省が監督する車両排出ガス規制のためのマスタープランによるもので、第一段階は移行への政策、インフラ整備、インセンティブの開発に重点を置き、この対象に市の電気バスの保有数拡大、充電サービスステーションのネットワーク構築が含まれている。
なおHCM市、バリアブンタウ省、ビンユン省の合併で新しく拡張された市域でも計画が反映される予定。第二段階では古い車両の交換への財政支援、電気自動車への切り替えに対してのインセンティブの提供。さらにカンザー地区やコンダオなどの郊外地域では優先的にアクセス出来る態勢を検討する。
・既存の化石燃料を使う自動車の電動化計画
省庁再編前のHCM市には860万台のバイクと100万台を超える自家用車を含む960万台の車両が動いていたのだが、合併後は1100万台以上の車両になると予測されている。政府は電気自動車の普及を政策としているけれど、街の各所に充電基地の整備をしなければならないのに、市内にある充電ネットワークは細分化されその殆どが小規模な民間事業者であるという。電動化への移行を速やかにするためにはこの充電ネットワークを大規模化し、また適切な駐車場と整備等を行う基地が不足しているのが現実。公共インフラ事業も開始されていません。充電には高出力(最大350KW)の急速充電気が必要とされている訳だが、ただでさえ電力不足の供給事情からすると、ピーク時に地域電力網への負担が大きすぎるとされている更なるリスクが排除できないのです。
そこで市は、2028年までに様々な場所で3000箇所の充電やバッテリー交換などの整備を行うステーションの建設を提案しているけれど進まない。
建設省の公共交通管理センターは、事業者と協力して既設のバスターミナルに1570万ドルを投資して19の大型充電ステーションを設置し、47路線を運行する700台のバスにサービスを開始しています。台数が多い自家用車へのサービス開始は遅れている。
さらに市の産業貿易局は電力会社と協力、充電ステーションへ安定した電力の供給を確保すると共に、過負荷のリスクがある地域での電力インフラをアップグレードする約束をしたとあるが、供給不足は変わらず眼くらましです。
この様に電気自動車の普及には、現地の電力事情としない随所に充電と整備等のサービスを行うステーションが必要とされるのだが、余りにも地方自治体の負担が大きい現実があります。政府の重要施策であるのならこのような設備や電力供給への投資を含めて国家予算を投入しなければなかなか前に進まない。
一部では電気自動車を生産するVinがステーションを用意しているが、さて大都市でもこの有様。ならば地方都市やもっと言えば農山村などの高地では、コストが掛かる電動化をどのようにして進められるのでしょうか。
・地下鉄と接続する150台の電気バス
HCM市初の地下鉄の完成で都市交通事情が変化する可能性があります。未だに多くの人が足代わりに利用するバイク。だがHCM市のバスは時間表の明示が無く、いつ来るか分らない、朝は早くからあるけれど、終バスは早ければ19時台には走っていないのが実態です。だからバスに頼れない。
都市交通が未発達のベトナムだが、地下鉄駅と主要な場所とを結ぶ17の路線では電気バス150台が運行している。これはFUTAが運営するが、153人乗りと169人乗りというからかなりの大型です。これ等のバスは住宅地、学校、商業施設と地下鉄駅に停留所があると言い、同社では自前でトゥドック市に2カ所の充電センターを造ったのです。流石民間企業と言いたい。
こうしてバイクを利用しないでも、時間表を市内の勤務先の終業時間に合わせ遅くまで利用でき、深夜にはタクシーが使える様なターミナルを建設して効果的に接続ができる策を積極的に取り入れ、総合的な交通政策革命が必要なのだが海外の都市交通事情の実態を行政は分っていないのでは。
・タンソンニャット空港新ターミナルに新バス路線
市内からタンソンニャット空港行きバスはあるけれど利用者は少ない。乗ったことはあるけれど料金が安いだけ。バックパッカーが多いファン・グー・ラオ通りへゆくのにもタクシーに乗るのです。仮に親族がフライトを利用する際、家族に親類が見送りに行くのはもちろんバイク。これが実情なのです。
HCM市の運輸局はこの空港の新国際線ターミナルT3にバス停を設置して、乗客のサービスを図るため、20の路線を編成することを提案したのです。
建設省とベトナム空港公社、タンソンニャット空港へ送られたこの提案だが、T3が稼働すれば総乗客数が5000万人に拡大する、其処で市がバス路線を利用する乗客のため場所を特定、20路線の路線昇任を求めたとあります。
だがこのT3はVN機とベトジェットの国内運行便、国内最大になるけれど、他社の国内便はシャトルバスでT3へ行くというからややこしい。さらに国際線に何してはまったく考えていないのです。国際線の多くは夜間発着が多いという理由もあるけれど、郊外都市からの空港行き急行バス便も無いわけだからまずは国内便へのアクセス優先、企業や観光客は関係ないけれど、海外へ行く際には自国民であってもタクシーを利用するという頭しかない様です。
なお空港は随分変わったけれど、空港周辺の道路事情にも変化が起きているのです。そこで市内でも最も通行量が多いとされる数編道路の渋滞を緩和し空港へ行く車両の流れをスムーズにするため、長さ4キロの接続道路を開通させるとあります。市中心から僅か20分ほどだったのが、何時しか車が多くなって信号も増え、到着に時間が掛かってヤキモキ。これも解消されるわけです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生