ベトナム農水産ニュース

2025年10月16日(木)

この所の日本の極暑。長く在住して体がすっかり暑さに馴染んだと思っていた筆者でさえ、もはや耐えられないほどの厳しい夏が続いています。
南国特産の果実であったマンゴーはかなり前から九州で作られていたけれど、コーヒーもバナナも栽培が可能になった。もっと驚くのはライチにパパイヤ、タンロンが関東地方でも栽培が可能になったとか。むしろベトナムの方が気候的に安定して栽培に適しているような感じもする。もっともライチはベトナムでも北部が生産地なので、日本のこのところの暑さには参っているとか。

HCM市で開催された2025年度の農林水産物輸出促進会議で報告があった内容であるけれど、ベトナムの農水産物の輸出だが、今年度は700億ドルに達すると報じられています。例年にも増して大幅な増加であり、米や水産物、果物の輸出額が伸びていて好調だとされる。そうなると生産農家は収入が増えるし、企業も利益が拡大しているけれど、トランプ関税がこの先にどう影響してくるのかは全くの未知数。
農水産の輸出に関して、輸出先はアジア圏がトップで約43%と最大。中でも中国が約18%、日本約7%で、日本が急伸して前年比で24%の増加となっている。アメリカは単独で23%と極めて大きく、EU15%の順となっていて、何れも前年よりも増加傾向にあります。

今年度1~7月の米輸出量は約550万トン、前年比では3%強の増加となり、金額は約28億ドルに達したとあります。予想では今年度一年間の全輸出量は880万トンになるともされ、世界二位の地位をキープできるとしている。
ベトナム産米は、前にも書いたが、この所急速に品質が良くなりブランド化が進んできた。この理由は米を研究しに日本に留学生が来て博士号まで取るほど精進した成果が原点と考え、これが連綿として受け継がれてきたと思えます。アメリカで高い評価を得たST24もそうで、ソクチャン省の人が開発した。
日本のコメ不足で日本への輸出も始まっており、筆者は他国の米よりもおいしいのは日本企業が20年以上も前から現地で生産を始め、日本流の生産管理のもとに国内と近隣諸国に輸出していました。さらに日本に留学して米作りなどを研究した人が帰国して、大学の教員になって農家などを指導している訳で、長い間この米を食べていた筆者からすれば、不味い筈などない。だがあれほどベトナム産の食品を輸入しているイオンでも見かけなかったのは何故なのか?米の輸出は現在EUとかアフリカ市場などへ輸出を強化しているけれど、昔の現地米の品質事情を知る者からするとよくぞここまで来た、と思えるのです。
果物輸出については、アメリカが主要な市場であると認識しているとあります。
ベトナムから戦後に移住を余儀なくされた人から、もはや2世3世にも世代が交代しているうえに、アジア系移民が多いアメリカは米に果実も人気があり、さらに輸出が増えると期待されています。特に6~7月に輸出が急増しているのだが、これ等にも20%の関税が掛かるし、現地の価格も上昇しているので、この先はどうなるのか誰にも分らない。
水産物も同様に好調。今年度1~7月における輸出は前年同期比で17%の増加、輸出額は62億ドルにもなります。
全体的にベトナムが進めて来たFTAのお陰もあって、アメリカ、中国、日本などアジア圏が大きな市場になっており、特に海老、パンガシウスなどの養殖物は人気があります。時折問題となった抗生物質の大量投入で輸出先の税関で廃棄されたという問題もあったけれど最近は余り聞かない。この養殖についても筆者は幾度となく現場を訪れたが、良心的な企業はどの様な薬剤を使っているのかもきちんと明示してくれていました。海老は腐敗しやすいので養殖地の近くに加工場があるのが鉄則。一部はHCM市の工場に送って日本向けの海老フライを手作業で加工しているが、これは高速道路の開通やコールドチェーンの整備が進んだため流通機能が良くなったため。昔などは不可能だったのです。

こうしたに輸出が進んでいるけれど将来的に1000億ドルを目標としている。新規開拓に熱心なのは良いことで、後押しするのが各国と締結した貿易協定。
トランプ関税を意識して、商工省ではハラル市場や西のアフリカ諸国を新規に開拓しようとしています。だが厳しいEUを始め検査の厳格な国や地域へ輸出を考えるのであれば、各国の事情と国内での品質管理を研究すべきとしている。

・コーヒー

世界的にコーヒー価格が上昇を続けている。ベトナム産は今年度1~7月期は110万トンを輸出、7,6%の増加。金額は約60億ドルだが、65%と急増。
年間ベースでは70億ドルと予想されているが、ブラジルなど主要生産国での減少が大きく、ベトナム産コーヒーを有利にしているのが事実です。

・カシューナッツ、コショウ

同期でカシューナッツは約2,8億ドルで17%の増加。土産用に殻付きで販売されていて、殻を剥く道具があって楽しい。
コショウは9,9億ドルで30%増と好調。これ等は何れも単位当たりの価格が上昇している結果でもあると云われ。産地はフーコック島産がいいとされ評価は高い。

・ドリアン

中国で人気があったドリアンだが、マレーシア産の方が品質は良いとのことで、一時は苦境に陥った。しかし6月以降にベトナム当局が品質管理を強化、検査を厳格にしたのでこの所は好調。年間では10億ドルが見込まれるとあります。
農業農村開発省・植物防疫局はこれから年末まで、中央高地が栽培のシーズンに入るため輸出が増えると踏み支援策を調整しているとされる。
環境省は輸出用ドリアンの安全管理プロセスを決定、栽培から輸出までの管理メカニズムを発行した。これは初めてとあり、意識が改革されてきたのです。

・キャッサバ

ベトナムはキャッサバの輸出国世界3位なのです。農地は全国で約52万Hr、年産1050万トンといわれる。今年度は価格的に下降したが輸出量は増加、7月まで248万トン、7億6千万ドル。農業農村開発省は2030年に1259万トンに達するとし、このうち85%を加工用として製造に回すが、澱粉、エタノール、麺類に使われる。多くの人は知らないが、粒つぶ、ぷにゅぷにゅはタピオカが原料になっている。今年の輸出額は20億ドルにもなる予測。

・パンガシウス

主にメコン地域で養殖され、現地で加工されているのがパンガシウス。これは輸出の王様とも云われ、年間数十億ドルにもなるが国内での消費は総生産量の僅かに5~7%とか。この理由は殆どが輸出用で、工場で加工された製品は、殆どが切り身の状態なので、実際の魚形を見た外国人は多くありません。
従がってブランド力は低くて、各国向けのパッケージング、国内よりも海外へ加工品として輸出する方が得策。7月時点での輸出は11億ドルを超え、前年同期比で11%増加。アメリカと中国が大の輸出先。淡白な味が好評で日本では白身魚のフライ用に加工、工場を見学したが日本向けにフィッシュ・ボールを製造していたのだが、知らず知らずに口にベトナム産の養殖魚が入っている。この他アジアへはマレーシア、タイ、意外にもブラジル市場が急成長している。

・ライチ

ベトナム産ライチが世界で人気となっている。今年1~6月の輸出額は前年同期比で92%増加、4340万ドル。最大は中国で約3,倍になったがアメリカやEUが急増。白くて上品な甘さは楊貴妃が好んだとされるが、中国産は実はベトナム産が多いのです。生産地は北部バクニン省、ハイフォン市で輸出用に放射線が導入され、輸出増加は品質向上と鮮度が長く維持された成果でもある。
余りは出はコストコが今年に初導入しているのが人気の理由になったとある。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生