ベトナムでの住宅建築

2020年7月11日(土)

ベトナムでの住宅購入について、と言うコラム(昨年1月)の中で、ベトナムでの建築に関して若干触れました。折よく今回、中国メディアで日本の住宅には生活の知恵が見られ、独自の特色があるとの記載をみました。また日本人はなぜ家の床をタイルにしないのか、との疑問のコメントも寄せられていました。
家の造り方が中国とよく似ているベトナムの住宅。そこで内装や設備など概要を少し書いてみます。所変われば自然環境や様々な条件も異なり、その地域に適した住まいの文化が生まれ、建築の方法や材料が形成されるのは必然です。

・日本の施工との違いと起きうる問題

まずは日本の住宅との根本的な違い。これは日本の住宅がほぼ木造であるのに対し、ベトナムでは一部を除いて多くが柱と梁、床スラブが鉄筋コンクリートだという事。壁は構造体ではなく煉瓦の組積。屋根はフラットが多く防水加工。場合によっては陽除けのセメント瓦の屋根をその上に被せることもあります。
HCM市内では3~4階建て一般住宅を多く見かけます。間口3~6m×奥行10~20mほどが大体の標準で、寸胴箱型。生活導線は極めて単純なのです。
これは歴史的に間口で税金が取られたための名残、奥行きが長いと明り取りと風通しの坪庭があるのは日本と同じ理由です。

市内の多くの地域は河川の沖積地であるため、この高さになると杭を打たないと傾きます。杭は現場で造りますが、これは殆どの現場へは搬入が出来ないことが多いため。方法は100㎜角の型枠をつくり、10㎜の丸筋4本を入れて現場練りコンクリートを打設。養生期間は極めて短くて精々3日間。これでは強度が充分出ていませんが、これを1カ所に3本打ちます。
杭長は10mほど、これだと短いため2本を繋ぎます。このため一部に鉄筋出しをしていて電気溶接。杭は油圧で押し込みますが、地盤はかなり柔らかくて太平洋に牛蒡、ス~と面白い様に入って行きます。鉄筋は防水加工されていないため錆び進行してボロボロになるのでは?と思うのですが、先まで考えない。
注意しなければならないのは杭と柱芯がずれていないか。隠れる所は現場写真を全て撮って施主に報告しないとならないが、多分やっていません。
また池や田を埋め立てても圧密できる時間や工法は取っていません。ご近所で土入れが済むと直ぐに建築着工。暫くして傾いた物件を見たことがあります。
土地の形状は必ずしも綺麗な四方形でなく、歪んでいることが多い。境界明示も確実ではなく、侵属されないため境界線上ギリギリに建てます。故に先に建てたもん勝ち。図面とはきっちり合わず若干歪に出来上がっていることが多い。
この辺り良く解らないが、現場合わせで柔軟に対応している感じです。
地中梁を造ると強固で頑丈。浄化槽を1階床下に埋め込みますが、煉瓦積みとモルタル仕上げで作る二槽が多い。ばっ気せずに自然溢水式。汚泥処理が必要
だが時間の経過とともに汚水が染み出る危険性と崩れて来るのが問題。これでは詰まり溢れてしまうが何も仕方がありません。日本企業がプラスティック製浄化槽を製造販売していますが、コスト面でなかなか採用されない。
また受水槽を地下に埋め込むのを見ましたがこれは危険。土圧が掛かって潰されてしまう。もっとも水圧が低いため一旦地上タンクに水を入れ、屋上の貯水タンクへはポンプアップが一般的です。

1階床はモルタル仕上げが多い。コンクリートを土間打ちする場合があるが、湿気が高くてもスラブにはまずしません。1階は洪水対策のため床レベルを上げることがあるので、できなくないが、やらないのは手間とコストのため。
高層住宅の場合、バルコニーがありますが、室内の床とは同一レベル。日本の様に段差を設けたり、排水溝は造ったりしません。また水勾配も採っていないので、風雨が強い時は室内に浸水してきました。
次に柱の建て込み。日本と違い上層階の梁・床スラブは同時にC打ちしません。
柱を建て、その次に上層階の梁、次に床スラブ。これはビルでも同じ。だから柱が曲がっている住宅やビルが多いのです。ポンプ車は使わず、現場練りしたコンクリートをネコ車で運び、バケツをウインチで上げます。怖いのが此処は暑い地域、固くなると水を撒く。ただでさえ設計強度やスランプ値など明確でない上にこんな状況です。
こうして完全なラーメン構造が出来上がれば階段室。蹴上と踏み面は床の施工と一体ではなく、後から煉瓦で作ります。此処には鉄筋は入っていません。
寸法を計算しないので段差が出ているのは随所で見られます。
躯体部分と並行して行うのが、壁の組積工事。つまり外壁・内壁ともに煉瓦を積みます。窓など開口部は開けておきますが、コンクリート壁とは違って予めサッシュ用のインサートは施しません。木製、アルミを問わず後からネジ留め。
通常インサートと鉄筋で溶接か、金物で接合して、隙間をトロ詰めして防水しますが、此処ではしませんから経年劣化で水が入ってくる可能性が高い。さらに鉄なら錆びるとか、木材は腐りますが、後の経年変化までは考慮しない。
壁が出来ると配管や配線はこの煉瓦の壁を斫って入れてモルタル詰め。その上をモルタルで鏝押さえ、さらにプラスターを塗って、最終はペンキ仕上げ。
天井は直仕上げ。二重天井はほぼありません。一部折り上げ天井はありますが、この場合は石膏版を使います。天井高は3Mを越えておりかなり高めです。
なおモルタルは砂が多めの一発仕上げ、目地切りはしません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生