町の電気屋さん奮戦記② 価値観は日本と違う

2020年11月20日(金)

ビジネス社会のムラ社会度は、ローカルになるほどこの傾向は強く出てきます。肥沃で豊穣なメコンデルタに恵まれた南部人は、大らかなのか暑くてやる気が無いのか、学歴の無い連中ほど飽きっぽくハングリーさに欠ける。田舎に帰れば食える。温暖な気候に恵まれ、米は年に3回も採れ、庭には野菜、たわわに実るバナナに鶏の放し飼い、川では魚を釣り放題。うらやましい限り豊かだが、
テト(旧正月)休暇が終わっても会社に出てこない。断れず、家族知人と酒を飲み過ぎで病気とか勝手な言い草。手先が器用で真面目?神話などありません。
友人同士集まってどの会社が良いか悪いかの下馬評、連絡もなく勝手に他社に移ってしまう。給料もらって翌日から来なくなったなどよくある話。もちろん何の断りもありません。最低限の常識や矜持なんて持ち合わせていないから、クビにする方もされる方も互いにあっさりしたもの。楽して儲けたい一念だからいい加減。仕事を何と心得るか、価値観が異なり組織行動は出来ません。
むろん自分のささやかな給料でPC、経理、語学など習いに行く殊勝な心の持ち主も実際大勢います。宝くじを売って学費を稼ぎ、医者になってチョー田舎の地元へ戻った人、学校に行けない子供を無償で教える教師、頼まれた薬品類をベンチェ省の奥地まで届けにいったことがあります。落差は激しい。
大卒人材に囲まれているとVN人の若い人は優秀勤勉と美化しがち。これってチョット勘違い、いや大幅に違うのではというのは在留邦人の酒の席。お偉い先生とか評論家もどきのお伽話と、ワーカーを使い実務をこなす日本人担当者との見解は大きく異なるがこれが本音と実態。かく言うこの優秀な大卒レベルでさえマーケティングとは=セールスの事。それってマーケティングミックスの一部。大きな勘違いをする。

何時ぞやVCCI主催で企業ミドルの研修時。講師のJICA専門家は元大手自動車会社のマーケティング担当。端から専門的な話をするのでマネージャーとおぼしき受講者はアングリで、理解できない。CIとかCCとか、はたまたロゴマーク、セグメント?について日本でのご苦労話。こんな高尚な講義などとても理解できる訳ありません。「先生、もっと基礎の基礎から始めないと無理」といみじくも申し上げました。彼らにするともったいない受講料。現地の事情を知らないで送り込む方の人選も間違っている。CSなんて今や日本では当たり前、パートのおばさんも知っていますが此処では違う。
当初から守ってきたのは単純明快。「時間に遅れるな。約束は守れ。清潔な服を着る。仕事中のタバコ厳禁。養生と後始末を綺麗にしたか」。これだけでも彼らにとっては大変な事。余りの粗末さにズボンや靴もプレゼントしたが無意味。

・ベトナムならでは 電気に纏わるウソのようなエピソードをご披露

  • 「キムラさ~ん!冷蔵庫が冷えないの?」「エアコンから風がでないのですが」これ、ネズミ様の仕業。猫のような大鼠が徘徊し、電線を噛み切ったのです。ショートして煙が出た事もあります!
  • 「エアコンから水漏れがとまらないのですがー」埃が詰まってドレンからのオーバーフロー。早速クリーニングするのですが、出てくるのは真っ黒い水。一年中使うから室外機もこまめに手入れが必要。電気代が大きく違います。
    日本人の製麺屋さんは白い粉のダマが出てくる。
  • 「何か臭うンです」エアコン室外機の中に鳥の巣、卵もありました。大きい鳥が来なくて安全な場所なのでしょう。
  • 「レンジフードが空気を引かない!」これもダクト内に鳥の巣。日本の様に排気口にアールフードやガラリが付いていないため自由に出入り可能です。
  • 「天井扇が反対に回るのです」結線の間違い。大笑い。
  • 突然埋込CLライトがボンという音。C国製電球がオーバーヒートで割れる。
  • はたまた「業務用冷蔵庫の戸車が壊れたけど修理できる?」電気屋だからと無理といえず、ハイハイと駆けつけます。そーです、うちは何でも屋!
  • 「日本から持ってきた炊飯器が壊れたので修理して」 ここ電圧は220V。変圧器を通さないと壊れます。修理は不可能。来る前に現地の常識くらいは勉強してちょうだい。
  • 「洗濯機から水が出なくなったの!」 長年使用で給水口のごみ取り網に泥が詰まっているのです。水質が悪い、日本ではあり得ません。
  • 洗濯層の清掃 分解掃除はできるが、洗濯槽用の洗剤が売られていません。
  • 冷蔵庫内側プラスチックパネルと外側の鋼板が変形。何らかの熱が原因か?これはメーカーの日本人と話をしましたが、さすが日系企業、お取替え。
    これがVN人なら泣き寝入りです。
  • 「日本に帰るので引き取って欲しいものがあるのですが」これだと生活創庫ベトナム店だよ!
  • 極めつけは「電気が来ない」。「停電では?」「近所は灯いていますが」「ブレーカーも落ちていません」「じゃ、行きます」。確認に行くとナ・・何と電線が切られている。電気代の支払いがちょっと遅れただけですが、日本ではあり得ない暴挙で危険。早速繋いで復旧となりますが、電気会社はこんな嫌がらせに近い荒業を平気でするのです。

ありえなーい!という言葉が此処にはありません。みんなあってしかるべき。いつしか駐在日本人も慣れてきて驚かなくなる。ここはベトナム、何かお困りの皆さん、なんでもお受けしましょう。格闘の日々でした。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生