ベトナムの不動産状況とアパート建築

2022年6月28日(火)

COVID-19の感染者が急減し、いよいよ観光客の受け入れも始まったベトナム。
2022年度第1四半期の経済は順調に推移、世界銀行が発表した4月の経済報告書に拠るとベトナムのGDP伸び率は昨年同期比で5%増加したとある。
特に3月に入ってから工業生産高は前年同期比8,5%増加となっており、中でも機械設備、電子製品、繊維製品、靴・履物、飲料などの生産部門はいずれも二桁の成長率だった。これはCOVID-19に拠る感染者が減少傾向にあり、死亡者も極端に減った事情もあるとしています。
さらに輸出入も増加。外国直接投資額の総額も39億ドルとなり、前月からは35,2%の増加。数字をみると外国投資家にとりベトナムは魅力的な投資先だと言う証明になると言えます。

・不動産価格の状況

こんな状況の中、不動産価格はとんでもない価格になっており、1~3月におけるHCM市とハノイ市の新築アパートの販売価格が地場大手不動産販売業者から出されています。これに拠ると、HCM市の価格は首都ハノイ市に比べて42%も上回り大きな乖離が出ているとあります。同社に拠るとHCM市での1㎡当たりの平均販売価格はおよそ6400万VND(約34万円)、すなわち日本流に坪単価に直せば103万円にもなるとんでもない価格となっている。そして前年比でみれば9%上昇したとあります。日本では民間の不動産調査会社があって不動産鑑定士を入れた詳細なデータを発表しています。
この期間、HCM市内での発売戸数は55%と大幅に減少して2166戸。主な販売地域はビンチャン群(39%)、トゥードゥック市(29%)、ビンタン区(22%)に集中したと言う。即ち市内の中心部周辺は広い敷地が無く仮にあったとしても商業ビルなどに供されるし、また基本的に民間が保有していることはほぼ無いと考えるのが正解。この状況は今後も続くし、こうした市中心部からほぼ10数キロ圏内でもアパート建設用地は無くなる可能性が高いのです。

こうなると兼ねてから私が述べている通り市内で注目できる唯一の場所は9区しかない。また南のニャーベー地区や北東部のクチ辺りになってしまう。
しかしクチは遠くて交通の利便性が無く通勤はかなりキツイ。カンボジアとの国境近くなので高速道路建設計画はあるがバイクの通行はできません。
ニャーベーはフェリー起点であったが、10年ほど前からすると信じられない位大きく変化しています。ただしこの辺りは地盤が極めて弱い。かつて新地区として分かれた7区を見れば判るが元はジャングル。PMH地区が参考になり得るが、これは開発当初から約10年間居住し、その発展をつぶさに見て来た私から見て、さて大規模開発に拠る街作りが望めるかと言えば、それは難しいものがあります。
*このクチ、ニャーベーに関しては別稿で書き加える事にします。

私はPMHで二期目のアパートを購入したが、この当時周囲はまだジャングルのまま。道路さえなく荒れたままの土地がいくらでもありました。私がもし現在なお保有していたとしてその価格を算出すると8~10倍にもなっていると知人が言うが、もうこんな魔法は通用しません。
またこれまでアパートはお金持ちが買っていて、プール付きなどの特徴を備えているが、ほぼ年中使えるにしても管理費は並ではありません。
日本でも昔はこのような付加価値を付けた物件が好まれたが、もはや無駄の象徴でしかない。一部の人しか利用できないなら不満が出て来る必然です。

ハノイはと言えば、1㎡当たり4500万VND(約24万円)で、5%上昇したと報告されています。販売戸数は36%増の4904戸とあるが、建設地域は市西部に集中していると言う。
この価格が大きく乖離した理由は、地方から人の流入が止まらず、HCM市は新規開発案件に関して抑制気味。正直これ以上増えて欲しくないのが本音です。HCM市中心部は産業も商業・金融、サービス産業に高等教育など全て集まっている。先記のようにもはや住宅に供せられる土地は見当たらないのが現実。
しかしこれから2年間、計画では約5万戸の建設が予定されているとするが、地下鉄1号線上の隣接省近くになると推測します。
HCM市も、ハノイ市でもどんどん郊外に行かなければ買えなくなる。こんな状況が見えてきます。

・建築に関して 建築性能は上達したがまだまだ

前回のコラムに、私が居たアパートでは窓から風や雨が侵入することを書きました。そしてこの原因に中国製サッシを使っているとしました。確かに気密性は低いが、施工上での問題ではバルコニーから1m離れた部屋内にまで雨水が入ってくるのはなぜか?この理由に関して若干説明を加えます。
部屋とバルコニーは同じレベルで床スラブのコンクリートを打設していること。
バルコニーは水勾配をとってなく、排水溝も予め切らず小手押さえもしません。
サッュの取り付け方法も、床スラブにメスの部分をインサートして枠を取り付けネジで浅く締めてありました。こうなると段々ネジが錆びてきます。さらに防水施工などはしていない。これでは雨風や砂埃が入ってくるのは当然。
窓となると壁は煉瓦造なので容易に簡単にネジが入るし、低中層でも面台や雨庇は造りません。スコールの雨季の雨風の強さは時として嵐か台風並み。こういう自然条件なのに仕様はかなり粗末と言える。しかしアジアで多く使われる(レンコン)煉瓦、この大きな役割は空気層で熱を遮断し結露も防ぐ。室内が意外と涼しく感じるのはこのお蔭なのだが、耐震性はなく、音も遮断できない。
日本では部屋内に水が入らない様レベルを工夫して水返しをしてあり、根本的にサッシュの取り付け方も違うのです。さらにモルタル詰めをしてコーキング(シーリング)を施しているので安全。もっともアルミサッシは高価で使わず、一般民家などは未だに鉄製で、鍛冶屋が注文に応じて製作しています。

しかし、これは一般の民家でも同じ。また多くの戸建て住宅の場合、屋上に出られるようになっているが、これもドアの取り付け法に変わりはなく大変な目にあったことがあります。
ある強烈な雨の日、日本人宅での出来事だった。余りの豪雨で屋上は排水限度を超え、排水口から溢水してしまった。
こうなると水は高き所から低きに流れる通り、階段を伝って3階、2階、1階ともう滝の如く水が落ちてきて、部屋中水攻め。マンの悪いことに書籍が積んであり、此処にまともに被ったために紙がぐちゃぐちゃ。もう読めたものでは無い。また水に弱いベトナム木工家具。パーティクルボードなので完全アウト。水を吸って使い物にならなくなりました。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生