海外不動産で失敗 よくある原因

2022年6月1日(水)

タイトルにある記事がネットに掲載されていました。海外とはいえ特に新興国で起きる不動産投資問題を書きたかった様です。
海外で不動庵を購入するのは多くの場合、居住用ではなく投資。従って日本と異なってリスクはあると言うがそれは何なのかである。
其処には投資した物件はプレビルド方式が一般的と書いてあります。すなわち物件が建設中に代金の一部を支払う事で新興国では主流と書いてある。
これを見ると日本だって同じで、殆どの物件は建設中に契約し、一般的にその方法は契約時に30%が殆ど。金額の内訳は手付金20%、内金10%となっていて、これは法的に解約手付金の性格上そうなっているだけの話。
建物完成時に残金を支払うこととなっているが、多くの購入者は住宅ローンを使うため、それまでに融資機関で金銭消費貸借契約などを済ませておき、これに伴う各種手続きが須らく完了して物件の引き渡しを受けるのです。
ところがこの記事には、成長が著しい新興国では小規模ディベロッパーが倒産してプロジェクトが頓挫。既に支払ったお金は戻ってこないことが珍しくなく、(購入者は)好立地である事から、企業規模や実績などを考慮せずに投資するケースがあると書いている。
この他にも特定の国の事情だけを書いているのではなく一般論に終始しているので殆ど無意味なので割愛するが、要は投資目的で賃貸を前提にしている書き方になっているのでプレビルド(未完成状態)物件は完成が伸びる間に価格が上ればキャピタルゲインが得られるが、家賃収入があるまで時間が掛るために完成物件の方が良いと言いたげ。だが実際はそう簡単な話ではない。
また自信が無ければ現地の日系企業が参加しているプロジェクト限る。諸条件で不動産価値が下がることもあるとか、条件面を比較検討して判断する必要があるとする。そしてそのリスクを許容できることが投資の第一歩だとするが、片や法律や慣習も異なるので個人では難しい。従って現地に精通した仲介会社が必要だと、大して参考にならない話を羅列してありました。
ベトナムの不動産購入に関してはこれまでに外国人が購入する場合に法的条件を書いております。また日系企業がJVプロジェクトを幾つかの持っていて、現地の人にもかなり好評で建築に関しても評判がいいのでよく売れていることも書きました。さらにこれまでの経緯にも触れ、社会主義国での特殊な状況下にあるが、個人的には殆どの日系開発企業は出遅れと感想も述べています。
これ等の事は現地にいなければ全く分かる事ではありません。
では何が特に問題なのか、改めて見てみましょう。

・建物に関して

記事にはプレビルドとあるが、普通。だが資金的に余裕がない業者は多い。
従って現金は早く欲しいので此処でも着工して直ぐに契約に至ることは多いのです。しかし土地価格が急速に変動(上がる)するので、余力があれば遅らせて販売価格を上げる場合もありえる。
工期遵守は全くできない。1~2カ月なんてものでは無く、数カ月なんてザラ。
おまけに施工精度は高くないことを覚悟すべきで、日本の様な耐震構造でなく仕様も違う事を知らなくてはいけません。
また日本と異なり、殆どはスケルトンでの販売。こうなると水回りは動かせないが、設備、内装は販売価格には含まれていないので、この工事費は別途必要。
家具・什器、電気製品から食器に至るまでです。いわゆるサービスアパート形式でないと外国人には貸せない。日本の様に部屋だけ貸すと言うのはローカル顧客。さらにこれを賃貸するのが結構難しく、個人では絶対に出来ないと言っていい位なので、然るべき業者に委託するべきです。

・立地

駐在員であっても環境を知ることは難しい。長く住んでも会社と家との往復だけで分かる訳がありません。例え一週間いて、車で回っても分らない。まして建築、不動産専門家ではないから期待しても無理。はっきり言って自己責任。相手が信用できる人かも運といえよう。大体現地の不動産仲介屋なんて仕事を知らず、知識も経験もない連中ばかり。仕事で付き合ったからこそ分かるけど本当の話なのです。
随分前から日本のディベロッパーは来た。案内すると言っても彼らは所詮素人、結構地方から来た人が多いので聞かれても正確には答えられない。これが実態。
結局は早く来ただけで成果は無かった。誰も真の現地を知らなかっただけ。
ハワイなどで別荘を持つのが夢、金があれば厭わない。のとは違い、目的は何なのか、まずこれが第一。アドバイスは、何も無ければやめる事。

・価格高騰

VNEXOPRESSは2021年第4四半期に、南部の不動産価格は28,8%上昇して1㎡2955ドルになったと報道。HCM市は6500ドルだったとあります。
私が買った7区のPMHマンション。購入した時は陸の孤島で何もなかったが、プロジェクト概要を開発業者(仕事上付き合いがあった台湾人、因みに彼は3物件持っていた。)から聞いて、45000ドルで購入。これを7年後に3倍で売り抜けたが、譲渡税などは一切なし。こんな芸当は今できません。
また近くの工業団地でも事情は同じ。誰も見向きしないうちに手を打つ事だが素人ができるという訳ではありません。
今、未だ持っていれば計算上は6倍以上にもなっていた皮算用。

・固定資産税

ありません。しかし当局は土地価格高騰を抑えるため、固定資産税を検討しているとあります。もちろん業者を始め誰もが反対。
不動産、経済アナリストは価格高騰や投機が進む中で課税強化を支持という。
一般市民は買えなくなっている程、ばかげた異常価格なのが現状。不動産価格をどうしたいのか、本気なのかと訝ります。先進国の経験を検討すれば様々な案は出て来る筈だが、2度もあったバブルを見過ごしているだけの様に映る。
土地は表向き人民の物で、国が管理しているというのが建前。もはや社会主義国ではありません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生