2022年 インフレ目標達成へ?

2022年8月12日(金)

ベトナム国家銀行は今年のインフレ目標を4%としているが、HSBC・香港上海銀行は達成できると見ています。最新の報告で3,7%と若干の差はあるが、各金融機関も東南アジア諸国よりもリスクは低く、大きな懸念材料にはならないとしています。
このベトナムのインフレ圧力は何かだが、考えられる要因は先ず国内需要の上昇であり、今後2年間はCOVID-19による350兆VND(約1兆9500億円)規模の経済回復策が基本的な物価を押し上げ、確実にインフレ状態となる。
また最も顕著なのは、燃料価格の急上昇。ベトナムは産油国であるが、石油類やガソリンの多くは輸入に頼っているため、世界的な急騰ではあるが、鉄鋼、肥料、石炭と言う製品にまで価格上昇の影響が及び、インフレに拍車をかける。
そしてサプライチェーンの混乱。ベトナムは原材料の多くを、また生産に必要な精密部品を自国では製造することができないため、その多くを輸入に依存している。この調達コスト上昇が、製造や事業コストの上昇となり商品価格に転嫁せざるを得ない。そして各国に供給していた製品が止まることになれば混乱が生じる事が懸念される。
国家金融監視監督情報センターでは、今年第1四半期のインフレ率は平均2~2,2%上昇したと試算するが、さらにこのような要因でインフレ率はあがるとしています。
また財務省はベトナム一国の問題ではなく、世界的傾向であるが注意深く監視する必要があるとしている。

・既に始まっている物価上昇例

建設省が発表した今年第1四半期の住宅と不動産価格レポート。これに拠ると各地の集合住宅価格は前年末より平均3%上昇。ハノイでは4~5%、HCM市で1~2%となっているが、こうした大都市での平均価格は2500万VND(約14万円)、日本流なら坪単価462千円と、とんでもなく高価。50㎡の2DKが900万円、これは大学卒30歳台サラリーマンが月額10万円として飲まず食わずで、計算上7,5年分となる。
物件は地域で異なるため、解り易く私が居た7区のアパートを例にとると約99㎡だが、現在この物件の総額は60億7500万VND(約3400万円)にも上がっています。
この間のインフレとかVND対ドル価値を計算すればややこしくなるので、単純に保有していれば5百万円程で購入したので約7倍になったという事になる。

(公立学校と大学授業料の大幅上昇)
HCM市の公立学校の授業料が平均5倍になったとのニュースが報じられ、これまで保育園、幼稚園、中高校(小学校や無料)の月額6万VND(330円)が、都市部で30万VND(1680円)、農村部で幼稚園・中学10万VND(560円)、保育園12万VND(670円)、高校20万VND(1120円程度)になる。
これは父兄にとって衝撃パンチ。これまで低く抑えていたが、教育機会均等だとかで大幅に値上げをしたと煙に巻く。
因みにインターナショナル校はHCM市内に14校あり、これは学校によって差はあるが、年間5億~7億5千万VND(約280万円~1350万円)と比較も出来ない高額。
*食費、教科書、交通費、諸経費などは別途必要。
またジン・ニュースによると多くの大学でも一斉に値上げラッシュ、20~30%とある。
高名なハノイ国家大学。2022~23年度は4200万VND(約236千円)、23~24年度、24~25年度に夫々200万VND(約11200円)ずつ上って行く。同校は21年度3500万VNDであったので24%の値上げとなる。
過去の記憶では20年程前には200万VND(当時は13800円程度)だったので、時の流れとともに全てが10~20倍になっているのです。

(ガソリン価格の急騰)
6月1日、ガソリン価格が最高値に達したと報道。R95ガソリンが1L・31,570VND(約177円)にもなり、日本と変わらない。これは20年前の4300VND(約28円)から7倍の値上がり。他の混合ガソリン、軽油、灯油、重油なども5%強アップしている。
同じ油でも食用油。1Lあたりで今年初めからすると50%、2年前からだと2倍に高騰しており過去最高ネとなっている。よく使用されるひまわり油や玄米油もほぼ同様に上昇、消費者のネ(音)も上がっている。またパーム油など実に2年間からでは4倍となっており、世界の3分の1を占めるインドネシアの輸出禁止が大きな影響を与えています。

(ビールが値上げ)
ウクライナ紛争で原材料が入らなくなった。このため今年4月から15~30%値上げする。また来年からの物品税改正があればさらに値が上がるとしています。ビアホイで簡単にはモッ・ハイ・バーと行かなくなる懸念が。日本でも333など上がるかな?

(飼料も上がる)
家畜の飼料が上昇を続けている。このため畜養業者が大きな損失を抱える事になる。これは20年後半から14回目にもなり、急速に需要が増えてきた和牛も、他の肉類も同じ傾向。とすればハム、ソーセージなど加工品も上がる可能性が高い。因みに物価の優等生卵も日本以上の価格に。

原材料、エネルギーとなれば輸送コストに影響して、さらに包装費と目白押し。企業も困るが、給料の伸びに比例せず消費者はため息。何を削ればいい?

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生