・経済回復を促進 各産業で明るさが出ているが
今年のGDP予測成長率は5,3%~6,5%になる見通し。これはCOVID-19の発生前に比べて下回るものの、ビジネス環境指数が12ポイント上昇していることを踏まえ、ベトナムの経済バランスが確保されているとされ、今後の成長は明るいとみられている。だがあくまでも数字上での推論でしかない。
そこでベトナムの経済専門家は、政府が各国との貿易活動を回復するため短期、中期、長期的な政策を持たなければならないとしています。先ずは短期的にはCOVID-19の収束を見計らって公共投資を実施、また民間投資を積極誘致する、疲弊した企業を支援して、これに拠って社会経済の開発を促進するとしている。
また今年のインフレ率はADBなどの銀行筋、海外機関の予測に拠ると昨年の2倍になる可能性を指摘しているため、インフレ率を4%に抑えると言う目標を政府は強く持つべきだと課題を突き付けています。
経済評論家の一人で元統計総局長のラム氏は、目標の達成は可能だが、政府は行政手続きの簡素化や供給源の多様化、貿易の円滑化、原材料の主体的調達、経済の独立性・自立性向上、金融・通貨政策の柔軟な運営などに取り組む一方、産業界も生産の促進と供給、物流を確保しなければならないと述べている。
経済の最前線に居た人がベトナムの経済や産業、企業を観て、分析してきた目からの鋭い指摘であり、自国のマクロ経済の弱点を理解していると考えます。
具体的な各論には触れていないが、理屈っぽく議論好きなベトナム人にしては正鵠を得るもので、いみじくも元経済部局トップの見解。数字に表れない実態を政権は真摯に受け止められるのか。海外からの投資で成長してきたベトナム。これを未だに拡大しようとし、自助努力に欠けている痛い所を突かれているが、理解し方向転換できるのかは甚だ疑問。曲がり角に来ているのかもしれません。
これまで幾度となく筆者や現地で事業に携わる人達誰もが感じている問題あるあるだが、しかし抜けているものがあって、社員・従業員の育成教育や(P8に別項目で記載)、物つくりを担う職人の育成という人の問題、ビジネスで取り分けグローバルな取り組みと、技術開発などR&Dの視点に欠けているのです。
一向に変わらない構造的な産業と経済問題、実際に成長してきたのはここ僅か10年程のこと。浮かれることなく、これを真正面から取り組み政府や産業界が本気になって変えようとする気概があるのでしょうか。
・2030年までの輸出入戦略 成長の質向上を持続性の重視
政府は2021年~2030年の輸出入戦略を承認しました。これには地方と関連部局の役割や責任を定め、地方の潜在力を活用することを目指しています。
また輸出入の継続的持続と均衡を図り、自国製品の質的向上とブランド競争力の向上を図るとしているが、果たしてシナリオ通りに行くのだろうか。
目標値は2021年~2025年は平均8~9%、2026年~2030年に5~6%に置いているが、現在の世界情勢から推測した場合、紛争、関税障壁に貿易摩擦や保護貿易に拠り予測が不可能となる見通しもある。それからすると決して低い目標値ではないが、問題は持続性の確保だとしています。
商工省輸出入局はこれに関連し、国内は新しい発展段階にありイノベーション、グリーン成長、デジタル経済、循環型経済を含む迅速で持続的な開発への需要が高まっているとしています。「持続」という言葉が大好きで頻繁に出て来る。また2011年~2020年の10年間でベトナムの輸出入は多大な成果を収めた。しかし競争力の高い製品を活用できておらず、また科学技術や高い管理能力、優れた労働力を活かし競争力の高い製品を造り出すことが出来ていない。そこで新しい戦略では質的向上と持続性を重視する必要があるとしています。さらにこれまで締結した自由貿易協定がもたらすチャンスを活用し、輸出入の優先課題と活動を促進する。と具体性がなく良く解らない話をしている。
しかしこれは自国にとって都合のいい解釈。表面的な数字上ではその通りだが、先の項にある通りラム氏の見解とは差があり、実態とかけ離れているのです。要は自国の製品は競争力やブランド力がない。輸出する製品の70%以上は進出海外企業の製品に頼らざるを得ない現在の実態を吐露しているのに過ぎません。
・女性企業家が奮闘
マスターカードの発表では、第5回女性起業家インデックスでベトナムの女性起業家がCOVID-19の影響から立ち直ろうとしていると報告されました。同社が65経済圏で、これは女性の労働力の82,4%に相当するが、その2年間に渡る調査結果。
この中でベトナムを含む東南アジアは女性進出の妨げになる社会文化や教育機会の欠如にも関らず、女性起業家が躍進しているとあります。
ベトナム女性の労働参加率は69,3%に達し、世界のトップレベルにあるとして女性起業家を応援することで経済が回復するように、政府などと密接に協力して行くことを強調したとベトナムニュースライナーが報じています。
確かにHCM市にあるベトナム人が主催するビジネス研究会でも、若い女性の企業家が何人かいて毎回参加していました。「これ、私の会社の新製品!」と貰った事もあるが意欲のある女性は確かに多い。私の周りにも本業を続けながら新しい仕事に挑戦し目標に向けて確実に歩を進めている人が居ます。しかも子供を育てながらなので、大変なことには違いないが、ベトナム女性の度胸とチャレンジ精神は男性以上。
同社の「2020年の管理職女性の指数」ではベトナムは調査対象である58ヵ国中で25位にランクされています。ただ前回に比べ7位の下落。どこに原因があるのか。
さらに国内全企業の内、女性社長は26,5%にもなり高評価、女性管理職の割合と働く女性の比率の高さは調査した58国中の総合9位にランク。しかし作業環境は44位とかなり低いし、格差も激しく改善の余地があると厳しい指摘があります。
またアメリカの大手会計事務所の調査でも、女性経営幹部に関する最新調査によるとベトナムは上級管理職に占める女性の割合36%、フィリピン(37.46%)に次ぐアジア2位。だがキャリア開発機会や人脈形成の機会の欠如、親や家族の世話の多さはこの国の現実、世界標準から見れば低いポイントに表れている。
日本はと言えば、平均8,9%。依然として低いが2021年に最高を更新したけれど、政府目標の30%からは、これを超える企業は8,6%と、女性登用の道程は険しく、ほぼ進まず、韓国の半分。この原因は三歩下がってなどとする男性上位の考え方や、育児なの壁が越えられず、埋もれたままに高い能力を無駄にしている現状がある。また女性従業員の割合は26,5%、女性役員は11,8%と若干の伸びで終始。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生