ツバメが海で海藻を採って来て、唾液と混ぜて造った白い糸状のものが巣です。
中国ではツバメの巣を使った高級料理が人気。当然だが中国は世界一の消費国。しかしこれは中国国内で採取された純国産品ではありません。
であれば何処から輸入するのか。最も多いのはマレーシアで、インドネシア、タイ、4番目に来るのがベトナムです。
中国が輸入するツバメの巣は正規ルートで2019年に180トン、2020年220トン、2021年は300トンへと急増しており、マレーシアの輸出は金額ベースで5億ドルを超えているという。これはあくまでも通関した量、人気は高まる一方で消費は今後も増加傾向にあるというのです。
ツバメの巣は計算上1トン当たり約380万ドルもの価値があり、僅か10gでおよそ38ドルもするという貴重品です。
ベトナム政府に拠ると遅くても9月には議定書が発効し、正規の貿易ルートで輸出が始まるという。こうなると年間数億ドル規模でツバメの巣が中国へ輸出されることになり、輸出される量は、中国が輸入する一年間の規模に匹敵する可能性があります。中国は統計上でツバメの巣輸入が一挙倍増し、輸入国1位にベトナムがなる公算は大きい。ベトナムにとっても中国向けの輸出高が増え、圧倒的に貿易赤字を喰らっている中国に、一矢報いる効果があります。
数億ドル規模での輸出が始まるということはこれまでどうしていたのか?
即ち税関を通さず自由売買していた訳で、統計など単なる数字上のまやかしに過ぎません。
過去にはベトナムと中国国境で密輸していた中国人のグループがベトナム公安に逮捕され、この密輸総額が当時の金額で7兆VND(約300万ドル)だったとあるがそれ程魅力のある儲かる品でした。
先般ベトナムから旧知の会社社長が実に2年半ぶりに来日。10日間で日本の取引先を訪問する計画で、久しぶりに京都で宿泊。この際に土産に戴いたのがこのツバメの巣の食品。こんな重たい物を日本にわざわざ持参してご苦労な事と思いながら箱を空けて見るとこれまでと同じ製品。ところが日本語での表記があって実は日本の商社が輸入したものだったのです。と言っても恐らく在住ベトナム人経営の企業と読み取れ、調べてみるとHPにも出ている。
こういうものも輸入しているのかと感心したが、ベトナム産の食品類が手軽に購入できるのは大いに歓迎する所です。
確かに日本在住ベトナム人は増えている。しかも留学生や技能実習生ではなく高等教育機関を卒業し、そのまま残り仕事をしている人が増えている。自身で事業を起こした人も増え、需要も高くなっているのだから販売していても当然。こんなところにもビジネスでの変化が認められます。
ベトナムにこのツバメの巣・健康ドリンクがあり、鈍い金色のカンにNuoc Yen・BIRD NESTと書かれた、砂糖を溶かしたような甘ったるい飲み物があります。
わずかに入っている白い糸状のもの、これがツバメの巣の正体だが、果たして効き目があるのか?確かに南部の人は甘いものが大好き。年中暑くエネルギーを消耗するためこれ一本でファイト一発、元気百倍。これに比べて戴いた品は量が多くて食べ応えがある。
ツバメの巣と言えば、テレビ番組に出て来るのが北部にある海からそそり立つ大岩壁。この漆黒の洞窟の中にある急峻な崖に竹で造った梯子を掛け、僅かの灯を頼りに素足で何十メートルも登って行き、腰にぶら下げた籠に入れる危険を伴う作業。これまで何人もの村人がバランスを崩し、足を踏み外して墜落。大怪我をするか、命を落としていると、ナレーションがはいる。此処までして採集するのか!なんて思っている人が殆どでしょう。
しかし実際はそうではありません。
かつては危険を承知して採集したが、こんなことで何百トンも採れるはずなどあり得ない。実はほとんどが養殖、と聞けばビックリするだろうがベトナムにこのツバメの飼育施設が全国で2200カ所を超えていて、その年間生産量は120トン。金額は何と4億5千万ドル相当というから驚きです。
この燕はアナツバメといって東南アジア一帯に生息する。HCM市でローカル事業をしていた当時、近所のとある一軒家。海からは遠く、周りには何もないごく普通の住宅だが実はツバメの巣の養殖に使われていたのです。HCM市で何と300軒が生業にしているが、これに関する法律はなく自由。
だが街での飼育に近所から衛生上に問題があるとか、ウイルスを伝播させるのではなどの問題を指摘、法規制が検討されました。
ところが養殖と称される中に紛い物も混じっている。市場などで売られている物は白くて綺麗だが始めからそうではありません。汚れや色が付いていて綺麗ではない。これを水や油で汚れを取る。これだけなら普通の作業だが、さらに白く見せるために漂白する。また全てが鳥の巣の形をしているわけではなく、植物などを使って編み込み如何にも本物らしく整形している。こうすると見栄えが良く高く売れるけれど素人は気が付かない。
何処でも同じことをしているが、日本でも脚の折れた高級松葉蟹を他の蟹の脚をくっつけて高く売るのと同じ手法。考えることは一緒です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生