近代的小売り形態とコンビニエンス・ストア

2023年1月18日(水)

HCM市一区にCOOPマートが出来たのが確か1997年ごろだったと思う。だが日本のC0OPとは全く異なっていて、法的な意味合いはないが、日本のCOOPから支援はあって従業員を日本に派遣して研修したことも聞く。
しかし出資金を払うが、年度末決算をもとに幾ばくかの配当が貰え、誕生日とテトにはクッキー缶などのプレゼントがありました。
次第に店舗が拡大していったものの従業員は単なる販売員、管理職も小売業界に携わる者としての知識、自覚など全く見られない。冷凍ケースの温度管理が出来ず食品がとけている、野菜などは市場と同じ販売方法だが傷んだものまで混じっている、魚類は新鮮ではなく目がトロッとなっていて生臭い等々。値札の金額とレシートに印字された金額が異なっても謝りもせず言い訳ばかり。
また納入業者にはしっかり袖の下を要求する。加工品などPB商品を造るだけのノウハウ、根本的に戦略が見られないなど「近代的」と言えない状況でした。

この他、イオンにM&AされたCitiMart、ハノイから二店ほど出店したが敢無く撤退したハノイマートもあったけれど、どんぐりの背比べで変わらなかった。
これ等はロッテマートやイオン、フランスのAUCHANが運営するBigC、ドイツのMETROなどに全ての面で後塵を拝していました。いまはCOOPマートが残り地方にまで勢力を拡大、地場企業が勢力地図を書き換えようとしています。
ベトナムでスーパーマーケットをSieuThi(超市)というがこれは中国語が語源ゆえのこと。ベトナムでは事業(床)面積、販売商品数によって1級から3級まで分類され、事業面積が10000㎡を超える場合をショッピングセンター(Trnug Tam Thuong Mai=商業中心)と大きく分けています。これも1~3級まで規模によって分類されるが、特に駐車場の広さが求められる。
また同一施設内にコンプレックスとして、映画館やボーリング場などの施設やテナントが入っている場合も同じだがあえてショッピングモールと呼んでいる。
これ等は全て商工省の検査と指導が行われ、法的条件に照らしてこれらの名称を付けることが出来るが、30000㎡を超える大規模施設もあります。

現在の勢力は、HCM市を中心とするCOOPマートが全国で128店舗。ハノイ市がメインのWinマート(注)123店舗。同+地方のSakucoが36店舗、Megaマーケット(旧Metro)が25店舗。ハノイ+地方のLanchiマート24店舗。
ようやくイオン(Citiマート含む)がHCM市を主に17店舗。BigC(タイ系資本の傘下になって)12店舗などとなっています。
理解するのは簡単ではないが、南部HCM市を中心とする、北部のハノイ市を中心とするという表現。先のハノイマートのHCM市撤退、またCitiマートのハノイ撤退など、南北で夫々水が合わないなど深い事情で再編成が起きたが、ある意味で関西系、関東系という大きな分類が日本でもあるのと共通します。
また今後も再編成や事業の売買などが起きる可能性が無いとも限りません。

(注)Winマートとは
今や国産車!?を製造するVinグループ。経営資源を集約するためスーパーVinマートとミニスーパーVinマート+を運営するVincommerceを、インスタント麺製造などの大手食品Massanに売却しました。Massanは売り上げ至上主義のVinから買い受けたものの利益が出ていない赤字店が多く、これを整理して再出発したのが現Winマート。それくらい地場小売業には小売に対する経営戦略が無く人材も育っていなかったという未熟さがもろに表面化しました。
因みにVinとMassanの社長はロシア留学組。ベトナムで事業に成功した者同士の強力なコネクション。こういう事情が背景にあったというのが真相です。
また西側に留学した人達のIT事業も活発、しかも海外進出組みも出て来た。

・コンビニエンス・ストア

ベトナムに初進出したコンビニエンス・ストアはファミリーマートのはずで、それはかれこれ30年ほど前になるかと思います。記憶ではこの進出に関してセゾングループ社内報に載っており、いよいよ海外へ出るか!と思ったもの。
だがHCM市ではなく首都ハノイ。本部としては当然のことながら考えたのは商都であるHCM市、しかしこれは時の政府から認められなかったようです。
正確には何時だったか覚えていないが、ハノイに出店したものの僅かに数店だったし、間もなく撤退しているのはやむを得ないことかも知れません。
完全な時期の見誤り。本格的なスーパーマーケットさえなかった時代に、まして小売りの発展段階からみて後のコンビニが先とは普通では考えられません。
これにはどのような戦略があったか、あるいは現地の小売事情が読めていなかったのかなど、この時点で大した資料は無く情報不足は確かにあるが、時間をかけてでも現地事情の調査を十分やれなかったのか疑問が残ります。
しかしHCM市で仕切り直してから一時は破竹の勢いに感じたのだが、合弁先との問題から、またもやゼロ発進を余儀なくされているのです。
こういう所に地場企業とのJVに怖さが隠れている。即ち相手は店舗戦略や企画力に商品力、ノウハウが全くない。
一方F社には当時単独で出店できなかったため、嫌でも合弁策を採らなければならない。しかし門前の小僧経を読むが如く、時が経てば曲りなりにでもこれならやれる!と付け焼刃になる訳。こうした事で多くの開拓した店舗を失ったにもかかわらず、一定の支持を得てぶり返したのです。
ところがこの間にイオンの関連が現地のコーヒー企業とJVを組んだがものの見事に失敗。これも相手を過大評価していたからだが、どう考えても理解不能。
さらに韓国系、シンガポール系も進出してきたがこのShop&Goは2019年に撤退している。競争は激化しているのに、このところ急速に店舗を増やしているのが地場系です。これは時流の変化だし、地方への流れにおいては地場企業の方が絶対的に有利。これからもこの傾向は変わりないと思っても間違いない。

一億総コンビニからは減退傾向、客離れを必至で食い止めようと新商品構築と宣伝に勤しむ日本。これから増加する渦中のベトナムとは対照的。

このコンビニに関して法律で定めがあり、食品、飲料、市販の医薬品、化粧品などなど日用消費材の小売りと規定されている。しかしスーパーなどと異なり売り場面積の規定はなく、また24時間OPENも明確には規制されていないため少なく見ても国内に現在2000店舗あると言われています。
なるほど、ほぼ一坪店舗の様なものもあるし、地域によっては若者向けの雑誌、おでんやご飯類に麺類、パンと飲み物が主体で、店内でレンジを自由に使って温め、テーブル席でゆったりと飲食と雑談をしています。
偶々ファミリーマートの本部と我々の会社が同じビルのテナント。一番近くにある同社の店にはよくお世話になったが、まず必要なものは揃っているので、多くの駐在員にしてもここで買えば最低限の暮しが成り立つのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生